痕(ジャスティン×シエラ)

自分でも分かってる。
難儀な恋人を持ってしまったという事くらい。
いや、恋人と認めてはいけないんではないかと自問自答を繰り返すが私を抱き締めるこの人は私を恋人だと思っているだろう。
ベッドに押し倒された形ではあるが、私も嫌がっていないのが悪い。
嫌だなんて思っていないから彼から与えられる全てを受け入れてしまう。

「おい、シエラ」

「はい」

「何を考えていた?」

嫌がっていない自分をどうしたものか、と思っていたなんて言えない。
ジャスティンの右手がゆっくりと胸元へ移動する。
器用にボタンを一つずつ外していきながらも私を見つめることを止めない。
きっと答えるまで見つめ続けるつもりだ。

「ジャスティン様の趣味は変わっているなーと」

「趣味?」

「何回も言いますけど、わざわざ敵対する側の使用人に手を出さなくても」

下世話な噂で評判が落ちるのはジャスティンなのに。
言葉を続けようとしたが、唇が塞がれてそのまま飲み込まれてしまう。
乱暴に唇を合わせてきたくせに、優しい口付けだ。
服を脱がせようと動く手を止めることもせず、ジャスティンの背中に腕を回した。首筋に顔を埋め、舌を這わせる。
首筋から鎖骨、肩へと移動をしていき、過去の傷跡を舐められる。
傷跡というのは皮膚が薄くなっているのだろう、そうでない部分より敏感になる。
彼の身体にだっていくつもの傷跡があるから分かっているくせに、私の傷跡を執拗に責める。
こうして意地の悪い責め方をする時は機嫌を損ねているときだ。

「ジャスティンさま・・・?」

与えられる快感に抗いながら彼の頭をなでてみる。
そうすると動きが止まった。

「お前に痕を残す奴ら、全て殺してしまいたい」

王子とは思えない殺気を放つ。
元暗殺者の私でさえ、危うく武器に手を伸ばしそうになるのだ。
恐ろしい人。
そして、可愛い人。
姿の見えない人にこうやって嫉妬して、怒るんだもの。
愛撫されるのも気持ち良い。
キスされるのだって勿論そうだ。
だけど、こうやって殺気を放つジャスティンに抱かれるのが恐ろしいくらい好きなのだ。
わざと妬かせようなんて気はないのに、彼は思いのほか狭い心で私を見つめて怒る。
ああ、馬鹿な人。

「ジャスティン様、」

顔を引き寄せて、私から唇を奪う。

「あなたの痕も残してください」

いつか消えるであろう痕であっても、欲しくなる。
この身体がいつか朽ちる時、あなたの残した痕があったら・・・なんて思うくらい私はこの人に絆されてる。

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