買出しを終えて、お店を出ようとするとバケツをひっくり返したような大雨。
さっきまで青空だと思ったのに、どうもこの季節は天気がコロコロ変わる。
もう少し待てば上がるだろうか？
今さっきいた店には傘は置いていなかった。
濡れて帰るか、雨が止むのを待つか。
自分が濡れるのは構わないが、ついでに頼まれたものも袋には入っている。
それが濡れてしまうのは避けたい。

（・・・さて、どうしたものか）

空を仰ぐように見上げていると、ふと私の前に人影が現れた。

「何してるんですか、こんなところで」

「マーシャル！」

傘を差して私の前に現れたのはマーシャルだった。
あまりにもタイミング良く現れるから驚いて言葉を失う。

「傘を持って出掛けず、立ち往生ってところですか？」

「そうよ。そういうあんたは？」

「私は使いを終えて戻るところです」

「そう。なら」

にっこり笑って、マーシャルの傘に飛び込む。
荷物をマーシャルの空いている手に持たせると、傘を持つ手に腕を絡ませた。

「城まで入れていって」

「・・・っ、いいですけど」

雨に濡れないように身体を寄せると、動揺しているのかマーシャルが私から離れようとする。

「ちょっと、あんたが逃げると私が濡れるんだけど」

「ああ、すいません」

頬を赤らめるマーシャルを見上げて、くすりと笑う。
散々私に触れてるくせに、こういうところはピュアというか・・・
そんな風だからいつまで経っても私にからかわれるのに。
土砂降りも気付けば、少しずつ落ち着いてきて雨の音が心地よく感じる。
ああ、駄目だな。
雨とかそういう騒音があると、仕事しづらいから好きじゃなかったのに。
今、マーシャルが横にいるから雨の音を聞くのも良いかもなんて思ってしまっている。

「私、弱くなったかも・・・」

「はぁ？」

「あんたが隣にいて落ち着いてるもの」

ため息交じりに私が言うと、マーシャルは驚いたように私の顔を見つめた。
その不躾な視線に苛立ち、睨むように見返した。

「なに、その反応」

「いや・・・その、」

コホン、と咳払いをして改めて私を見つめる。

「キスしてもいいですか？」

「は？どうしてそうなるの？」

「私はしてもいいかどうか聞いてるんです。
駄目ですか？」

「こんなまわりに人がいるときに・・・」

駄目とはっきり言わない私を見て、ＯＫと捉えたのかマーシャルはそっと口付けた。

「・・・っ」

「あんまり私をじらさないでください」

「何言ってるの、あんた・・・」

キスなんてもう数え切れないくらいしたはずなのに。
こんな事でときめくなんて私もどうかしてる。
組んだ腕をさらにぎゅっとする。

「シエラ？」

「・・・ちゃんと寄らないと濡れるでしょ」

あんまり認めたくないけれど、私はこいつが凄く好きみたいだ。