「セラ!!」
王宮から脱走したセラをようやく見つけて、捕まえた。
「アスパシア、そんなに怒ると可愛い顔が台無しだよ?」
わたしの顎を軽く持ち上げて、薄ら笑いを浮かべる。
そんな顔でわたしを誤魔化せると思っているのが腹立たしい。
「あんたは台無しの顔してるわ、今。
すっっっっごく」
「ええー」
「ほら、シャロンが探してたんだから早く戻るわよ」
セラの腕を掴んで歩き出そうとすると、後ろから抱き締められる。
「だって最近、君との時間が足りなくて。
脱走したら追いかけてきてくれるかなーなんて」
甘えるようにわたしに頬ずりする。
振り返らないとセラの顔は見れないけど、多分寂しげな顔をしてるんだろう。
ああ、やだやだ。
悪い事してるのはセラなのに、わたしが悪いみたいな気持ちになってきた。
「セラ」
腕を振りほどいて、振り返るとセラを抱き締めてやる。
ぎゅっときつくきつく。
「わたしだってあんたと一緒にいたいけど、わたしと一緒にいる時間を作るために脱走は駄目だよ」
「・・・うん、そうだね」
セラの腕がわたしの背中に回る。
なんだ、わたしはセラと抱き合いたかったんだ。
抱き締めて、抱き締め返されてようやく思い至る。
「わたしも全力で手伝うから、頑張ろう?陛下」
「・・・そうだね」
身体を少し離すと、セラはわたしの額に口付けた。
「君が隣にいてくれるのに、頑張らないなんて男じゃないよね。
うん、頑張るよ」
そう言って笑ったセラは、すごくかっこよかった。