明日の仕事は遅番だ。
だからいつもよりゆっくり出来る。
マーシャルの部屋のベッドで丸まっていると後ろから抱きすくめられる。
「・・・なに?」
「猫みたいに丸まってどうしたんですか?」
今は言うなれば事後だ。
マーシャルは理性のタガが外れると容赦ない。
私の骨の髄まで食らい尽くそうとしているんじゃないかと思うくらい私を求めてくる。
体力に自信のある私でさえ、翻弄されるのだ。
他の男はさすがにここまでじゃないだろう。
他のメイドたちが偶に話すこういう話や聞いてもいないのに耳に入ってくる貴族の話。
そういうものと比べるとマーシャルは貪欲だ。
別に変態プレイをしようとかじゃないのは分かっているが、求められるのは悪い気はしないが限度があるだろう。
「あんたって若いよね」
「はあ」
「何その返事」
「いや、急にどうしたのかと思って」
「急に?心当たりがないって?」
「ええ、特には」
不安げな声が耳元でする。
そういう声に弱い自分にイラつくのと、自覚をしないマーシャルにもイラつく。
「腰がだるいの、今」
腰がだるいというより、全身けだるい。
それなのに、マーシャルが触れている部分が熱い。
さっきまで散々触れられていたのに私の身体はマーシャルを求めるように熱くなる。
じわり、と先ほどの名残りが存在を訴える。
ああ、馬鹿みたい
「すみません、あなたが可愛いからつい」
ようやく意味を察したのか申し訳なさそうな声を出す。
腰のあたりを優しく撫で回される。
労わってるつもりなのか、煽っているのか・・・
身体をよじり、マーシャルの顔を睨むとマーシャルは頬を赤らめていた。
「あなたは可愛い」
「ちょっ、」
啄ばむような口付けを落とされ、私は言葉を飲み込む。
抱き締める腕は強くなり、腰を労わるように撫でていたはずが気付けば違うものを孕んでいた。
「もう一回、駄目ですか?」
「駄目って言ったらあんた止めるつもりあるの?」
黒い瞳は熱を孕んでいて、馬鹿みたいに私を求めてくる。
唇に落とされたキスが、額や頬、耳へと移動をしていく。
「こういう雰囲気で言ってもあなたは笑うかもしれませんが・・・」
「なに?」
耳朶を甘噛みして、そっと囁いた。
「あなたを愛してます、シエラ」
返事をする代わりに、マーシャルを強く抱き締めた。