「インピーって晴れが似合うよね」
窓の外をぼんやりと見ながら、カルディアちゃんは呟いた。
夕方から振り続けている雨は一向に止む気配がない。
多分、今夜は大荒れだ。
寝る支度を整え、カルディアちゃんの髪を梳いてやる。
カルディアちゃんの髪はふわふわとやわらかい。
「そう?」
「うん、明るいのが凄い似合う」
「ありがとう、カルディアちゃん。
カルディアちゃんにはね、晴れも似合うし雨も似合うし、なんでも似合う」
「ふふ、インピーは私に甘いよ」
「そりゃあ、君のことがすっごく好きだから。
好きな子のことは存分に甘やかしてあげたい」
いつもなら微かに鈴虫の鳴く声が聞こえたり、風の音が聞こえるのに、
今は雨音しか聞こえない。
「一人で屋敷にいたとき、雨が降ると怖かった。
怖いっていうのか分からないけれど・・・
世界に一人だけ取り残されたみたいだった」
目を閉じて、昔を思い出しているんだろうか。
俺は頷きながら彼女の言葉に耳を傾けた。
「取り残されたみたいだったんじゃなくて、取り残されてたのにね」
「カルディアちゃん」
彼女の頬に手を添えると、唇を奪う。
短いキスを何度か繰り返して、カルディアちゃんを抱き締めた。
「ねえ、カルディアちゃん」
「うん」
「君には晴れも、雨も、太陽も、月も、青空も星空もぜーんぶ似合うと思うけどさ」
カルディアちゃんの頬を両手で包み、額をこつんとあわせた。
「君には俺が一番良く似合うよ」
悲しそうな顔をしないで。
無理して笑って欲しいわけじゃない。
過去を思い出して、苦しくなってもいい。
だけど、覚えていてほしい。
「俺がいるよ、カルディアちゃん」
「インピー・・・」
寂しげだった瞳が、優しい色に変わった。
「うん、ありがとう。インピー」
もう一度短いキスを贈る。
「インピー、だいすき」
「うん、俺も。君が大好きだよ」
明日、雨が上がったら虹を探しに行こう。
俺がそういうと、君は俺の大好きな笑顔で頷いた。