戦いが終わり、眠ることが怖かった。
それは目覚めた時に隣で眠る彼がいなかったらどうしようという不安があったから。
きっと私のそんな想いに気付いているのか、総司さんは眠る時に私を抱き締めるようにして眠る。
最初の頃は戸惑っていた私も彼のぬくもりに次第に慣れ、今では彼のぬくもりがないと熟睡できなくなっていた。
「千鶴、おいで」
「もう少しで支度が終わるので、先に休んでいてください」
「・・・」
今日は総司さんの着物を繕っていた。針仕事は得意というわけではないが、人並みには出来る。
そろそろ彼の新しい着物を縫いたいとおもいながらも、結局今ある着物を繕っている時間にとられてしまう。少しずつではあるが、新しい着物を縫い始めるといつもより時間が足りなくなる。
つまり、眠る時間が少し遅れてしまうのだ。
隣でそんな私をじぃっと見つめる総司さんの視線に気付かないふりをするも、彼も私が反応するまで動かないつもりらしく結局私が根負けして顔をあげた。
「総司さん、先に休んでいてください。もう少しで終わりますから」
「それさっきも聞いた」
「ええ、ですから」
「ねえ、僕さっきおいでって言ったよね」
「・・・はい」
「おいで、千鶴」
まだ今日の目標まで終わっていない私の手のなかにある着物。
それをちらりと見てからもう一度総司さんの顔を見る。
「僕、君がいないと眠れないんだけど」
「…っ、」
珍しく甘えるような言葉を口にすると、総司さんの頬は心なしか赤くなっていた。
それにつられて私の鼓動もはやくなった。
「今片付けるので待っていてください」
少しずつしか進まない彼のための針仕事。
仕立てあがるのはいつになるのか少し不安だけど・・・明日今日よりかんばろう。
そう心に決めて、片付けを済ませる。
「ねえ、千鶴」
「はい-っ!?」
名前を呼ばれ、振り返ると突然唇が塞がれた。
突然のことに驚いていると、唇の隙間から舌が割り込んだ。
呼吸まで奪うように翻弄される。
私を見つめる瞳から目をそらせなくて、口付けをかわしているのに彼と視線はぶつかったままだ。
ようやく解放された時には息が上がっていた。
「はぁ・・・っ、急にどうしたんですか」
これから眠るはずなのに。
突然仕掛けられた口付けがあまりにも甘くて困惑する。
「僕は眠るなんて言ってないよ?
ただ、おいでって言っただけでしょう」
「え、でも」
「誤解したのは君。
待たせた分、付き合ってよ」
耳元で囁くと、もう一度口付けられた。
明日も針仕事・・・きっとあんまり進まないんじゃないかな、と想いながらも彼の背中に腕をまわした。