「暁人」
暁人は眠るのが早い。
船にいた頃から寝るのが早かった。
まるで子供みたいに規則正しくて、そこが暁人らしいなと好ましく思っていた。
同じ部屋の私もつられて眠るのが早くなるのは当然だ。
暁人は眠くないなら起きてていいぞ、と言ってくれたが暁人と同じように過ごせる時間は少ない。
「ん、どうした?」
「今日、一緒に寝てもいい?」
「ん?いつも寝てるだろ」
「そうじゃなくて・・・」
確かに同じ部屋で寝起きしている。
だけど私が今言いたいことは違う。
「一緒の布団で寝てもいいって聞いてる」
「・・・は?」
ぽかんとして私を見つめる。
だから私も暁人を見つめ返した。
「お前、自分で何言ったか分かってんのか?」
「ん?分かってる」
暁人はほんのり赤くなった頬を誤魔化すように口元を覆った。
「こはるさんと市ノ瀬さんはたまに一緒の布団で眠るって言ってた。
だから私たちも・・・」
「待て、ちょっと待て。
多分お前が思ってるようなことじゃないだろ、あいつらだって」
「私が思ってるようなことってなに?」
「だから一緒の布団で寝るって・・・」
「こはるさんは手を繋いで眠るって言ってた。
凄く幸せな気持ちになるって言ってた」
千里くんが手を繋いで眠ってくれると凄く落ち着くんです、とこはるさんは照れながら話していた。
それを聞いて、羨ましいと思った。
手を繋いで眠るなんて私たちはした事がない。たまに暁人が抱き締めながら眠ることはあるけど、手はない。
だから私もしてみたい、と思った。
それに明日は暁人は仕事が休み。
うっかり寝坊しても大丈夫な日だ。
「でも、暁人が嫌なら諦める」
「・・・ったく。
誰もそんな事言ってないだろ」
暁人の手が私の肩を抱き寄せたかと思えば、そのまま暁人の布団の上に押し倒された。
そのまま暁人が覆いかぶされるように私を抱き締めた。
「あんまり可愛い事言ってると襲うぞ、ばーか」
ちゅ、と耳朶にキスをされると身体がびくりと跳ねる。
そのまま暁人にしがみつくように抱きつくと暁人の大きな手が私の頭をなでてくれた。
二人並んで暁人の布団にもぐりこむと腕枕をしながら空いてる手で私の手を握ってくれた。
「ありがとう、暁人」
「お前がたまに甘えてくれたんだから叶えないと駄目だろ?」
「うん、暁人大好き」
「ああ、俺も・・・好きだ。七海」
額に暁人の唇が触れる。
暁人に包まれる安心感からすぐ眠気が襲ってきた。
「おやすみ、七海」
こはるさんがいった通り、その日は凄く安心して眠ることが出来た。
その結果、次の日はなかなか起きれず、暁人に叩き起こされることとなった。