暁(管理人) のすべての投稿

それぞれの幸福論~白石景之の場合~(景之×市香)

彼女が傍にいてくれるなら、何もいらない。

そんな事を、俺みたいな人間が思うようになる日が来るとは思わなかった。

 

「先生、」

「市香ちゃん、身体の調子はどう?」

「大丈夫です」

部屋に入ると、市香ちゃんが身体を起こそうと動く。
それを制して、そっとベッドに寝かせた。

「先生大丈夫ですよ、起きます。寝てばかりじゃ身体に悪いですもんね」

「…休むことも大事だよ」

「充分休んでますよ」

市香ちゃんは何も覚えていない。
何も知らないから、こうやってまだ俺に微笑んでくれる。
記憶を取り戻すまで、傍にいよう。
そんな制限つきの幸せ。
それは俺が一方的に幸福なだけだ。
本当は断罪されなければならないのに、俺はまだ言い訳をして君の傍にいる。

「こないだ先生が持ってきてくれた猫のさんぽっていう本見ました。
すっごく可愛かったです!」

いつかの日、彼女と一緒に見た猫たちを思い出す。
番号で猫たちを呼ぶ俺を見て、市香ちゃんは驚いていた。
名前なんて意味のないものだと、おもっていた。
14番と呼ばれ続けた俺と、白石景之と呼ばれた俺は何が違うんだろう。
記憶をなくした市香ちゃんを見ていると、ふと思うことがある。
彼女は全てをなくしたけど彼女だ。
彼女が彼女である証は、きっとその魂だ。

じゃあ、俺が俺である証は…なんだろう

「市香ちゃんは猫好き?」

「可愛いですよね、好きです」

「俺も好き」

「-っ…」

俺の言葉に市香ちゃんはなぜか頬を赤らめた。
俺が首をかしげると、本を見開いて俺の顔面に押し付けてくる。

「痛いよ、市香ちゃん」

「あっ!ごめんなさい!でも、いつか先生と一緒に猫、見たいですね」

「うん…そうだね」

俺が俺という人間に成れたのは目の前の愛する人のおかげだ。
人形だった俺に魂を与えたのは、この子だけだ。
戸惑いながらも、俺に歩み寄り、しがみついてくれた。

手を伸ばせば、触れられる。

「先生?」

そっと頬に触れると、大人しくそれを受け入れてくれる。
制限時間つきの幸福。
この手が、彼女に触れることはもうすぐなくなる。
本当は今だって触れてはいけない。

 

「もうすぐだね」

「なにがですか?」

「ううん、なんでもない」

 

君の人生に、暗い影を落とさないことだけを願う俺をどうか許して。

それぞれの幸福論~笹塚尊の場合~(尊×市香)

「ドーナツの中にクリーム入ってるのとかは好きじゃないんですか?」

ある日のことだ。
某ドーナツチェーン店がセールをしているらしいと聞いて、ドーナツを買って俺の家へやってきた。
俺がいつも食べているドーナツとは別に市香が食べる用のドーナツが袋には入っていた。

「あんまり食べないな」

「あ、折角だから一口食べてみますか?」

市香が食べているのは生地のなかにクリームがこれでもかと言わんばかりに入っているドーナツだ。
ドーナツといえば、真ん中に穴が空いているものが王道だろう。
どちらかとえいば、俺はそういう方が好きだ。
中に何かが入っているというのは、どちらかといえばパンのような気がする。
差し出された食べかけのドーナツをじっと見つめると市香が不思議そうな顔をする。

「いりませんでしたか?」

「間接キスだけど、いいんだ?あー、そうだよなぁ。間接キスなんてさすがにもう気にならないか。あれだけ…」

「きゃーっ!やめてください!そういう言い方!!恥ずかしいですっ!!」

「だってそうだろう?さっきだって」

言葉を続けようとしたら俺の口を塞ぐかのようにドーナツが口に押し込まれる。

「恥ずかしいんです!そういう事言われるの!!」

分かってて言ってるし、そうやって赤くなって怒る姿が見たくて言ってるんだけどな。
口の中に入ってきたドーナツを咀嚼すると、口の中にクリームの甘味が広がる。

「自分の分、全部俺に突っ込んでどうするんだよ、バカ」

「だ、だって…。でも美味しかったですよね?」

「ん、そりゃあな」

「じゃあ、良かったです」

口の端についた生クリームを指ですくい、ぺろりと舐める。
それから自分の分のドーナツを差し出す。

「食べるか」

「だって、それは笹塚さんの分…」

「お前の分、俺が食べたんだからおあいこだろ」

「間接キスだけど、いいんですか」

仕返し、とばかりに市香はそんな事を口にする。
間接キスでお前みたいに照れるわけがないだろうが。

「そうだな、俺は間接キスよりもこっちの方がいいんだけどな」

「え?」

空いてる手で市香の顔を引き寄せ、唇を奪う。
生クリームの味がするキスなんて、甘すぎる。
舌を吸い上げて、ようやく解放してやるとさっきよりも真っ赤な顔で目を潤ませていた。

「笹塚さんのそういうところ、ずるいです」

「なんだよ、ほら。ドーナツ食べるだろ?」

「いります……」

ようやく俺から受け取って、ドーナツを食べた。

「うまいか?」

「美味しいです」

「さっきのキスとどっちがあまい?」

「…それは内緒です」

「あっそ」

自分のことを好きな子をいじめたい人種だとは薄々気付いていたが、
笑った顔も怒った顔も拗ねた顔も、泣いた顔を全部全部見たいと思う相手は多分生涯コイツだけ。

「笹塚さん、顔笑ってます」

「ああ、幸せだからな」

 

それぞれの幸福論~岡本契の場合~(契×市香)

このまま無意味に生きていくなんて選択肢、オレには存在しなかった。
そもそもそんな選択肢が突然目の前に突き出されたってそれを選ぶつもりなんてなかった。

 

「岡崎さん」

「なに?」

市香の部屋にあったマカロンの形をした枕。
オレも同じものを一緒に買いに行って手に入れた。
ふかふかした感じがちょうど良くて、部屋にいるとついつい寝転がってしまう。

「ちょっと味見してもらってもいいですか?」

エプロンをつけた市香が小皿を持ってオレの傍に来る。
転がっていたオレは身体を起こし、口を開ける。

「岡崎さんはひな鳥みたいですね」

「そう?」

口に運ばれたのは豚肉だった。確か得意料理のうちの一つだと話していたような気がする。

「少し味濃いですか?」

「ううん、そんなことないよ」

「良かった。漬け込みすぎちゃったかなって慌てちゃいました」

「大丈夫大丈夫。キミは料理が上手だよ」

にっこり笑うと、市香ちゃんの手から小皿を奪って近くのテーブルに置き、ぐいっと引き寄せた。
突然のことに驚いたのか、市香ちゃんはバランスを崩しオレの上に倒れてきた。

「もうすぐお夕飯ですよ」

「うん、そうだろうね。いい匂いするもんね」

くんくんと嗅ぐと自分の部屋とは思えない生活観のある香りがする。
彼女が家に来るようになって、少しずつキッチンにものが増えていった。
彼女がいない時も、彼女がここに戻ってくる証のようでオレは嬉しくなって調味料の位置とかを無駄にいじってしまう。

「市香ちゃんもいい香りする」

「恥ずかしいからダメです」

「オレと同じシャンプー使ったはずなのに、キミからする香りはいい香りだね」

「……」

恥ずかしさを誤魔化すようにオレの首筋に顔を埋めてくる。
猫さん、と呼んでいた頃を思い出す。
あの頃は、こんな気持ちなかったけど可愛いなぁとは思っていた。
今はあの頃では比じゃないくらい可愛いというか、愛おしいと思っている。

「市香ちゃん」

彼女の髪を弄ぶように指でくるくるとする。
ふわふわと柔らかい髪。いつまでもなでていたい。

「市香ちゃん」

そのまま手を移動させ、背中を撫でる。
背中はくすぐったいらしく、軽く身をよじるが無視して触り続ける。

「市香ちゃん」

「…なんですか、岡崎さん」

「いつまで岡崎さんって呼ぶの?」

「…まだ慣れないんです」

「ふふ、だろうね。
いつかさ、病めるときも健やかなるときもって誓う日が来てさ」

「え?」

「年をとっていって、おじいちゃんとおばあちゃんになってキミと縁側でお茶飲んだりする未来も悪くないなって」

「…、岡崎さん」

「そんな風に思うんだ」

意味のある死を求めた。
それは呪いのようにオレを縛り続けた。
けど、トクベツな人をこの手で守りきり、意味のある死以外に、いや…それ以上にトクベツなものを見つけた。
腕の中にいるその人をぎゅうっと抱き締めると、彼女の腕がオレの背中に回った。

「契さん、素敵な未来だとおもいます」

「うん…」

泣きそうな声で、オレにそんな事を言う。
ああ、もう絶対手放してなんかやらない。
オレは彼女の存在を確かめるように抱き締める腕の力をもう少しだけ強めた。

 

それぞれの幸福論~榎本峰雄の場合~(峰雄×市香)

父さん、母さん、そして俺の可愛い妹よ。
俺に彼女が出来ました。

 

「「かんぱーい」」

仕事帰り、二人で居酒屋に寄って一週間の頑張りを労う。
注文していたビールが運ばれてくると二人で乾杯をした。

「くぅ~っ!やっぱり仕事帰りの一杯はうまいなぁっ!」

「はいっ!分かります!」

お通しである冷奴を一口運ぶ。
ん、うまい。
好きな子と酒を呑んで、うまいものを食べる。
たったそれだけの事が俺は凄く嬉しい。

「はぁ~、いいよなぁ…こういうの」

「え?」

ビールを飲んでいた市香が俺の方を向いた。

「好きな子と美味い酒と飯。
たまには気取った店とか行って、着飾った市香を見たいな~って気持ちもあるけど」

「そういうのは、そういう時が来たらでいいんですよ。
私も仕事の帰りに峰雄さんと飲みに行けるって思ったら今日一日いつもより凄く頑張れました!」

「可愛い事言うなよ」

軽く頭を小突くと市香が笑う。
ああ、めっちゃくちゃ可愛い。
市香と付き合う前に想像していた異性との付き合い方というものはもっと肩ひじはった・・・というか、デートといえばお洒落なフレンチ。
歩くときは車道側に立ち、彼女の鞄を持ってやる、とか。記念日はまめに祝えとか。
ハウツー本にはそりゃもう沢山書いてあったし、受験勉強のときですらそこまで頑張らなかった俺は市香と付き合うようになってそういうのを頭に全て叩き込んだ。
だけど、実際交際がスタートしてみれば、本なんてまるで役に立たない。
本のなかにいるような彼女ではないのだ、市香は。
可愛くて、超可愛くて、自分の気持ちは曲げないけど、誰かに心を砕いてやれる優しい子だ。
俺にだって凄く気を遣ってくれる。だから、最初は本当にこんなデートでいいのか、と不安になったけど本当に楽しそうに笑う市香を見て、
ああ…俺たちはこれでいいんだって教えられた。

「峰雄さん、今日はあんまり呑みすぎちゃダメですよ」

「今日は…って、俺市香と呑む時はちゃーんと気をつけてるから大丈夫だ!!」

「こないだ佐竹さんと呑んで迎えに来たのはいつでしたっけ?」

「そ…それは、」

ちょうど一週間前だ。

「いや、男同士杯を酌み交わすことによって親睦が深まるというか」

「お酒を呑んで、酔いつぶれてもいいんです。ただ、身体が心配になるだけで」

「…!市香」

「酒は呑んでも呑まれるな、ですよ」

「肝に銘じておきます」

「はい」

子ども扱いするみたいに市香が俺の頭をなでた。

 

 

 

 

それから2時間もしないで、たらふく食べて、たらふく呑んで店を出た。
俺よりもちょっと市香のほうが足がおぼつかない。

「大丈夫か、市香」

「だいじょーぶですよ」

へらっと笑う頬が赤い。
市香が俺の手に指を絡めてくる‐これはいわゆる恋人つなぎというやつだ。
酒を呑んで体温が上がっているからか、いつもより手のひらが熱い。

「いいですねー、こういうの」

「ん?なにが」

「好きなひとと、一緒にご飯食べて、お酒のんで、手をつないで帰るって」

「ああ、幸せだなぁ」

金持ちにならなくてもいい。
出世なんてしなくてもいい。
ただ、好きだと思う人とこうして何気ない時間を過ごせるだけで幸せなんだということ。
そんな事に気付かされる。

 

「市香、超可愛い」

「なっ」

「本当可愛い、さすが俺の天使」

「もう!恥ずかしいからやめてくださいっ!」

「だって事実だろ」

「そんな事いうなら、峰雄さんのこと王子様って呼びますよ」

「え、ちょっとときめく」

「呼ぶ私がはずかしいからだめです」

「なんだよ、それ」

 

 

いつまでも、最愛のおまえと手を繋げますように。

La Famila(ヴィルラン家族捏造本) サイトOPENのお知らせ

ランちゃん誕生日おめでとう~!!
前回、お知らせしましたヴィルラン家族捏造本の本サイトをオープンしました~!

La Familia

モチーフは絵本といいますか、子どもたちに本を読んであげる日常をイメージしているので少し可愛らしく仕上げています。
PCからもスマホからも閲覧できるようにしていますが、もしお使いの端末で閲覧おかしいよ!とかあったらご一報いただけると幸いです^ ^

家族捏造本なので、どんな本になるかイメージが伝われば、という思いとせっかくの合同誌なので張り切ろう!!ということでサイトまで作らせてもらいました。
子ども達との小話をサイトで更新していく予定になっていますので、もし良ければサイトを覗いてみていただくと嬉しいです。
檸檬さんのヴィルラン&子どもたちが可愛いのでぜひ!

cat’s eyes(尊×市香)

「顔」

俺をじぃーっと見つめる目。
今はディスプレイから目を離せないというのに、ベッドから俺を黙って見つめていることは分かってる。
背中につきささる視線が痛い。

「振り向いてないのに私がどんな顔してるか分かるんですか?」

「ご主人様に構ってほしくて仕方ないって顔だろ」

「…そんなことは、ない…はずです」

今、自分も顔を見られない状況だから素直に表情を崩す。
俺の言葉、表情でころころ変わる市香の表情が可愛いと思っている。
だけど、夕食も終わって今日は香月が外泊するらしく、それなら…と市香が泊まることになった。
入浴も済ませ、まだそういう甘ったるい空気に恥ずかしがる市香をベッドに押し倒した時。
携帯が鳴った。
サーバーがダウンしたやら、不正アクセスに対する対処、急ぎのデータ解析なんてものもなかったはずなのに俺の携帯がけたたましく鳴った。
舌打ちをして、市香から離れてパソコンに向かう。
急ぎのデータ解析をしていたが、どうしても処理しきれないという電話だった。
本当だったら戻って処理をした方が確実だ。
だけど、ベッドにちょこんと座っている市香を置いて戻るなんてふざけんな。
1時間であげると電話を切り、送られてくるデータを確認する。
素人がやってるんじゃないんだから、これくらい解析しろと八つ当たりめいた罵りたい気持ちはぐっと堪えた。

「笹塚さん」

「ん」

生返事しかしないのを分かってて市香は話してる。
俺が仕事をしているときは極力言葉を発しないように気を遣っていることも知っていたが、返事しなくてもいいなら話せと言ってからはちょくちょく何かを言うようになった。

「笹塚さんの手って魔法の手みたいですね」

「…なんで?」

「だってさっきからずっと画面をみて、キーボードを打ってて凄いなぁって。
私も事務作業とかでキーボード打ちますけど、笹塚さんみたく出来ないから魔法みたいです」

俺が何をやってるか1割も理解していなさそうだな。
構ってほしくて見つめられてるのかと思ったら、俺の仕事してる姿を感心して見つめていたのか。
きっと今こんな事思っているんだろう、とかそういうことがコイツに関してはことごとく外れる。
そういう部分も好きな要因なのだろう。

 

「市香、」

「はい」

「あともう少しで終わるから覚悟しとけ」

「か、覚悟って」

ああ、きっと今赤くなってるんだろうな。
その顔を見たいけど、今みたら仕事やる気なくすから振り替えらない。

「…私だって、いちゃいちゃしたいんで覚悟とかはいらないです」

「-っ、」

そんな言葉が返ってくると思わなかったから指先が滑った。
打ち間違った箇所を入力しなおす。
「覚悟がいらないなんて台詞、言えないようにしてやらないとな…」

「笹塚さん?」

「5分黙れ」

ああ、もう仕事を終わらせて、後ろのバカ猫が根を上げるまでいじめ倒してやりたい。
背中に視線を送り続けるヤツのはやく見るために俺はキーボードを強く叩いた。

あともう少し(愛時×市香)

いつの間にか眠ってしまっていた私の身体を優しく抱き締める腕。
まるで猫のようだな、と私が丸まって眠る姿をみて恋人が笑ったのは初めての夜。
それから何度かこうして夜を過ごすことがあった。

「ん…やなぎさん?」

「悪い、起こしたか」

「いえ、だいじょうぶです」

まだ重い瞼をこすり、目を開けて時計を確認する。
今日は遅くなると香月には伝えてある。
香月も私が柳さんのところにいることは承知で門限を23時といっているのだ。
事件を追いかけていた頃は一緒にいる時間が当たり前のようになっていたけど、今は警察と探偵。
会おうとしない限り会えない。
香月に言われた門限を守るためには、もうそろそろ支度をしなければならない。

「…愛時さんと離れたくないなぁ」

「…っ、」

まだ眠いから、ついつい想った言葉がぽろりと口に出た。
その言葉を聞いてか、私は柳さん・・・いや、愛時さんの耳が赤くなっていることに気付いた。

「愛時さん?」

「市香、」

瞼をこすっていた私の手をとり、ぎゅっと握る。
愛時さんの手は私の手より一回り以上大きい。
男の人の手ってゴツゴツしていると聞くけど、愛時さんの手はとても綺麗に見えた。
彼の身体のどこが好きかと聞かれたらまず手を挙げるだろう。
あ、でも愛時さんの瞳に自分が映る瞬間も好き。
眠っている私を優しく抱き締めてくれる腕も好きだ。
好きな部分なんて挙げ出したらきりがないもの、何考えてるんだろう。

「そろそろ帰る支度するか」

「…愛時さんはいじわるです」

離れたくないなぁと子どもみたいなわがままをうっかり口にしたのに、何もいってくれない。
不満げに頬を膨らますと、愛時さんは優しく微笑んだ。

「門限破って、未来の義弟に嫌われたくないんだ」

そういいながら私の頬をなでて、額に優しいキスを落とす。

「愛時さんはいじわるです」

「それはもう聞いたよ」

「だけど、大好きです」

明日はお休みだから会えるのに。
それでもやっぱり離れがたくて、私はぎゅうっと愛時さんに抱きついた。

「ああ、俺も好きだよ」

時計を見ると、刻々と門限へと近づいている。
二人とも時計を見ていたらしく、視線が合うと思わず笑ってしまった。

「明日、いっぱい一緒にいましょうね」

「ああ、約束だ」

私たちは指きりをした。
誰かと離れがたいなんて気持ち、私は愛時さんに恋をするまで知らなかった。
こうやって明日の約束をすることがこんなに幸せだということも知らなかった。

 

 

 

「いそぐぞ、市香」

「はい、愛時さん」

身支度を済ませて部屋を後にする。
繋いだ手の温度に私は、さっきと似た幸福を感じた。

まだ飼い猫ではありません(尊×市香)

「おい、バカ猫。仕事終わったか」

「-っ!笹塚さん!」

 

笹塚さんが本庁に戻ってからしばらく経ったある日。

新宿署に資料を届けに来たついでに私のところに顔を出してくれた。
今日の業務が終わる時間を覚えていたんだろう。それくらいの時間を狙って顔を出してくれたことに感動してしまう。
約束もしていない日に突然会えるなんて凄く嬉しくて、笹塚さんが現れた時には望田さんに微笑ましいといわれるほどに表情が輝いたらしい。
自分としてはそんな分かりやすく顔に出したつもりはなかったのに、他人から指摘されるというのは恥ずかしい。
笹塚さんが待っているということもあり、慌てて着替えを済ましたが鏡の前でにやける顔を軽く叩いた。

(うん、大丈夫。にやけてない。にやけてないんだから・・・)

玄関に小走りにかけていくと、ぼんやりと空を見上げてる笹塚さんがいた。
待たせてしまったことは申し訳ないけど、私を待っていてくれるその横顔にときめいてしまう。

「お待たせしました、笹塚さん」

「お前、今俺の横顔見てただろ」

「…ばれました?」

「当たり前だ」

軽く私の頭を小突くと、先に歩き出す。
その背中を慌てて追うのは相変わらずだ。
追いついて、隣に並ぶと私は笹塚さんの手を握る。
笹塚さんは手を繋ぐよりも腕を組む方が好きだけど、それでもこうして私が手を繋ぐとなんでもないという表情のまま強く握り返してくれる。
まるで私を離す気はないと言っているようで、たまに繋ぐこの手が愛おしい。
歩きながら今日会ったこと等を話していると、ある一角の前に来て笹塚さんが立ち止まった。

「ん?あんなところにペットショップなんてあったか?」

「ふふふ、最近出来たんですよ!」

「ふーん」

そう、今まで何もなかったこの一角にある日突然ペットショップが出来た。
このペットショップは入り口の横に大きなガラス張りの空間があって、その中では猫たちが数匹遊んでいる。
このお店の前を通ると必ず足をとめて、ガラス越しにくつろぐ猫たちを見ることが最近の私の日課だったりする。

「可愛いですよね、丸まってる姿も遊んでる姿も。
あ、あの子可愛いんですよ。よくおなか見せて寝てるんです」

特にお気に入りの子を指差して伝えると、ふーんと言いながらもしばし猫の観察に付き合ってくれる。
このままだったらいつまでも猫の前から動けない・・・そうは分かっていても可愛くて目を離せない。
多分時間としては5分くらいだろうか。いつまでも見てる私に痺れを切らしたようで笹塚さんは私の手をひいて歩き出した。

「笹塚さん、猫あんまり興味ないですか?」

「俺が興味のある猫なんて一匹に決まってるだろ」

横目で私を見ながら言った言葉。

「・・・それって、」

うぬぼれてるといわれそうだけど、普段散々バカ猫と言われてるのだ。
心なしか赤くなった笹塚さんの頬を見て、さっき引き締めたはずの表情はあっという間に緩んでしまう。

「だから大好きなご主人様が現れたからって可愛い顔を他の男に見られてるんじゃねえよ」

「・・・望田さんは奥さん愛してますよ」

「知ってるし、そういう問題じゃないだろ」

「気をつけます」

笹塚さんの可愛い顔というのは、どういう表情なのか・・・多分、笹塚さんが来てくれたことが嬉しくて仕方のない顔のことだろうけど、多分同じことがあっても同じように喜んでしまうだろう。
だって笹塚さんのことが大好きなのだから。

「職場が離れてしまったけど、たまにでもこうやって一緒に帰れるって嬉しいですね」

「・・・そのためにこうして来てるんだから当然だろ」

「え?なんて言いました?」

「なんでもねえよ、さっさと帰るぞ」

返事の代わりに繋いだ手を私から強く握った。

【プレイ感想】猛獣たちとお姫様

辛口感想です。
いや、今年発売のおとめーとの新作では一番楽しみにしてたんだ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

嘘だろ!?っていう短さでしたね!!!!
いや、本当に嘘だろ?この短さでよく出したなっていうのが正直な感想です。
音声全部聞いてないでいっつもプレイしてるわけですが、今回共通√2時間・個別√1時間半~2時間っていうボリューム。
発売前からホームページもチェックしていて、各々の動物が姫様に拾われて仲良く暮らしてるっていうところから始まるのは分かっていたけどさ。
いや、分かってたけどさ?
共通√でやらなくてもいいんだけど、例えばですけど・・・馬だったらいう事きかなくて処分されそうになっていたところを救ったっていうエピソードを回想してもよくない?
一文で済ますの??それぞれ人によって嫌な思いをした動物たちが姫の優しさに癒されて、寄り添っていったっていうエピソードを具体的にいれてくれても良かったとおもうんだ。
クマだってお母さんクマとはぐれて処分されそうなところを姫に助けられて、姫のことをお母さんみたいだと思っていたのにそんなバカな・・・って思ったんです。
あと、ヘンリクにい様の背中合わせ(壁あるけど)のスチルもまさか・・・ホームページに書いてある文章程度のエピソードだなんて・・・
嘘だろ?あんな切なくできそうなエピソードで・・・嘘だろ???て何回言ったか分かりません。
大団円というかIFストーリーについても「え、嘘だろ?ここで回収すんのwww」って思ったのがリシャルトの名前でしたね。
とってつけたようなストーリーだったなぁ・・・お姫様の問題を解決していないまま終わり「それはまた別のお話。」ってしめくくられて、嘘だろ!!?って言いました。
いや、わかんない・・・分からないよ・・・猛獣ってなんだっけ。わからん・・・
あと、何もかもうまくいきすぎでしたねw犯罪を犯した人でもどんな人でも受け入れる国ですよーいえーいってところなんだからさ・・・
もっと荒れてるのかと思いきや、姫様のお手製の服が大流行しちゃったり、攻略キャラたちがなんやかんや女性に人気になってちやほやされるっていうのが全ての√で発生していい加減にしろってなりました。
いや、ちょっとした失敗もしたけど、ちょっとしすぎてるよね。姫の服見せてくれよ!姫の着てる服自体はそんなにおしゃれじゃな・・・

 

良かった点はキャラは可愛かったこと。キャラ同士の掛け合いは可愛かったこと。(でもおとめーとさんは大体そういうところは良い点に上がるから当たり前といえば当たり前のような・・・?)
一番好きなルートはヘンリクかもしれない・・・かな?魔術師と拮抗しますね!
期待していた分、肩透かしをくらったような気持ちになりましたが、キャラ可愛かったし、日野さんがわんわん言ってるの可愛かったからもう大丈夫です。

 

 

ルドウィグ

犬!!!一番楽しみにしてたのに!!!!一番楽しみにしたのに一番シナリオ悪かった!!!!!
なんで!?どうして一番盛り上がるところ(魔女と戦うシーン)は、杖きっておしまいなの!?どうしてなんだよ!!!
あと、女王にならなくて良かったかなって・・・いや、猟犬だから集団行動というかああいうところが性にあっているってことなのは分かるけど・・・
女王様との結婚なんて許されないだろ、あれ。
そして犬になるのは代わらないからどうなるんだろうね・・・
そしてここでもしかしたて、馬頭良すぎるから馬は元は人間の王子様だったのが、馬になってただけじゃあ・・・って思ってたら正解してわらいましたw
フルコンした後なら分かりますが、アデーレが魔女ではなくて杖によって力を得ているからあんなにしょぼい戦いだったんだね・・・ってそんなわけないだろ!!!!!
もう少し決戦にも力いれてほしかったな・・・・よよよ・・・
あと無理矢理えっちする方向に持っていかなくていいよ、本当に。そこで割と興ざめでした。
結局粉がなくなればルドヴィクは人間の姿を維持できないのよね?それってどうなるんだろう。女王になるんだから世継ぎってどうなるの?

 

ユゼフ

はちみつが好きなのって熊はそうなの?ぷーさんだけじゃないの?
それはさておき、犬√の衝撃に比べれば、結構シナリオしっかりしてたし、決戦は一番盛り上がったような気がしています。
お酒に弱くて、酔っ払ってひっくりかえったりするのも可愛かったけど、熊の姿で姫をもふもふしてるのが見たかったな。

ミアーシュ

炭鉱の話題になった瞬間、ストーリー展開が予想ついてしまったw
カナリアといえば炭鉱ですよね、分かります。ミアーシュが舞台に主演で立つというならそのシーンのスチルとかあっても良かったと思う。
それを見て、ああ凄いわ・・・ミアーシュって姫様感動すればよかったのにね。ルドヴィクの闘技場ではスチルあったのに、なぜミアーシュの舞台ではないのか・・・

 

リシャルト

賢すぎるから王子様だろうなっていうのは分かった。うん、OKです。
だから元は人間だから姫と恋に落ちていくのは一番理解できました。OKです。
EDのスチルめっちゃ可愛かったですね!!でも他にもう記憶に残ってない!!!

 

ヘンリク

可愛かったです。白鳥になってからめっちゃ可愛かったです。彼に対してはそこまで世間知らずっていう印象がなかったのですがルート入ってからはそれが炸裂してましたね。
でも、世間知らずなのは仕方がないよ。人々の上に立つために帝王学を学んでいて、一般市民が知らないことを深めていっていたのだから当然だと思うし、悪いことではないと思う。
幼い頃にヘンリクは姫が囚われてる塔を見つけるわけですが、幼い頃に恋をしたのね・・・一番良かったよ、二人の恋模様。
ただ決戦がしょぼかったな・・・ヘンリク全く役に立たなかったね。

 

魔術師

共通√で出会ってからくっそかわいいな、こいつ!!!って楽しみにしていましたが、この子の√は真相っていうか伏線回収というかこじつけ回収といいますか・・・
事故チューしちゃってドキドキも可愛かったし、デートも可愛かったし、全体的に可愛かったけど、決戦というか・・・まさかあれで終わるとおもってなくて「嘘だろ!?」って叫んだ。
そして処刑されるの止める・・・いや、あそこのリシャルトの言葉で泣いた。「16年間犠牲になってきた少女のたった一度のわがまま」みたいな。ああ、そうだよね。
ユーリアは幽閉されている理由も分からず、独りでずっと塔で過ごしてきて、それが当たり前だったんだよね・・・そう思うとぐっときました。
でも、大罪犯した魔術師と魔女があんな一言で解放されちゃって大丈夫なの?って心底思ったよね。
この√でようやく姫が作ってる服見れて良かったよ・・・

I love you(尊×市香)

「笹塚さんの髪ってふわふわしてますね」

「んー」

シャワーを浴びた後、髪を乾かさないでいると市香が心配して俺の頭を乾いたタオルで拭いてきた。
抵抗するほどのことでもないし、今はディスプレイを見られても問題のない内容だから甘んじてそれを受け入れる。
タオルで丁寧に拭いた後、ドライヤーを当て始めたところでさっきの言葉だ。
バカがワカメだというのを散々聞いているからなのか、ボリュームのある俺の髪に対して今まで何も言ったことがなかった市香が感心したように呟いた。

「さわるの初めてじゃないだろ」

「こうやってゆっくり触ったことはありませんよ」

「あー、そうか。いつもそんなことを考える余裕がない時に触ってるか」

「なっー!!」

俺が何を示してそう言ったのか瞬時に察したらしく、俺の髪に触れる手の動きが止まる。
解析中の画面は目が疲れないように黒背景に白文字だ。
だから楽しいことにディスプレイに鏡のように映るこいつの動揺している表情が見れるわけだ。

「笹塚さんは、意地悪ですよね」

「おまえ、それ好きだな」

パートナーになってから何度そういわれただろうか。
散々意地悪といわれるようなことをしても、尻尾をぶんぶん振って俺を追ってきてるのはお前だろう。
むくれる表情も悪くない。それは恋人としての贔屓目なのかもしれない。

「だけど私にしか分からない笹塚さんの優しいところもいっぱいあります」

「例えば?」

「たとえで挙げたらわざとしてくれなくなる気がします」

「ふうん、分かってんじゃん。俺のこと」

からかうのが楽しい。猫じゃらしをゆらしているような気持ちになる。

「だって私だけが笹塚さんのパートナーですもん」

たとえ一緒の職場じゃなくて、一緒のチームじゃなくても自分のパートナーは市香しかいないのに。
何度念押ししてくるんだ。

「だから俺を信用しろって言ってんだろ」

「信用はしてます!当たり前じゃないですか、恋人ですもん!
だけど、恋人の贔屓目と笑われるかもしれないですけど、笹塚さんは意地悪だけどたまに優しくしてくれたり、私のこと思いやってくれたりして・・・そういうことを他の女の人がされたら笹塚さんのこと好きになっちゃうかもしれないじゃないですか」

ドライヤーを止めると、俺の髪を最後に整えた。
その手を掴み、ディスプレイ越しに市香を見つめる。

「俺がからかうのも、お前がいう意地悪をするのも、優しくするのもお前だからだろ。
他のヤツなんて眼中にないんだから、余計な心配するな」

「…っ、はい」

手を引き寄せ、左手の薬指にそっと口付ける。
今はまだ何もないけれど、こいつが俺のものだという証を身につけさせるのも悪くない。

「笹塚さん、大好きです」

俺が何を思って口付けたのかなんて気付いていないバカ猫は愛らしい声で俺へ愛を紡いだ。

 

気まぐれな猫(尊×市香)

和食は問題ないけど、和菓子が好きじゃない。
甘いものが大好きでその中でも特に大好きなものがドーナツ。

(豆腐ドーナツってどうなんだろう。おからドーナツも)

ドーナツが好きな彼はぱくぱくと口に運ぶ。
それは朝でも昼でも深夜でもいつでも構わないように見える。
本庁に戻ってからの彼は本当に忙しくて寝る時間も惜しんで仕事をしている。
何も食べないで仕事をする事も多く、もしくは彼がドーナツが大好きだということを知った周囲が差し入れに買ってきてくれることも多いようだ。
あんなにドーナツを食べて太らないなんて羨ましい・・・じゃなくて、甘いものばかり食べる彼の健康が心配だ。
甘いものには変わりないけど、せめて豆腐ドーナツとかに出来たらどうだろうとふと考えた。

久しぶりの、本当に久しぶりの一緒になった休日。
休日といっても笹塚さんは部屋に戻ると、パソコンの前からほとんど動かず、私は私で食事の支度をしていた。
お昼は二人で珍しく買い物に行って、彼の部屋に彼の好みではないであろうものを増やす。
笹塚さんの部屋に自分の存在が濃くなっていくのが嬉しくて、今日買ってきたばかりのお揃いのマグカップを洗って並べていると笹塚さんは「なにニヤついてんだよ」と笑った。
そうやって私を笑う笹塚さんって心なしか嬉しそうなのに。
バレないようにくすりと笑うと、私は冷蔵庫を開けて材料をとりだした。

たまにクッキーを焼いたり、マフィンを作ったり、と簡単なお菓子は作るけど久しぶりに作るお菓子に少しだけドキドキする。
大きめのボウルにお豆腐、砂糖、卵をいれて混ぜ合わせる。
よく混ざったらそこに小麦粉とベーキングパウダーをふるっていれ、さらに混ぜる。
そういえば香月が小さい頃、お菓子をつくる私の横で興味津々といった様子で見上げてきたのを思い出した。
今はもう二人で台所に立つこともなくなってしまったけど、香月にもお菓子を作ったら喜ぶかもしれない。
生地が良い具合に混ざったら、それを丁寧に伸ばして形をつくる。
油が温まったことを確認し、ドーナツをそのなかに入れると、じゅわじゅわとドーナツが揚がっていく。
菜ばしでひっくり返していると、いつの間にか私の後ろにいた笹塚さんが私の手元を覗き込んできた。

「おい、何つくってるんだ?」

「…!今、揚げ物してるから危ないです」

「…ん、それ」

「まだ作ってる途中ですからあっち行っててください」

「折角一区切りついたから構ってやろうかと思ったんだけど。ふーん」

「!あ、あっち行かなくていいですけど、覗くのは危ないです」

顔を見なくても分かる。
絶対今、笹塚さんは笑ってる。
一緒に過ごす時間はぐっと減った。
寂しいと思う気持ちもあるけれど、こうしてたまに過ごせる時間がより楽しみなものへと変わった。
私を後ろから抱き締めるぬくもりに顔がにやけるのを我慢できない。

「それ、ドーナツか?」

「はい、ドーナツです」

「ふーん」

狐色にあがったドーナツを取り出す。
油をきると、粉砂糖を上からかける。

「出来ました。まだ熱いですけど、食べますか?」

「ん」

頷くと目を閉じて口を開いた。
これはつまり食べさせろ、ということ・・・だよね。
私にバカ猫とか犬みたいとか言うけど、笹塚さんだって気まぐれな猫みたい。
嬉しい気持ちを抑えながらまだ熱いドーナツを彼の口に運んだ。

「どうですか?」

「ん、なんか普通のよりもちもちしてる気するけど」

「あ、分かっちゃいましたか?お豆腐入れたんです!
ヘルシーになるし、もちもちになるって見てどうかなって」

「ふうん。悪くないんじゃない?」

「良かった」

久しぶりに作るお菓子・・・しかも彼の好物のドーナツだから緊張したけど気に入ってもらえたようで安心する。

「お前も食べれば?」

「そうですね、折角だし」

揚げたばかりのドーナツに手を伸ばそうとすると、顎をつかまれ振り向かされた。
何事かと思えば、次の瞬間。笹塚さんの顔がすっごく近くにあって、驚いて開いた口に笹塚さんがくわえていたドーナツのかけらをねじ込まれた。

「-っ!」

「どうだ?うまいか」

それはもう楽しそうに笑う笹塚さん。
だけど、少し火照った頬に気付いてしまった。
味なんてよく分からない口に入ったドーナツをなんとか飲み込む。

「…よくわからなかったです、笹塚さんのせいで」

「じゃあもう一回食べさせてやろうか?」

「…はい」

恥ずかしさから頬が熱くなるのが分かる。
だけど、たまに一緒にいられる大好きな人との時間。
恥ずかしいけど、いつもより少しだけ甘えたくなった。
予想外の返事に笹塚さんが息を飲んだのが分かる。

「市香」

名前を呼ばれて、恐る恐る顔をあげると、頬を優しくなでられた。

「そんな顔してドーナツ食べるのか?」

「どんな顔してますか、今」

「そうだな…キスして欲しいって顔だな」

「あんまり意地悪言わないでください」

こういう時、凄く優しく笑う。
きゅっと心臓を掴まれたようになる。
掠めるようなキスをされ、きっと不満げな顔をしたのだろう。
くくっ、と声を抑えて笹塚さんが笑った。

「もっと欲しいってちゃんとねだったらやるよ」

「-っ、」

キスしてほしい、なんて恥ずかしくてなかなか言えない。
だから彼の首の後ろに手を回し、顔を近づけて自分から口付けた。

「笹塚さん、」

「やっぱり、ドーナツはお預けだな」

私の腰に回された手が、やけに熱く感じられた。
だけど、触れ合った唇はもっと熱くて、幸福なものだ。

【プレイ感想】Collar×Malice

全力でネタバレなので、プレイ予定の方は見ないでください。
サスペンスものはネタバレみないでやるのが楽しいですよね!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最近のオトメイトさんの作品は結構短めな作品が多くて土日あれば終わっちゃうような感じだったと思いますが、カラマリは結構ボリュームあります!!
4日間くらいかかった気がします(途中ずーっとオートモードにしたりしていたのもありますが)
最初、首輪をつけられて遅効性の毒でやられたりして、命を犯人に掴まれているという割には結構平和です。
いや、その首輪からの声が事件の真相に近づけって言ってるからだっていうのは分かるんですけど、それでもやっぱり突然爆発したらどうしようとか思うじゃないですか。
市香ちゃんは時々思い出して「あ、命握られてるな」って感じだったので、大丈夫???大丈夫????てなっていました。
そして、新米警察官ということもあるし、突然XDAYの事件を調べるようになるわけですが、事件概要把握してんのに容疑者のこと全く知らないのには驚きました。
だって資料と一緒に容疑者も把握するもんじゃないの?知らないがゆえに選択肢によっては死んじゃうENDもあったので、容疑者把握はしておけよって2時間ドラマ大好きな私は思いました笑
あと、新米警察官ということもあり、大したこと出来ないんですよ。それはしょうがないじゃない?たいしたことしてないんだけど、「大したもんだ」とか「おまえならあいつのトラウマを乗り越えさせてやれる」みたいに言われること多々あり。いや、大したことしてなくね?それくらい出来ないと思われていたの?なんなの??って思う事いっぱいでした。
サスペンスものとしてはあまり見ないでっていうのをどこかで見た気がしたので、サスペンス批判はここまでにしておきます。
恋愛描写、すごい良かったです!!!!!

あと、ゼロが誰だかは・・・顎のラインで予想がつくw

 

榎本峰雄

チョロイ系男子です。事件追うために警察やめたのに、どうしてやる気ないの?おまえ、生活大丈夫なの???
っていう心配を凄いしていたわけですが、眼帯もただのお洒落っていうばかわいい男。
もう絶対童貞な感じで、酔っ払った勢いで市香ちゃんに抱きつくんですけど、「星野ちょーかわいー」って言い出すのがめっちゃくちゃ可愛くて頭抱えましたw
あと、香月とも仲良くなっていくかんじがめっちゃ可愛かったです。中学生男子みたいな子でしたが、榎本がいるおかげでこのメンバーは明るかったんだと思います。

 
岡崎 契

思い返せばメールの顔文字めっちゃ可愛いなっていうのと、自動掃除機が逃げたっていうエピソードしか記憶になくて申し訳ないw
ふわふわーっとした子で、神出鬼没みたいなノリでしたね。掃除機が帰ってこないんだっていうのが本当に可愛かった

 
笹塚 尊

ダークホース尊。最初、キャラみたときに「あーショタ枠だなぁ・・・」って思っていたんですけど、ドーナツとかあざといからそんな好きじゃないだろって思っていたんですけど、見事に転がされました。
いや、いやいやいや。めっちゃ可愛いな!!!ツンデレ好きです!ツンデレが好きなことを私は知っていた!!!
メールで「今すぐ会いたいです」みたいに送られてきて、電話してきちゃう尊が可愛すぎて転がった。
あと腕枕して寝ちゃうところとか、でこちゅーとかでこちゅーとか。香月との仲の悪さというか口げんかも可愛かった…

 
白石景之

3人終わった時点でこの人が裏切り者だろうなーって思ってはいたけど、あー・・・
この人もおそらくあの父親の子どもなんでしょうね?14番ということは14人以上子どもいるのか、父さん。やばいな。
刑務所から出てくるのにどれくらいかかるのかなぁ、この子。無期懲役になるんだろうか。
帰りを待つ市香ちゃんを思うと切ないし、はやく帰りたいと願い続ける白石もせつないわ。
闇落ちEND(?)は、ゼロにとっては望んだ世界になったのかな。わからん。

 

柳 愛時

メインヒーロー!!!!
市香ちゃんにとって思い出したくない過去だったとは思うけど、もっと心に根深く刺さってても良かった気がする。
小学生市香ちゃんと高校生柳。たまらん。というか、高校生柳のお声のトーン最高すぎて好きです。
この人も「会いたいです」ってメールきて、「どうした?」だったか返信して、「すぐ会いたい」って言われて「すぐ行く」っておーわーーーーってなりました。
くそかわ。くそかわ。なんだよなんだよ、可愛いな!!!市香ちゃんがぐいぐい行くところも本当可愛かった。
恋する乙女天使!!みんなに影で見守られたりするの可愛いよね・・・めっちゃ可愛かった。

 

 

最初、色々気になるところもありましたけど、周回していくうちに慣れて恋愛たのしー!!
今回、この事件の犯人か!とか色々絡まる事件とか楽しかったです!!

幸せの種(ヴィルラン)

講義中、突然エリアス教官が呼び出されてしまい、ちょっとした自習時間。
頬杖をついていたはずが、気付けば突っ伏していたヴィルヘルムをちょいちょいと呼び起こすと、パシュは得意げに話しかけた。

「なあ、ヴィルヘルム。知ってるか?」

「ん?なにがだ」

「ひまわりの種って食えるんだよ」

「なんだよ、ひまわりって」

「おまえ知らないのか?黄色い夏の花」

「花なんて女が好きなもんだろ、食いもんじゃねーし」

「おいおい、ヴィルヘルム。その言い方は良くないんじゃないか?
おまえだっていつだったかランに花束あげたんだろう」

「なっ・・・どうしてそれをおまえが知ってるんだよ!
だからあいつが喜ぶかと思って・・・!」

「女は花あげておけば喜ぶ~みたいな言い方が良くないんだよ」

「べ、べつにそんなつもりじゃ」

小声で話しているつもりなのだろうけど、彼らの話し声はしっかりと私の耳まで届いていた。
級友に囲まれて、楽しそうに話すヴィルヘルムの横顔を見て、私はとても穏やかな気持ちになっていた。

 

 

「なあ、ラン。おまえ、ひまわりの種って食ったことあるか?」

「え?ああ、さっき話していたこと?」

「なんで知ってるんだ、おまえ」

「さあ、なんでだろうね」

ふふ、と私が笑うと少し拗ねたのか、舌打ちをして視線をそらす。

「ひまわりの種ってハムスターとかが食べるものじゃなかったかな」

「はむすたー?」

「そう、手のひらにのるくらいの小さい生き物」

「ふーん」

そういわれてもピンと来なかったらしく、私は持っていたノートを開いて、簡単にらくがきしてみた。

「こんなかんじのかわいい生き物」

「なんでこいつこんなほっぺたでかいんだ?」

「ここにえさを詰め込むんだって」

「なんで?」

「ヴィルヘルムだってよくたくさん食べるときほっぺたにつめるでしょう」

おなかがとっても空いてる時、目一杯口に詰め込むヴィルヘルムはよく考えればハムスターに似ているような気がする。
ほっぺをつつくと、煩わしそうに私の手をどける。
それを何回か繰り返すと、手を強く握られた。

「それで、おまえはひまわりの種食ったことあるのか?」

「ないかな」

「・・・そうか」

よほど気になったのか、その後もひまわりの種を探すヴィルヘルムの姿はしばしば目撃された。
観賞用のひまわりの花にはもちろんまだ種なんてなくて、結局なかなか見つからなかった。

 

 

そんなある日のこと。

「ああ、ラン。ちょうど良いところに」

「どうかしたの?ニケ」

廊下を歩いていると、荷物を抱えたニケに出会った。

「うん。ヴィルヘルムがひまわりの種を探してるって噂聞いたから。
これ、良かったら彼にあげて」

ポケットに手をさしこんで、ひまわりの種を取り出して私の手に乗せてくれる。

「いいの?ありがとう!
ヴィルヘルム、きっと喜ぶわ!」

大事に守るように手をそえると、ニケも嬉しそうに笑った。
ヴィルヘルムはこの時間、空いているはずだからと探しているとアサカと歩いてるのをようやく裏庭の傍で見つけた。

「ヴィルヘルム!ひまわりの種!」

「え?」

「ニケがくれたのよ、ほら」

手を広げてヴィルヘルムにそれを見せると屈みこんで私の手を覗き込む。

「へぇ~これがひまわりの種か」

「良かったですね、ヴィルヘルム」

1つを指でつまみあげるとしげしげと見つめた。
そのまま口に放り込むかと思いきや、ただ見つめるだけだ。

「これって食ったら終わりなんだろ?」

「え?うん、そうだね」

「なあ、アサカ。種ってことは埋めれば生えてくるのか?」

「そうですね。きちんとお世話してあげれば芽を出して、花が咲くと思いますよ」

「ふーん・・・」

私は思わずアサカと一緒に首をかしげる。
ヴィルヘルムはしばし考えこむと、種を私の手のひらにもどした。

「・・・そんなちょっと食っただけなら味なんて分かったもんじゃねえから。埋めるぞ」

「ヴィルヘルム・・・」

思ってもいなかった彼の言葉に、嬉しくなって思わず飛びついた。

「なっ、なんだよ!いきなり!」

「ううん!なんでもない!」

「あ、じゃあ僕がスコップ持ってきますよ。ここらへんに埋めてあげましょう」

「ありがとう、アサカ!」

 

3粒の種を埋め終わると、アサカに渡された小さなプラカードにヴィルヘルムは『俺たちのひまわり』と書いた。

「いつ咲くんだろうな」

「まだ埋めたばかりですよ」

「うるせぇ!さっさと芽出せよ!!」

「ヴィルヘルム、植物は愛情をもって育てなきゃいけないんだよ」

「・・・がんばって芽だせよ」

もうすぐ夏も本番だ。
きっと彼の誕生日を迎える頃には、綺麗なひまわりが花開くだろう。
それをみんなで見れたらいいな。
きっとヴィルヘルムもそう思って、”俺たち”と書いたのだ。
そう思うと、たまらなく幸福な気持ちになった。

 

 

 

 

HAPPY BIRTHDAY!!!

7~8月プレイ状況

エロゲまみれの感想文!!

 

 

 

 

 

 

 神々の悪戯 InFinite

本編未プレイで、杉山さんのキャラが攻略できるということで購入しました!
帰還END(といっていいの?)がどのキャラも凄い泣いたのですが、どんなEDが待っているのか知らないでやったトールがやばかったです・・・
あの、帰ろうとするゆいちゃんをトールが見送るっていうのが、もう・・あああ、別れたくないよ・・・って。ゆいちゃんへの恋以外全てを捨てて転生するのが凄く良かったです。
あと、メリッサ!!!「くたなぎ」って呼ばれるのすごい可愛かったです・・・!でも、最後の最後、「くさなぎ」っていわれたときにあああああ・・・・って。くたなぎぃ・・・
本編攻略キャラのお話をやって、月人が気になります!!日本神話組が気になるので、積みゲー消化したら買いたいと思います!!
でも終わってみた今となってはバルトスさんがゆいちゃんの生乳揉んでるスチルが衝撃すぎてそれしか思い出せませんでしたw
あんなにおっぱい出して大丈夫ならもっと色々挑戦できるよ!!!いや、びっくりした。本当にびっくりした。ゆいちゃんめっちゃ可愛いですね

 

アンダーザムーン

エロゲです。流されるままにキスしてエッチして、快楽に流されて好きになっていくのがエロゲっぽくて面白かったです。
ヤンデレがいると聞いていたので、わくわく!!と思っていたんですが、大したことしませんでしたね!
あれかな、普段男性向けのエロゲとかやったりしている私はもう慣れてしまっているのか・・・
えーれべーたでするのも野外プレイもそこまで衝撃ではありませんでした。もっとえぐくこいよ!!ってわくわくした私はもうだめです。

 

死神稼業~怪談ロマンス~

焔→敵会社→人間→蓮司ってやったんですけど、蓮司のためのお話じゃない????
もう大好きよ、ああいう展開。蓮司が感情らしい感情がなかった自分がかわるかもしれないって気まぐれで澄ちゃん拾って、それから大事な存在になっていくのがもう・・・
そして、別れを選ぶ時もう・・・もう・・・小さい頃はためらいもなく繋げた手が、一緒にいたいと願うせいで一緒にいられなくなるって。もう切ないよ・・・切ないよ・・・

 

リトルガーデン

エロゲです。エロゲ週間ですねw
多分攻略順を間違えましたw一週目に真相に近い人をやってしまったせいでもう全然・・・
「あー、はいはい。あの人ってあの人でしょ?」ってwww 箱入りお嬢様がそこそこに流されるままにえっちしていきます。
それにしても後ろからやるの多すぎてわらった。スチルがあんまりえろくないのは主人公ちゃんも攻略キャラも表情がいまいちだったからかも。
扇情的じゃないというか。一番好きなEDが薬漬けENDかな!!あと、執事と結ばれるやつですね。執事が一番好きです。お嬢様と執事が大好きです。

 

黒と金の開かない鍵。

ヤンデレがいると聞いて。そして、義弟がCV・・・のため。笑
ヤンデレっていうか、マジキチだらけでしたね!!!ダメだってイヤだって思っていても結局強く拒めず、快楽に流される主人公。
このスチルもえっちいことしてる割りにあんまりえろく感じなかったな~。弟が病む前まですっごい楽しかった!!!酔っ払って抱きついて寝ちゃうところとか凄い良かったです。
オナニーみられて、病んだのが凄くびっくりしましたが、まぁ・・・まぁしょうがないね!!ドアちゃんとしめようね!!
あと、同級生はただのヤリチンですね!好きっていう気持ちよりも気持ち良いからやりたいっていうのが強くて、なんか「あー、若いねぇ」ってなりました笑
私の求めるヤンデレとは何か・・・そんな事を考えましたw

 

PersonA ~オペラ座の怪人~

二面性っていう意味でペルソナだったんですね、タイトル(終わってから気付いた)
レミィさん~レミィさん~!!!あとラウルね!良かった!!正直どっちも病み始めた時めっちゃテンションあがった笑
最初、怪人が兄さんなのかな?って思ってたら違いましたw
ああ、もうレミィさん色々美味しいよ~!!ありがとうございます!
主人公ちゃんが割りと快楽に流されやすいというか、見知らぬおっさんから腰なでられたりすると露骨に嫌がるんだけど、攻略キャラから無理矢理キスされたり、押し倒されて、「

あ・・・っ、いや!」みたいに抵抗はするものの、全くもって抵抗できてないっていうか、途中から「音・・・恥ずかしい!」みたいにいうから全然嫌がってないねwwwwって笑いました。
いや、エロゲーの主人公たるもの快楽に弱くていいと思う。
薬盛られてもそこまでえろくならなかったな・・・ちっ・・・て思ったから私は多分男性向けのエロゲやりすぎなのかな(そんなにやってないつもりなんだが)
なんかもうひたすらエロゲやりすぎてよく分からなくなってきたんですけど、女性向けエロゲは69するとき上下になるんではなくて横になる割合高いなって思いました。

振り返らない(ナツアイ)

独りは怖い。
それなのに、誰かに踏み込まれることが怖い。

 

 

 

夕食が終わり、私たちは向かい合ってダイニングテーブルで今日の出来事を話していた。
それからいつものように昔話に花が咲く。幼なじみだから、やっぱり昔話になると盛り上がってしまい、ひとしきり笑った後にふとある事を思い出した。

「小さい頃ね、自転車の補助輪がなかなか外せなくて」

「ああ、そうだったね。アイちゃんは」

お揃いのマグカップに注がれたホットココア。
ナッちゃん特製のホットココアを一口飲みながら私は子どものころを思い出す。
ナッちゃんは気付いたら補助輪なんてつけてなくて、私も追いつきたくて不安だったのに補助輪を外した。

「お父さんにはまだ早いって心配されたなぁ」

「僕が補助輪の代わりに抑えてあげてたの、覚えてる?」

「もちろん覚えてるよ」

ナッちゃんの知らないうちに乗れるようになりたかったのに、結局ナッちゃんに練習を手伝ってもらうことになった。
お父さんよりも上手に支えてくれたのをよく覚えている。

「ナッちゃんが支えてくれることが嬉しくて、手を離してっていえなかったんだもん」

「抑えてるねって僕の言葉信じて、僕が手を離していたことに気付かなかったもんね」

「そう!まだ離さないで!って私言ってたのに・・・ナッちゃんったらずるいんだもん」

「ははは、ごめんね」

「もう・・・本気で悪いなんて思ってないくせに」

「そんな事ないよ」

ナッちゃんは笑いながら私の頬に触れる。
カップに触れていたからか、ナッちゃんの手はいつもより温かい。
ナッちゃんの手が大好きだ。
こうしてナッちゃんが私に触れてくれる手が大好きだ。
彼の手に自分の手を重ねた。

「ナッちゃんに追いつきたかったのになぁ」

「追いつきたい?」

「うん」

今もそうだけど、子どものときの一歳の年の差はとても大きな壁のように感じた。
私の知らない女の子がナッちゃんと話しているのを見た時、胸がぎゅうっと締め付けられた。
大きくなって知った。あれはヤキモチだったのだと。

「僕は、このままでいいんだけどな」

一瞬、ナッちゃんの表情が翳ったような気がして、ドキリとする。
私は何かいけない事を言ってしまったんだろうか。
だけど彼は何事もなかったように微笑んだ。

「僕の隣は、君のものだから。一生懸命背伸びなんてしないでいいんだよ」

「・・・ナッちゃんったらそうやって私のこと甘やかすから」

「好きな子はとことん甘やかしたいんだよ
でも、さ-」

 

ふと、空気が変わった気がした。
ナッちゃんはいつものように私の好きな笑みを浮かべている。

 

 

 

「本当はもうアイちゃんには、僕なんて必要ないのかもしれないね。
あの時のように、振り返らなければ僕がいない事にも気付かないかもしれない」

 

 

 

 

 

「・・・ナッちゃん、何か言った?」

彼が何かしゃべった気がするのに、声が届かなかった。

「アイちゃんのことが大好きだって、言ったよ」

優しく笑う彼の手を、私はまだ離せない。

 

 

恋文は突然に(アキアイ)

少しずつ。
多分、他のカップルに比べれば私たちの歩みはとてもとても遅いのかもしれない。
一歩進んでは立ち止まり、戻って・・・進んでを繰り返すような日々。
それでも心地よい距離感にアキちゃんがいて、たまに凄く嬉しそうに笑う彼を見て、幸せだなぁ・・・と思えるようになった。

授業中、アキちゃんから届くメッセージの通知。
それをこっそり見てはくすりと笑う。

『アイちゃん、大好きだよ』

と何度もメールをもらった。
口に出して伝えてくれるし、メッセージでも隙あらば・・・というくらい言葉にしてくれる。
私もアキちゃんにそういう気持ちを少しずつ伝えていけるように頑張ってはいるけれど・・・
アキちゃんに言われて、私が返すっていう図式が少し申し訳ない気持ちになる。

(だけど、アキちゃん凄い言ってくれるしなぁ・・・)

世間のカップルがどのくらいの頻度で好きだよ、って言ったりするのかは分からない。
私にとって初めての恋人はアキちゃんだから比べるものなんて勿論ないし、比べたらアキちゃんは拗ねるし、きっと見えないところで傷つくだろう。
かと言って、クラスの子にそんな事聞いたら大変なことになりそう。
アキちゃんと付き合い始めた頃、ほとんど話したことのないような子にさえ質問攻めにあった。
そうして話したことのなかった子とも少しずつ話せるようになり、少しだけ私は生きやすくなった気がする。
アキちゃんと付き合うようになってから、少し空気が柔らかくなった気がするとクラスメイトに言われた時は嬉しくてアキちゃんにその話しをした。
私以上に喜んで、それから-『でもアイちゃんに変な虫寄ってこないように気をつけないとね』と悪い笑みを浮かべた。

ゆっくりゆっくりだけど、私たちは恋人になっていっているんだろう。
繋ぐ手が、ドキドキ以外のものをくれるようになった。
抱き締められると彼の匂いにほっとするようになった。
そうやって少しずつ、好きという気持ちが私を優しくしてくれてる気がする。

振動するスマホからはやっぱりアキちゃんからのメッセージ。
放課後の約束だった。それに返事をしたところでふとノートに目がいく。

 

 

 

 

 

 

アイちゃんは可愛い。
贔屓目に見なくても可愛い。
以前はちょっと影がある空気があったので近寄りがたいと聞いたことがある。
けど、今はオレと付き合うようになり、柔らかくなったといわれたと聞いたし、実際オレもそう感じていたから凄く嬉しかった。
学年が違うから完璧にガードできてるかどうかは分からないけど、アイちゃんにはオレがいるぞっていう事をアピールは欠かさないし、オレにはアイちゃんがいるというアピールも欠かさない。

「アーイちゃん」

「-っ!アキちゃん!どうしたの?」

「あれ?アイちゃん掃除当番なんだ。そこで待っててもいい?」

「まだ少しかかるけど、いい?」

「うん。ここからアイちゃんのこと見てるね」

「アキちゃんってば」

いつも下駄箱だったり、校門だったりで待ち合わせをしているけど教室でのアイちゃんが見たくてこうしてやってきてしまった。
一生懸命箒を掃く姿も可愛い。いや、しつこいけど何しても可愛いんだけどね。
オレの知らないクラスメイトと話をするのを見て、やっぱりまだ固い表情にちょっとだけ安心する。
一番可愛いアイちゃんを知ってるのはオレだけ。しゃがみこんでアイちゃんの様子をひたすら見つめていた。

 

掃除が終わり、ようやく二人で学校を出る。
いつも通りの帰り道。今日は二人で本屋に寄り道をして、あと10分も歩けばアイちゃんの家だ。
今日一日の出来事を話し終え、オレはさっきの掃除をしていたアイちゃんの話題を引っ張り出した。

「アイちゃんが頑張る姿って新鮮だなぁ」

「そんな事ないと思うけど」

「オレの知らないアイちゃんを見た気がする」

冗談めかして本音を漏らす。多分アイちゃんにもそれが伝わったのだろう。
一瞬眉間に皺が寄る。それから一旦繋いでいた手を離すと鞄から紙を取り出した。

「これ、あげる」

「なに?これ」

「アキちゃんが知らない私・・・かな」

そういわれて、渡された紙を開く。
アイちゃんらしい可愛らしいメモ帳にやっぱり女の子らしい文字で言葉が綴られていた。
”-アキちゃんへ

今は数学の授業中です。
本当はこんな事しちゃダメなんだけど、いつもアキちゃんに先を越されてしまうので私なりに考えてみました。
いつもいつもありがとう。
アキちゃんのこと、とっても好きです。
でも、あんまり授業中にメッセージ送ってきちゃダメですよ。

アイより-”

 

一度読み終わってからもう一回頭から読み直す。

「い、一回読んだでしょ!?アキちゃん!」

「いやいや、まだ読んでないよ」

「嘘だよ!」

恥ずかしそうに頬を赤らめたアイちゃんが視界に入る。
ああ、もうやだ。何この可愛い彼女。

「もう・・・なんで敬語なんだよ、可愛すぎるでしょ」

アイちゃんの手首を掴む。
引き寄せて、額に軽く口付けた。

「だって、手紙ってあらたまるから・・・もう、そんな顔しないで。恥ずかしくなる」

「アイちゃんからみてどんな顔してんの、オレ」

「・・・すっごい嬉しいってカオ」

「ふふ、だってすっげー嬉しいもん」

あー、この手紙後生大事にしよう。
にやける顔を抑えれないオレを見て、くすぐったそうにアイちゃんも笑う。

「オレもアイちゃんにいっぱい手紙書こうかなー」

「授業中はダメだよ」

「アイちゃんだって授業中に書いたのに」

「それは!思いついちゃったから・・・」

「そっか。アイちゃんは授業中もオレのことばーっかり考えてるんだ」

「-っ!授業も聞いてるよ!」

ああ、可愛いな。アイちゃん。
どんなアイちゃんも可愛いって思ってるけど、やっぱりオレの隣にいるアイちゃんがいっちばん可愛くて、大好きだ。
まず家に帰ったらメモ帳を探そう。
アイちゃんのように可愛いものは持ってないけど、アイちゃんが喜びそうなメモ帳がいいな。
そんな事を考えながらアイちゃんの手をぎゅっと握った。

 

 

溶けて消える(ユキ×ユア)

「おい、ユキ。おまえがここに固執する必要なんてないぞ」

「…」

喉が渇いたわけでもないのにユヅキの視線から逃げたくて手を伸ばしたグラスはすっかり汗をかいていた。
氷はとけてしまった麦茶はぬるくなってしまっていた。

「ユヅキが心配するようなことは何もないですけど」

誤魔化すように麦茶を一口飲む。
夏に飲む麦茶はどの季節よりもずっと美味しく感じるはずなのに、今なんとも思えない。あれから2年経った。
僕は中学三年生になり、来年は高校生ということだ。
この町を出るかどうか、選択することが出来るのだ。

「母親のことか」

僕は母親と二人暮らしだ。
確かに母親を一人で置いていくのは可哀想だとも思うが、病院があるからきっと彼女は仕事の忙しさが救ってくれるだろう。

「だからユヅキが心配するようなことはありませんよ。
僕は跡取りになるつもりもありませんし」

「俺が言ってるのはそういう事じゃないってわかってるだろ」

ええ、分かっています。
分かっていますとも。
だけど、ユヅキの勧めも何もかも受け入れることは出来ない。

「ユキくーん、買出しいってくるけどなにか・・・げっ」

「げっ、とは不躾だな。さっさと働け」

「はいはーい。で、ユキくんなにかある?」

「いえ、大丈夫ですよ。さっきお願いしたものだけで充分です」

「了解!それじゃあいってくるねー」

須沙野さんが出て行くのを見送ると、ユヅキがわざとらしくため息をついた。

「…一時の好きな女のために自分の選択肢を狭める必要はないだろう」

「そんなんじゃありません」

もう会話を続けないという意思表示のように、残りの麦茶を飲み干した。

 

 

はじめは危なっかしくて目で追ってしまっただけだ。
次に、肉親ですら僕を甘やかそうなんてしなくなったのに僕の頭を撫でて笑うようになった…その笑顔が脳裏に焼きついた。
落ち着きがなくて、僕より子どもなんじゃないかと思う事もあるのに、たまに見せる悲しそうな顔から目がそらせなくなった。
あの夏から二年。
彼女は本当の意味で笑わなくなった。
こんな小さな町で、連続殺人。ライブの中止-そんな出来事が数日の間に起きたのだ。
忘れられるわけもない。
一度だけ聞いたことがある。
どうかしたのか、と。
僕にはどう聞いていいのか分からなくて、そう口にした。
なんでもないんだよ、と彼女は笑った。
あの夏から、彼女は僕を撫でなくなった。

 

「…自分の選択肢、か」

母親の病院を継ぐためにも僕は医大に入れるような高校に進むべきだろう。
分かっているけれど、どうしてもまだこの町を出るという選択は出来ない。
そんな事を思いながら日々を過ごしていると、あっという間に時は流れた。
決断しなければならない。

 

「ユキくんは、この町を出るの?」

「さあ、どうでしょう」

「そっかあ、寂しくなるなぁ」

「僕は出るだなんて一言も言っていませんけど。須沙野さんは出て行ってほしいんですか?」

「ユキくんいなくなったら、ここで働くのきつそうだなぁ~とか思うし。
やっぱりユキくんいると癒されるし、いなくなってほしくないよ」

須沙野さんは寂しそうに笑う。
太陽みたいに眩しい笑顔が好きだった。
手を伸ばしても届かないって思っていたけれど、あの笑顔に僕は焦がれていた。

「…気になる人がいて、この町から出て行くということが考えられません」

「そっか、そっか。ユキくんもお年頃だもんね~、かわいいなぁ」

ふと、彼女の手が動いた。
僕の頭に伸ばそうとしたその手は動きをとめ、空を掴むだけだった。

「…はぁ、もういいです。須沙野さん、玄関前の掃除お願いできますか」

「うん、了解」

須沙野さんは何事もなかったように笑った。
僕の気になる人が誰だかなんて興味ないんでしょうね。
この二年で背だって伸びた。須沙野さんと並ぶくらいには伸びた。
それでもまだ僕は彼女にとって意識してもらえるような男になっていない。

ため息をついた僕を見て、須沙野さんが少し笑ったことを僕はまだ気付いてない。

声(ユキ×ユア)

ヒトが死ぬと、まず忘れられていくのはその人の声だと聞いたことがある。
どんな声で笑って、どんな声で泣いたのか、思い出すことが出来なくなっていくのだという。

「…トア」

全く似ていない私の弟。
赤の他人が私たちを見ても姉弟だなんて気付かない。
現に誰も気付かなかった。この世に未練を残して、彼は戻ってきてくれたのに。
遣り残したことをやらせてあげることも出来ず、あの子が願った想い人と報われることもなく、あの子が戻ってきた意味を考えていた。

 

町はいつもと変わらない。
殺人犯がこうして歩いているのに、誰も気付かない。
こんなに可愛い制服に身を包んでいる私が殺人犯であることを知らない。

「あら、ユアちゃん!今日は買い物、いいのかい?」

「あ、おばちゃん。うん、大丈夫だよ」

万屋のおばちゃんがちょうど店先に出ているところに遭遇する。
彼女の手には、丸められた紙があった。

「…おばちゃん、それ」

「ああ、これ?ほら、こないだのアイドルのポスターだよ。結局開催されなかったからねぇ、はがしてたんだよ」

「それ、もらってもいい?」

「ああ、いいとも。ユアちゃん、楽しみにしてたもんなぁ。残念だったね」

「う、うん」

ポスターを受け取ると、私は平静を装いながらおばちゃんと会話を続けた。
手のひらが汗ばんでいて、ポスターがくしゃくしゃになってしまわないか。それだけをずっと考えていた。
風厘館に戻ると、お客さんがいないフロントは酷く寂しかった。
従業員も私たちだけ。お客さんもあれだけいたのに、シーズンが終わって閑古鳥。
まだ夏は終わらないのに、どうしてだろう。私にはもう二度と夏が来ないような気がした。

「須沙野さん?」

名前を呼ばれて振り返ると、ユキくんが立っていた。
ちょっとだけ疲れた顔をしていたけれど、いつものユキくんだった。
私の手にあるポスターをみて、何のポスターか分からないはずなのに私が大事そうにしているのを見て分かったようだ。

「須沙野さんも楽しみにしてくれてましたもんね、ライブ」

「…残念、だったよね。ユキくん頑張ってたのに」

「いえ、もういいんです。また次頑張れば…もしかしたらまたエイトは来てくれるかもしれませんし」

世間にはまだ公表されていない、彼の死。
あの子は死んだの。
もう次なんてなかったのに。
それなのに、あの子の未練をかなえてあげることが出来なかった。
あの子を、救いたくて私は自分の手を汚した。
けれど、結局何にもできなくて。何もできない、何も残せない私は今日も生きている。

「…次なんて、もう」

「確かにこんな田舎町にはそんなチャンスはもうないかもしれないですけど…。諦めなければきっとまた」

私の顔をみて、ユキくんは口を閉ざした。
彼は驚いているようだ。私が泣く理由が分からないから。

「泣くほど楽しみにしていたんですね…」

ちがう、そうじゃない。
確かに楽しみにしていたけれど。
あの子の晴れ舞台、どれだけ心待ちにしていたか分からない。

「…っ、」

ユキくんの手が、私の頭に触れた。
背一杯背伸びをして、目一杯手を伸ばした。

「…ユキくん」

「泣かないでください、と言いたいですが…泣きたいなら泣いてもいいです。
僕が傍にいます」

まるで告白するみたいに、頬を赤らめてユキくんは言った。
私の手は汚れてしまって、もうユキくんの頭は撫でてあげれないけれど。
私は、何も言えずにただその優しさに甘えた。

 

 

 

あの子の歌声を聴く。
あの子の演技している声を聞く。
もう、本当のあの子はどこにもいないと私は繰り返し泣くのだ。

6~7月プレイ状況

今回は乙女ゲーム以外にもギャルゲー多いです!
ゆるっとプレイ感想を~

 

 

 

 

百鬼夜行〜怪談ロマンス〜

恭介めっちゃ可愛いし、椿も可愛いし、信二も美味しい。
明日馬めっちゃ攻略したいよ~!!と想ったら続編で出来るようなので、ドキワクです!!!
ツンデレ美味しいし、幼なじみ美味しいし、おいしい。

 

Dance with Devils

ローエン目当てに購入し、案の定ローエンに落ちました。
可愛いよ~~!!わんこかわいいよ~!!!一番最初にシキをプレイしたんですよ。
そしたらアクマ√、とんでも展開でそれ以降の攻略キャラ、めっちゃ身構えてプレイしたらそんな身構えなくて良かったwww
お兄ちゃんは想像してたよりツボにささらなかったのですが、ローエンがやばい。犬姿も可愛いし、犬目線(10章)が本当においしくてもだえました。
ヒトENDもアクマENDも美味しかったよ~!!!

 

ルートダブル

ダブル主人公で、√ごとに視点切り替わるんですが面白かったです。
久しぶりにサスペンスやって続き気になる!!誰が悪いやつなの!?ってドキドキしながらやりました。
Vitaでやるなら3000円しないくらいでダウンロードできたので、おすすめです!!

 

シルヴァリオ ヴェンデッタ

乙女ゲームじゃなくて、エロゲー移植品です。ルシードが好きです。
勝ち続けなければならない。それがどういうことなのか、という話です。
チトセという攻略キャラから攻略されそうな勢いで迫られるのが最高に美味しいです。

SNOW

こちらもギャルゲーです。
AIRとかKanonお好きな方はきっと好き!!

AMNESIA V Edition

PSP版でプレイしていたんですが、積んでたVita版をようやくプレイしました~!
やっぱりアムネシアって面白いね!!オリオンが私も欲しいです。
初めてプレイした時、イッキさんそんなになんとも思わなかったのですが、プレイしなおして泣いた。イッキさん切ないよね。
しかし、やっぱり本命はトーマでした。下着見せられちゃうトーマおいしいし、気持ち振り切るために他の女の子と付き合ったとかもうトーマおいしい。
トーマは臆病だから関係が変わらないようすっごい気をつけていて、それはトーマの根本部分だからシン√のトーマもそうだったと想うんですよね。
だからまぁ・・・あんな悲しい展開。シン√つらすぎる。
どのキャラも良いし、やっぱりアムネシアって面白いな!!!に落ち着きました!

 

カエル畑DEつかまえて・カエル畑deつかまえて・夏 千木良参戦

千木良先輩がやばい。

本編プレイ中、あ~ハム男めっちゃ好きなやつだ~!可愛い!!可愛い!!って言ってたのに、FDやって千木良先輩の沼へ落ちました。
ハム男可愛いツンデレごちです!!広瀬くん、腹の底が見えないと思いきや、入試で恋してたー!!!幸せ感じると雨降っちゃうかわいいい!!
先生、先生√のふうちゃんくそかわ!!なんだよ、くそかわ!!!とかいってたのに、FDで千木良先輩攻略して本当沼・・・
久しぶりにゲーム、買いなおしました。千木良先輩の小冊子ほしくて、ステラで買いなおしました。千木良先輩、最高です。

 

7’scarlet

こちらに感想かいてます。

 

SA7

ごめん・・・本当ごめん。ゼロとルイプレイして、プレイするのやめてしまいました。
合わなかったかな・・・特殊能力を持った秘密結社に入隊することになった→攻略キャラもとい主人公の特殊能力がいまいちぱっとしないためかよくわからん→大したことしてないのにめっちゃ持ち上げられる主人公→攻略キャラと場をわきまえずいちゃこら。そこ緊張して!!緊張感持って!!!っていう感じで、「えっ!!?」とか「お・・・おう」ってリアルに声出しちゃう展開多すぎて疲れました。

 

蒼の彼方のフォーリズム

これはアニメ化もされているのですが、アニメ化する際に近藤孝行さんが出演しているのを知って、3話くらいまで見ていたんですが、ゲーム発売するし、ゲームやってからアニメみよう!ってゲームを買ってから積んでいたのですが・・・めっちゃくちゃ面白かったです!!
フライングサーカスというスポーツのお話なのですが、スポーツの試合も熱い!!各ヒロインの√、どれも面白いし、主人公かっこいいし、付き合う→いちゃいちゃっていう過程が不自然じゃないというか、「あ~学生っぽいな~」ってなる感じで可愛いです。元エロゲーなので、事後の描写ありますので、苦手な方は注意してください~。
攻略キャラ全員終わった後、葵さんと最後に空を飛ぶとき、何も伝えなかったけど、やっぱり好きだったと思うわけですよ・・・!!あああ・・・
ちなみに興津さんと緒方さんでてますよ!

カナワヌネガイ(ユキ×ユア)

梅雨が終わる頃、この町は少し独特な空気が流れる。
田舎町だから隠し事なんて出来ないだろうし、自宅が病院なのでご年配の方が忙しなく噂話をする。
インターネットの世界に入ると町の閉塞感を少しだけ忘れることが出来た。
この町で生まれて、成長して、そしてきっとこの町で死ぬのだろう。
そんな漠然とした…けれど確定事項のような未来を時折考えてはため息をついた。

「ユキくん、ユキくん!」

「どうしました?須沙野さん」

「大変!また買い物袋忘れてきたみたい!どうしよう!」

須沙野さんは僕よりも7歳年上だけれど、ご覧の通り元気いっぱいだけど、うっかりすることも多い。

「僕が探してきますから、須沙野さんはフロントをお願いします」

「ごめんねー!うん、分かったよ!!」

いつもの日常。
須沙野さん以外の従業員がいなくなったあの日から、これが僕にとっての日常になった。
田舎町だから、噂が広まるのがはやい。
ツチノコ急便を見かけたら両手を合わせて祈ると好きな人といい事があるとか。
あのツチノコの舌にキスすると恋愛が成就するとか。誰がそれを実行して恋愛が叶ったとか。
そんな噂がいくつも耳に入る。
けれど、須沙野さんの噂を聞いたことがない。

(・・・恋人とか、欲しいと思ったことないんだろうか)

夏休み、誰とどこにいくとか。
クラスの女の子だったり、生徒会メンバーだったり、声はかけられた。
諸々忙しいことを伝えると、彼女たちは残念だと少し悲しそうに笑う。
そんな顔を見ると、申し訳ないなと少しだけ胸は痛む。
だけど・・・

「すいません、先ほど買い物来た時に須沙野さんが・・・」

「ああ!取りに来てくれたのかい、ほらこれだよ」

万屋へ行くと須沙野さんの忘れていった買い物袋を受け取る。
それからいくつか言葉を交わし、僕は買い物袋をぶら下げて風厘館へと戻る。
梅雨が終わり、夏が来る。
毎年のことなのに、なんでだろう。心がざわつく。
もうすぐオフ会があるからだろうか。それともライブがあるからだろうか。
僕の心はいつもより少し穏やかじゃない。

「ただいま戻りました」

「おかえりー!!ありがとう、ユキくん!」

僕の姿を見るなり、まるで飼い主の帰りを待ちわびていた犬のような勢いで駆け出してきた須沙野さん。

「今度は気をつけてくださいよ」

「うんうん!分かってるよ~!本当にありがとう!」

買い物袋を受け取ると、心底嬉しそうに笑った。
いつも見る表情の中で、僕はこの笑顔が一番好きだ。

「…もうすぐ夏祭りですね」

「あーそうだね。8月に入っちゃえばあっという間だもんね」

「須沙野さんは行く予定あるんですか?」

「私?うーん、この調子ならここで働いてるんじゃないかな」

「…ですよね」

「そういうユキくんは?女の子に誘われたりしないの?」

「僕だってここの仕事があります」

「学生のうちにしか出来ないことだってあるのに」

「夏祭りに行くのなんていつでも出来ますよ」

「好きな女の子と夏祭りいって、ひと夏の思い出作ったりとかさ。
やっぱり若いうちにしておかないと!」

「須沙野さんはそういう思い出、作ったんですか?」

「ふふー、内緒」

「…それはずるいです」

「拗ねてるの?可愛いなあ」

須沙野さんの手が僕の頭を撫でる。
子ども扱いされている事と甘やかされている事と。

「や、やめてくださいっ」

「ふふ、良いではないか。良いではないか~」

「須沙野さん!」

「あ、荷物片付けてくるねー」

旗色が悪くなると僕の頭から手を離し、ひらひらと手をふって奥へと消えていった。
自分で頭をなでても、さっきのような気持ちにはならない。
須沙野さんにだけ感じる想いがあった。

(…今年は従業員が少ないから難しいかもしれないけど、来年は誘ってみよう)

好きな人と夏祭りにいって、ひと夏の思い出を作る…とか。
彼女とならやってみたいと今はまだ言葉に出来ないけれど、来年は。
もしかしたら急に背が伸びて彼女を見下ろせるかもしれない。
僕が、彼女の頭を撫でられるようになるかもしれない。
いや、来年は難しくても・・・あと数年経てば。
そんな事を考えながら、7月の終わりに僕は来年への決意をしていた。

【プレイ感想】7’scarletプレイ感想

全力でネタバレなので、プレイ予定の方は見ないでください。
絶対ネタバレ見ないでやった方が楽しい作品です!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

プレイ時間はおそらく15時間くらいだったと思います。
既読スキップ・ボイスを最後まで聞いたり聞かなかったり、なので普通にやっても20時間はかからないです。

お兄ちゃんが失踪して一年。消息たったと思われる場所へいってみよう。
それも幼なじみが提案するのに、イチコが頷く形で始まります。
イチコは大人しい感じで、行動を自分で決めるタイプじゃなくて、幼なじみであるヒノが面倒を見ているという感じ。
ヒノと一緒に奥音里へ行くわけですが・・・スタッフ足りないからバイトしない?みたいなのを同年代のお客様だからってスタッフ言わないだろwwwって思いましたよね!
宿泊しにいって、あんな気安く言われたら私は帰りたい。ユヅキさんめっちゃ感じ悪いしね!!
すごく大好きな兄だという割りに一年も探さないでいた事や、兄を探すために来ているのに写真の一枚もないこと。
誰かの√でEDを迎える度、兄が死んだかどうか分からないけど兄は死んだ・・・いや、生きてるかもしれない。
でも、なんでしょうね。兄への思いがあまり感じられない様子でした。
たった一人のお兄ちゃんを失った穴は苦しい。だけど、それを埋めたいというユヅキの言葉が私にはめっちゃくちゃ違和感でした。
肉親の穴は肉親しか埋められないのではないかと私は思います。家族愛と恋愛は違うと思うし、ゆくゆく二人がそうなっていくのかもしれないけど、この時にはまだ二人の間にあるのは恋愛の愛だと思うから。
うーん・・・うん。まあ、乙女ゲームだからな。そうやなって言ってしまえばそれまでなんですけど、そういうところを含めてもイチコちゃんの兄ちゃんに対する情みたいなものをあまり感じませんでした。

そういう違和感は兄ちゃん・・・ハナテ√で解消されます。
離れてる間に作られた記憶は薄れていく。ハナテに再会して、真実を聞いて、イチコちゃんがそれでもお兄ちゃんが大事だというけれど、それはイチコちゃんの本当の気持ちだったのかなぁ・・・と思います。
ハナテはハナテが生きていきやすいように周囲の人間の認識を変えることが出来る。だから、イチコちゃんの気持ちをそういう風に変えてしまってるんじゃないのかなぁと思いました。

そもそも屍者ってどういうタイミングで蘇るんだろね?烏丸嫁は亡くなって一年後。
ユアちゃんが屍者だって名乗りをあげた時も昔から、というかここのところはずっとホテルに勤めてるわけだし、別ルートだけど一緒にお風呂入ってるから違うんだろうな~、と思いつつ。
なので、あそこで名乗りをあげる屍者はヤスだと思ってましたwwwいや、なんか活躍するのかな、って!!おもったら違ったwトアはアイドルっていうよりもなんだろう・・・ミュージシャンとかでよかったんじゃないかしら。
アイドルって言われるとジャニーズ的なものをイメージしてしまうんですよね。
しかし、トアがめがねを外すと髪型も服も変わる立ち絵には笑ったwいや、眼鏡外しただけの立ち絵も用意してあげて!!

そして烏丸さんねー!!!烏丸さんイケメンでしたね!!
ヒノ√で「え、もしかしていい人なの?」っておもいましたが、ユヅキ√で王子様のように助けてくれて「ああああ!!烏丸さーん!!!」ってなりました。
さすが安元さんボイス。イケメンでした・・・

ユアちゃん、いい子でしたね。可愛い可愛いっておもってやってたら、誰√か忘れたけど(ユヅキでしたっけ?)「私は私のできることを・・・」みたいな事いってましたよね。
あれは人を殺めてしまった後だったからか、と今思いますが、あそこで明るくて可愛い胸の大きい子!っていうイメージだったのが後ろ暗い何かがあるんだな、と気付かされた。

あと序盤になくなったイチゴ以外の食料や、トアが飲み物しか飲まなくて、ご飯はみんなと一緒のときしか食べないこと。
気付いたらいなくなっていたこと。綺麗に回収されてて「あーー」ってなりました。あと、ツチノコね。
そして月読っていう苗字が怪しいな、みたいな漠然とした感じに思ってたら犯人でしたね。盗撮だめ、ぜったい。

 

乙女ゲームだから攻略キャラと最終的にいちゃこらしなきゃ!みたいなノルマみたいなものは感じましたが、無理にいれなくてもいいのにな~と思います。

ヒノ

製作陣はヒノのこと嫌いなのかな?あの浴衣はないだろうwwww
久しぶりに立ち絵でふいた。なんで浴衣なのにドット柄wwwイチゴ嫌いなイチコに嫌われるようにって誰かが仕組んだのかと思うくらいのあれでしたwww
他キャラでは浴衣にコメントするような選択肢でないのに、なぜヒノだけwww
全く異性として意識されていないヒノはラッキースケベ的な感じに接触多かったですね!!
男の人のたくましい・・・みたいなト書き出る度にイチコちゃんは身体的接触に弱いんだな、というのと男の人の香りが好きなんだなって思いました。
ヒノと幸せになればいいなって思います。ノマエン、あれはバッドだとおもいます。

 

イソラ

柿原さんがメンヘラ枠だったらどうしよ~ってみたいな気分でやったら大正解で笑いました。
イチゴのタルト食べてよって怖い声で言われて怯えた。
あれだよね、きっと小さい頃にイチゴのタルコ食べさせて倒れさせちゃって・・・っていう事らへんから自分を思い出してほしかったんだよね。イソラ。
しかし、猫面倒した後その場でちゅっちゅっしはじめた時は「おまえら!!!」って思いました。
にげよ?火事だし逃げよ?とりあえずイソラは目上の人を敬う姿勢を学んだ方がいい。

 

トア

眼鏡外すと髪も縛ってあるという不思議立ち絵、書き下ろしてあげてって思いました。
真相やる前に、トアEDがなんで今生の別れみたいなんだろう?って思ったんですよね。
だって連絡なんて出来るじゃないですか。で、手紙が最後に届いたから「家の住所は交換してたの?」ってちょっとだけ気になったんですよね。
あと、トアにはおねーちゃんがいるっていう話もあったのに、それ以降出てこなかったことも。
キスして充電できるっていうならさっさとやってしまえばよかったのにって思ったのは私だけですか。
真相√、ガマキが切なかった。ユアちゃんの後ろ暗さはここだったのよね。

ソウスケ

なんで医大6年生がこんな事してられんの?っていうリアルなことばかり考えてましたw
医大生が迅速に怪我の処置できるかっていったら出来ないだろね。あんな冷静に対応できるのは場数をこなしたお医者さんだけよ。まぁ、ゲームだから!!ゲームだから!!
ラストオーダーちゃんには笑った。そしてソウスケの分かりにくい冗談やらなんやら好きです。

ユヅキ

看病されておちたよね、この人。
いや、ちょろいなぁ~って思ってたらお父さんも「お父様」って呼ばれて落ちてたよね?ちょろい親子だなって思ったら可愛く思えました。
オーナーさんって呼んでたのにイチコちゃんも気付けば、というかあっという間にユヅキさんって言ってて、ユヅキ相手のイチコちゃんは押せ押せでしたね!!
烏丸さんが王子様でした。

 

ハナテ

ここしか登場しないお兄ちゃん。今年の乙女ゲームの緑川さんはこういう役回り多いね。
ソウスケ√やってる時だったか、12年前の話をしているときに当時お兄ちゃんは高校生くらいでみたいな話題あったとき「え?兄ちゃんと何歳差だよ」て思ったことから兄ちゃんはほぼ存在しないんだなと思いました。最初、イチコちゃんが12年前に死んでて屍者になったのかなとか考えてました。そのイチコちゃんを生かすために兄ちゃんが人殺してるのかな~とヒノ√やってる時に考えていたんですけど、全然違ったね!!

 

 

膝枕(千木良×風羽)

「…なんや、そんなじっと見つめて」

季節は夏から秋に移り変わる頃。
夜はTシャツでいると寒くなってきたそんな時期。
お風呂から上がると、千木良先輩は私の部屋へ来ていた。

「先輩、眠くありませんか」

「ん?眠いんかお前」

「いえ、全然。お気遣いなく」

「じゃあ何やねん、今の話題振り」

「眠いのであれば、ぜひ」

ぽんぽんと膝の上を叩くと、わざとらしくため息をつかれてしまった。
眉間を指で揉み解すと、私を見つめた。

「お前は誘っとんのか」

「ええ、誘っております。ぜひ、どうぞ」

「そういう誘うじゃなくてだな…」

恋人同士の過ごし方、というものを教えてもらったのだ。
いちゃいちゃする、ということの具体例が分からずしばらく実行できていなかったけども情報を入手してきたのだ。
いざ実戦!と思い、千木良先輩に訴えるとあまり喜ばれない。

「以前、屋上でお誘いした時には膝枕を受け入れてくれました」

「そん時と今は状況がちゃうやろ」

「先日も今も二人きりです」

「…あー、そやな」

「私はもう少し千木良先輩に触れたいですし、触れられたいです」

「…お前は本当にそういう事を臆面もなく言うなぁ」

最近少しだけ先輩のことがわかってきた気がする。
照れる時、彼は目を閉じて眉間に皺を寄せるのだ。
照れくささを誤魔化そうとしている表情、私はその表情もとても好きだ。

「さあ、どうぞ。遠慮なさらずに」

「はいはい、そうまでいうならしてもらうわ」

ごろんと私の膝の上に頭を乗せる。
先輩は仰向けの姿勢で、目も閉じずに私を見上げる。

「いかがでしょう、私の膝は。最近やわらかくなるように揉み解しているのですが」

「ああ、悪くないな」

「それなら良かったです」

先輩の手が私の頬に伸びる。

「なあ、風羽」

「はい」

「呼んだだけや」

「…はい」

「風羽」

「はい」

「そんな嬉しいんか?俺に呼ばれるの」

「はい。あなたがつけてくれた私の好きな名を、私の好きなあなたが呼んでくれること。
この上なく喜びを感じています」

「大げさな奴やなあ」

「そうでしょうか」

「ああ、大げさ」

そう言いながらも先輩は嬉しそうに笑う。

「千木良先輩」

「ん」

「千木良先輩」

「なんや、俺の真似か」

「いえ、私もあなたを呼びたくなりました」

「俺が言うの聞いてやりたくなったんなら俺の真似やろ、それ。」

「おお…」

「おお、やのーて…まあ、ええわ」

「でしたら今日は私が烏を数えましょうか」

「ん」

「烏が一羽…、烏が二羽…」

目を閉じて、私の声に耳を傾けているのだろう。
先輩の髪に触れると乾かしきっていなかったのか、少し湿っている。
そういえば少し太ももがひんやりすると思ったが、その正体は先輩の髪だったようだ。

「好きです、先輩」

「…烏数えてたんじゃなかったのか」

「おお、間違えてしまいました」

「間違えんな、あほ」

先輩は身体を起こすと、あっという間に私に口付けた。

「おまえの膝枕じゃイマイチ眠れんわ」

「やはり揉みたりなかったでしょうか」

「俺にはこっちがええわ」

そういって私の腕を掴んで再び寝転んだ。
まるで私を抱き枕にするような体勢で。

「先輩」

「ほら、お前も目ぇ閉じ」

「…はい」

抱き締められたまま眠れるのだろうか。
心臓が今まで経験したことがないほどドキドキいっている気がする。

「風羽、おやすみ」

いつもより少し優しい声。
それはきっと私しか知らない声。
千木良先輩は私の額に口付けた。

「おやすみなさい、先輩。
先輩の夢、見れますように」

先輩が微かに笑う声がすると、烏を数え始めた。
先輩を寝かしつけたかったのに、結局自分が寝かしつけられてしまってる。
明日また頑張ろう。
そう想いながら心地よいその声に耳を傾ける、ある日の夜の出来事。

泡沫(ナツアイ)

幸福な夢を見た。
それは幼い頃の思い出。
幼い私には、好きな人がいて、その好きな人も私を好きでいてくれる。
ただただ、幸福な夢だった。

 

 

「…アイちゃん、起きてアイちゃん」

「ん」

名前を呼ばれて、重たい瞼をゆっくりと開いた。

「ナッちゃん?」

「うん、そうだよ。ごめんね、起こして」

私を心配そうに見つめるナッちゃんの顔がすぐ近くにある。
彼の指が私の目尻をなぞると、そのまま髪を優しく梳いてくれる。

「夢を見ながら泣いてたから…起こしちゃった」

「泣いてた?私が」

「うん。怖い夢でも見てた?」

「ううん、怖い夢なんかじゃないよ」

怖くて泣いていたんじゃない。
だけど、どんな夢だったのかうまく思い出せなくて、眉間に皺が寄ってしまう。

「ごめん、無理して思い出さなくていいからね」

まるで母親が泣いている子どもを泣き止ませるかのような優しい声色。
それから額にそっと口付けられる。
ドキドキするけど、安心する。
ナッちゃんはドキドキもくれるけど安心もくれる人だ。
だから幼い頃から私はナッちゃんの背中を追って走った。
転びそうになるとナッちゃんはタイミング良く振り返って私を抱きとめてくれる。
そうしていつも優しく笑う。
そういう人だった。

・・・だった?

「ナッちゃん」

「ん?」

「昔もこうやって私のことあやしてくれたよね」

「そんな事もあったっけ」

「うん」

目を閉じるとすぐ思い出せる。
怖い夢を見たと言って怖がる私に絵本を読んでくれたこと。
私の手を握ってくれたこと。
一緒に四つ葉のクローバーを探したあの日のことも。

「ナッちゃん、ナッちゃん」

「どうしたの、アイちゃん。そんなに何回も呼んで」

「呼びたくなったの・・・ダメかな」

「ううん、嬉しいよ」

今度は頬へ口付けられる。
唇の端にまで口付けるのに、肝心なところには落としてくれない。
ねだるようにナッちゃんを見つめると、くすりと微笑まれる。

「どこに欲しいか言ってくれないと分かんないよ、アイちゃん」

「・・・ナッちゃんは優しいのに、たまに意地悪」

言葉にするのは恥ずかしいから察して欲しいのに。
察してるのに、言わせようとするのは意地悪だ。

「拗ねるアイちゃんが可愛くて、許して」

そう笑うと、唇が重なる。
ナッちゃんの手に自分の指を絡める。
どうか、この手が離れませんように。
例え夢だったとしても、この手を離したくなんてないの。

私の想いに応えるように、ナッちゃんは強く握り返した。

七夕の願い事(ローリツ)

「はい、ローエン」

「…これはなんですか?」

「短冊だよ」

「たんざく…はぁ」

私が差し出した短冊を受け取ると、ローエンは困ったような顔をした。

「そっか。魔界には七夕なんてないよね。七夕っていうのはね、年に一度織姫様と彦星様が会える日で・・・」

「存じていますよ、そんな事。ワタクシは博識ですから」

(・・・自分で博識っていっちゃうんだ)

ローエンはペンのキャップを外し、短冊に何を書こうか考え込みはじめた。
私はその様子を少しウキウキと見つめていた。

「どうしました?そんなにじっと見つめて。見惚れていましたか?」

「-っ!ち、違うよ!ローエンが何を書くのかなぁってわくわくしただけだよ!」

「ワタクシが書くことが気になりますか?」

「うん」

「そういうアナタは何を書いたんですか?」

「みんなが仲良く暮らせますようにって書いたよ」

「なんという面白みのない」

「だって大事なことでしょ?」

兄さんもようやくローエンと一緒に暮らすことに納得してくれるようになったけど、まだちょっと二人はぎこちない。
だからもう少し仲良くなってくれたら嬉しいなぁっと常々願ってしまう。

「まぁそうでしょうけど」

ローエンはさらさら、と短冊に文字を書くと、私に見えないようにひっくり返してしまう。

「あ、」

「ほら、短冊をつるしにいきましょう」

ローエンのお願いが見えなかったことにがっかりしていると、立ち上がったローエンは私に左手を差し出した。
そういう優しさで誤魔化されないんだから・・・と思いつつも、差し出された手を取る自分の頬は緩んでいただろう。
手を繋いだまま移動し、庭へ出ると兄さんが用意してくれた立派な笹の木があった。

「アナタの短冊はどこですか?」

「私のはこれだよ」

少し上の方に吊るしてある私の短冊を指差すと、ローエンは何も言わずにその傍に自分のものを吊るした。

「七夕の日にしか好きな人に会えないなんて可哀想だなって、初めて聞いた時思ったんだ」

「年に一度でも慕っている相手に会えるのだったら良いんじゃないですか」

吊るし終えると、離れていた手が、もう一度つながれる。

「もしも、アナタに禁断のグリモワールが宿らなければワタクシはきっとアナタにお会いすることはなかったでしょう」

もしもグリモワールなんてものが存在しなければ、今もローエンはマキシスの傍にいたのかもしれない。
そう思うと少し・・・胸が痛い。

「615年に一度しかない奇跡が、ワタクシとアナタを結んだんですよ。
七夕なんてどうってことないでしょう」

「・・・うん、そうだね」

私の勘違いかもしれないけど、ローエンの頬が心なしか赤くなっているように見えた。
吊るし終えたローエンの短冊が風に吹かれて揺れると、ローエンの書いた言葉が飛び込んできた。

-いつまでも傍にいられますように

ささやかな願い事が愛おしくてつないだ手を強く握り締めた。

 

指きり(ローリツ)

※ヒトEND

 

 

「ふう」

「ため息をついて、どうしました?」

「ううん。兄さんは手ごわいなーって」

全てが終わり、ローエンは私の傍にいてくれる。
母さんがいて、兄さんがいて、アズナがいて・・・そしてローエンがいる。
私が欲しかった穏やかな幸せが今ここにある。
グリモワールで散々な目にあっていた頃とは比べ物にならないけど、兄さんは手ごわい。
予想していた通り、ローエンが一緒に住むことに猛反対だ。
そもそも恋人になったことに対しても不満げに見える。

「初めから分かっていたことでしょう、それは」

まるで他人事のようにローエンは言う。
これは二人の問題なのになぁ・・・と不貞腐れ気味にローエンの肩にもたれかかる。

「どうされました?」

「二人のことなのに、ローエン冷たい」

「アナタのお兄さんが厄介だということは初めから分かっていたことでしょう。
想定内のことでいちいち一喜一憂しませんよ、ワタクシは」

「そうだけど」

母さんは一緒に住むことに同意してくれてるし、歓迎してくれている。
ローエン用の部屋も決めることが出来たし、兄さんも家からたたき出そうとまではしていないけど・・・

「ローエンだって居辛いでしょ?このままだと」

一つ屋根の下で暮らすのだ。
やっぱり拒まれた状態というのはローエンだって嫌だろう。
一度、兄さんと気まずい状態が続いた時・・・家にいても落ち着かなかったことを思い出す。
ローエンにそんな思いをさせたくない。

「たとえ誰に疎まれようとも、ワタクシはアナタの傍を離れるつもりはありませんよ」

ローエンの手が私の頭に触れる。
ゆっくりと私の頭を撫でてくれるその手にほっとする。

「気持ち良いですか?」

「うん、とっても」

「そうですか、それは良かった。アナタは犬の姿のワタクシを撫で回すのがお好きだからきっと撫でられるのもお好きだと思っていました」

「それはなんだか違うけど・・・でも、ローエンに触れられると安心する」

目を閉じるとそのまま眠ってしまいそうになるが、心地よくて自然と目を閉じていた。
しばらく何も言わないでなで続けてくれていたが、ふと手が止まった。その次に、私の唇にやわらかい何かが触れる。
驚いて目を開くと、そこにはローエンの顔があった。

「・・・っ」

「ん・・・」

キスされるなんて思っていなかったから驚いてそのままローエンの顔を見つめる。
こんなに近くで顔を見つめることなんてないから、意外と睫が長いことに今気付かされる。

「リツカ、口付けをするときは目を閉じるのが淑女の嗜みですよ」

「だ、だってローエンがいきなり!」

「アクマに隙を見せるのがいけないんですよ。
それでは今から口付けをしますので、目を閉じていただけますか」

「そんな風にいわれたら恥ずかしくて出来ないよ!」

顔を真っ赤にして反論する私にローエンは満足そうに微笑んだ。

「少しは元気が出ましたか、リツカ」

「・・・ローエン」

「ワタクシの居場所はアナタの隣です。誰が何と言おうがそれは揺らぎません。
・・・ですが、アナタとの仲をアナタの家族に認めていただくことも必要ですから。私は諦めませんよ。」

「・・・うん、約束ね」

ローエンに向かって小指を差し出すと、ローエンもそこに小指をからめた。

「ええ、約束です」

指きりすると、私達はどちらからともなくもう一度キスをした。
今度はきちんと目を閉じて-

 

好きなもの(レムリツ)

当主となったレムさんは、それはもう寝る時間も惜しんで仕事にあけくれている。
私に出来ることは少なくて、傍で見ているだけなんて歯がゆい日々を送っていた。

「ふぅ」

「お疲れ様」

「ああ、ありがとう」

一段落着いたところを見計らって温かい紅茶を出すと、レムさんは微笑んだ。
目の下にはうっすら隈が出来ていて、いつか倒れてしまうんじゃないかと不安になる。
けれど、何度かそれを口にしたがレムさんは聞き入れてくれない。
だから私はあまり言わないようにして、出来る限りできることを・・・と想っていた。

「ねえ、少し休憩しよう」

「ああ、少しくらいなら構わない」

「じゃあ、久しぶりに将棋しよ!」

「ふむ、それもいいな」

人間界にいた頃もよくウリエさんと将棋を指していたことも聞いていた。
私じゃ物足りないだろうけど、少しでも気晴らしになればと密かに将棋を用意していた。
将棋盤の上に駒を並べる。はじめたばかりの頃はこれも出来なくて、レムさんに教えてもらってようやくやっていたけど、今では聞かなくても並べることはできるようになった。

「先手、どうする?」

「リツカからでいい」

「いつもいつも譲ってもらってばっかりだからレムさんからでいいよ」

「…リツカ、」

「あ、ごめん。レムからでいいよ」

敬語はようやく抜けたものの、まだ名前を呼び捨てにすることには慣れていなくてついついさん付けになってしまう。
それを聞くたびにレムは少しだけ不機嫌そうに眉間に皺を寄せる。
軽く咳払いをし、レムは最初の一手を指す。
昔からこうやってじっくり考えるゲームは苦手だ。
オセロだって角をとれば有利だと知っているのに、それが実現するように事を運ぶことができない。
今もそうだ。レムの真剣な表情を見て、ちょっとだけときめいている自分がいる。

「リツカ」

「じゃあ、こうする」

パチン、と将棋を指す。
レムの指がどの駒に触れるのか、どう打ってくるのか考えてみる。
じっくり考えるゲームは苦手だけど、レムがどんな風にゲームを進めるのか想像することが楽しい。

 

 

 

「うう、やっぱり負けちゃった」

「しかし、腕を上げたぞ。リツカ」

「え、そうかな」

「ああ、私もやりがいがある」

「良かった」

結局いつも通り負けてしまったが、レムに褒められたことが嬉しくて頬が緩む。
将棋の道具を片付け、もう一度淹れた紅茶をソファに並んで座り、飲みながら一息ついていた。

「しかし、毎日退屈させてしまって申し訳ない。
もう少しすれば落ち着くとは思うんだがな」

レムが申し訳なさそうに言うので、私は小さく首を横に振った。

「退屈だなんて思っていないよ。レムの助けになれればとは毎日思ってるけどね」

レムの手が私の頬に触れた。
少しだけ熱を持った指が私を愛おしそうに撫でる。

「お前はこうして私の傍にいてくれるだけで助けになっている。
こうやって一緒に将棋が出来るのも嬉しいんだ」

「好きな人の好きなことを共有できるのって素敵だなって思うんだ。
だから私もこうやってレムの好きな将棋を覚えるの楽しいよ」

「…リツカ」

「こうやってお互いの好きなもの共有していけたらいいね」

「ああ、そうだな」

頬に触れていた指が私の顎へと滑る。
そして、軽く持ち上げてレムのほうへと顔を向けさせられる。

「では聞こう、リツカ。おまえの好きなものはなんだ?」

「ふふ、それは…レムだよ」

笑って答えると、レムは嬉しそうに笑った。

 

呼ぶ練習(斎藤×千鶴)

「一さん・・・一さん」

名前を呼んで欲しいといわれてから、何度となく繰り返している。
知り合って4年以上、彼のことを斎藤さんと呼んでいたのだ。
斎藤さんと呼ぶことが癖になっている。
だから私が間違って斎藤さんと呼ぶと彼は返事をしてくれない。

「はじめさん」

夕食の支度をしながら名前を呼ぶ。
もう少ししたらきっと彼は帰って来るだろう。
今日はお豆腐が安かったから多目に買った。
お味噌汁の具と冷奴に豆腐は登場する。
きっと豆腐好きな彼は喜んでくれるだろう。

「一さん、おかえりなさい」

帰って来る前に何度も練習する。
そう・・・今は私も斎藤なんだもの。
斎藤千鶴、かぁ。
字面を頭のなかで思い浮かべるとなんだか恥ずかしくなる。

「一さん」

「・・・なんだ、千鶴」

「-っ!?」

返事が返ってくるなんて誰が予想していただろう。
少なくとも私は予想していなかった。
慌てて振り返ると、頬を赤らめた一さんが立っていた。

「え、え!?どうしたんですか?」

「今日は少し早く終わってだな・・・急いで帰ってきたんだが、」

「お迎えもしないですいません!」

「いや、いいんだ。それより」

一歩前に踏み出し、私との距離をつめる。

「その・・・聞いていました?」

「ああ・・・その、俺の名前を何度か言っているのは聞こえた」

「~っ、」

恥ずかしさのあまり両手で顔を覆う。

「は、一さんが帰ってきた時に名前を呼びたいな、とおもったんです」

「千鶴・・・」

だけど練習しているのを聞かれていたなんて恥ずかしくて顔を合わせづらい。
沈黙もいたたまれなくてどうしていいか分からなくなった時、一さんが動く気配がした。
それからそのまま抱き締められた。

「さっきのはよく聞こえなかったから・・・もう一度呼んでくれないか」

「聞こえたって」

「いや、聞こえなかった」

「・・・おかえりなさい、一さん」

「ああ、ただいま。千鶴」

ようやく顔を上げると、食卓にお豆腐が並んだ時以上に嬉しそうに微笑む一さんがいた。

 

 

おいで(沖田×千鶴)

戦いが終わり、眠ることが怖かった。
それは目覚めた時に隣で眠る彼がいなかったらどうしようという不安があったから。
きっと私のそんな想いに気付いているのか、総司さんは眠る時に私を抱き締めるようにして眠る。
最初の頃は戸惑っていた私も彼のぬくもりに次第に慣れ、今では彼のぬくもりがないと熟睡できなくなっていた。

「千鶴、おいで」

「もう少しで支度が終わるので、先に休んでいてください」

「・・・」

今日は総司さんの着物を繕っていた。針仕事は得意というわけではないが、人並みには出来る。
そろそろ彼の新しい着物を縫いたいとおもいながらも、結局今ある着物を繕っている時間にとられてしまう。少しずつではあるが、新しい着物を縫い始めるといつもより時間が足りなくなる。
つまり、眠る時間が少し遅れてしまうのだ。
隣でそんな私をじぃっと見つめる総司さんの視線に気付かないふりをするも、彼も私が反応するまで動かないつもりらしく結局私が根負けして顔をあげた。

「総司さん、先に休んでいてください。もう少しで終わりますから」

「それさっきも聞いた」

「ええ、ですから」

「ねえ、僕さっきおいでって言ったよね」

「・・・はい」

「おいで、千鶴」

まだ今日の目標まで終わっていない私の手のなかにある着物。
それをちらりと見てからもう一度総司さんの顔を見る。

「僕、君がいないと眠れないんだけど」

「…っ、」

珍しく甘えるような言葉を口にすると、総司さんの頬は心なしか赤くなっていた。
それにつられて私の鼓動もはやくなった。

「今片付けるので待っていてください」

少しずつしか進まない彼のための針仕事。
仕立てあがるのはいつになるのか少し不安だけど・・・明日今日よりかんばろう。
そう心に決めて、片付けを済ませる。

「ねえ、千鶴」

「はい-っ!?」

名前を呼ばれ、振り返ると突然唇が塞がれた。
突然のことに驚いていると、唇の隙間から舌が割り込んだ。
呼吸まで奪うように翻弄される。
私を見つめる瞳から目をそらせなくて、口付けをかわしているのに彼と視線はぶつかったままだ。
ようやく解放された時には息が上がっていた。

「はぁ・・・っ、急にどうしたんですか」

これから眠るはずなのに。
突然仕掛けられた口付けがあまりにも甘くて困惑する。

「僕は眠るなんて言ってないよ?
ただ、おいでって言っただけでしょう」

「え、でも」

「誤解したのは君。
待たせた分、付き合ってよ」

耳元で囁くと、もう一度口付けられた。
明日も針仕事・・・きっとあんまり進まないんじゃないかな、と想いながらも彼の背中に腕をまわした。

ふらりふらり(紋白×紅百合)

紋白さんは猫みたい。
そして飼い猫ではなくて、野良猫。
気まぐれに近寄って、気付いたらいなくて。
いつ会えるか保証がなかったあの頃の紋白さんは、まるで猫だ。

 

 

「紋白さん、ちょっと近すぎないかな」

「いつもと変わらない」

「うーん。だけど、ちょーっと近い・・・かなぁ」

お面越しだから正しいか分からないけど、紋白さんは私をじぃっと見つめている気がした。
その視線が恥ずかしくて、根負けして私は紋白さんから視線を離した。
私が何も言わなくなると、紋白さんはひなたぼっこする猫みたいに寛ぎ始める。
人の体温って心地よいから、ついつい私も抵抗することを諦めてしまう。
本当は恋人同士でもないのに、異性とこういう風に触れ合うことは良くないんだけどな。
紋白さんに言っても全然変わらないし、私を好きだと言うし、どうしたものかと少し困ってしまう。

甘えるようにぴったりとくっついていた紋白さんは突然私から離れた。

「紋白さん?」

「蝶々がいた」

「え?」

それはいつもの蝶々ではないのか。
隠れ家にまで現れたのかと身体を固くし、視線をさ迷わせるが特に何もいない。
不思議に思って紋白さんに視線を戻すと、紋白さんは突然走り出し、飛び出してしまった。

「紋白さん!危ないよ!!」

慌ててその背中を追って走り出すが、紋白さんは意外に足がはやい。
走っても走っても距離は開いていく。
諦めかけたその時、急に紋白さんが立ち止まって振り返った。

「え、きゃっ」

突然のことで走っている勢いのまま紋白さんにぶつかってしまうと、ぎゅぅっと紋白さんに抱き締められた。

「ベニユリ、つかまえた」

「え、紋白さん?」

私を抱き締めると、頬ずりをするように擦り寄ってくる。
お面が当たって少し痛いが、何が起きたのか分からず抵抗できない。

「ベニユリのこと、ぎゅってしたかったからしてみた」

「・・・紋白さん」

作戦?だったのだろうか。
よく分からないが、紋白さんの胸を押して身体を離す。

「こんな危ないこと、もうしちゃ駄目だよ」

「うん、分かった。今度から普通にぎゅーってする」

「そ、それはダメ!」

「どうして?」

「どうしても!」

紋白さんの手をとり、隠れ家へと歩き始める。

「ベニユリ」

「なに?」

「手、つないでる」

「・・・そ、そうだよ」

「手、つないでいいんだ」

「~、時と場合によるの!」

「今は良くて、後ではダメなの?」

まるで子どものようだ。畳み掛けるように質問攻めにあう。
どう答えるべきか困って、私はつないでいる手を離そうと力を緩めると離すまいとそれよりも強い力で握られた。

「ベニユリから手、つないでくれた」

「・・・他のみんなには言っちゃダメだからね」

「うん、分かった」

紋白さんにくっつかれたり、今みたいに飛び出したりされてふりまわされることに戸惑っているわけではない。
本当は、気まぐれな紋白さんに振り回されるのも、つないでいる手を嫌じゃない自分に一番戸惑っているのだ。

あなた好み(山崎×千鶴)

彼に名前を呼ばれ、彼の名前を呼ぶことが当たり前になった日常の中で。
私はふと、島田さんに以前言われたことを思い出した。

「どうした?千鶴」

「丞さんの洋装姿、見てみたいなぁって考えていました」

新撰組のみなさんが洋装姿に変わった時、丞さんはいつもの格好のままだった。
そして島田さんは私に「戦が終わったら、選んであげては」というようなことを言ったのだ。
丞さんの洋装姿。きっとかっこいいだろうと思い浮かべる。

「…でも、あなたの洋装姿を他の方がみられるのは嫌なので我慢します」

「君は何を言っているんだ?」

私の言っている意味が分からないらしく、困ったような顔になり箸が止まった。
人の体調の機微には敏いのに、こういうところは鈍い人。
そこがまた愛おしいと思っている自分はすっかり彼のことしか考えられないようだ。

「ご自分で考えてみてください」

「…その、今日の煮付けはとても美味しい」

「丞さんの好みの味付けにしました」

江戸と京だと味付けが違う。
京にいた頃、みなさんのお口に合うようにと考えながら味付けをしたのを思い出す。
幹部の多くは江戸から来たのもあり、彼らには懐かしいと喜ばれることも多かったが、丞さんは京の出身のためなかなか口に合わなかっただろう。
食事のとき、彼の反応をこっそりと見ていたことをきっと彼は知らない。

「君はあの頃も今も俺のことを見てくれているな」

「え?」

「この菜の花の辛子和えも非常にうまい」

「ありがとうございます」

丞さんの止まっていた箸が動き出すかわりに今度は私の箸が止まった。

「京にいた頃、君は周囲の皆が食べている姿を見守っていただろう」

「…なんだかずるいです」

ばれていないと思っていたのに、知られていたなんて。
鈍いのに、敏いんだから。

「それで君の機嫌を損ねたのはなにか教えてくれるとありがたいんだが」

「丞さんのことが大好きっていうことです」

誤魔化すようにお味噌汁をすすると、丞さんは赤い顔をして私を凝視していた。

「君は…本当にずるい人だ」

「?」

「俺も君が…大好きだということだ」

咳払いすると彼は赤い顔を誤魔化すように味噌汁に口をつけた。