「インピー、何作ってるの?」
キッチンで鼻歌を歌いながらインピーは何かを作っていた。
手伝うと言ったら全力で断られてしまって、私はシシィのブラッシングをして過ごしていた。
ブラッシングが終わる頃、もう一度キッチンを覗き冒頭の言葉をかけた。
「あ、カルディアちゃん。
完成したから一緒に食べようか!」
「なに?」
「じゃじゃーん!!
インピーさん特製イチゴパフェの完成でーす!」
「パフェ?」
「そう、パフェっていうのは若い女の子たちが大好きな甘い食べ物のこと」
「そうなんだ」
「ま、いいから食べようか!」
ダイニングにそれを運ぶと、私の前に置いてくれた。
「いただきます」
「はい、どうぞ」
細長いグラスには、アイスクリームと木苺、あと何かよく分からないものが詰まっていた。
スプーンでアイスクリームと木苺をすくい、口へ運ぶ。
アイスクリームの甘味と木苺の酸っぱい感じがちょうど良く、口のなかに幸せが広がる。
「美味しい、インピー!」
「ふふ、でしょ?」
「うん、ありがとう」
「俺はカルディアちゃんの笑顔が見れればそれだけで十分幸せだから」
にこにこと私が食べる姿を見つめるインピー。
その視線が恥ずかしくて、スプーンでそれをすくってインピーに差し出した。
「はい、インピー」
「え?」
「インピーの分、ないんでしょう?一緒に食べよう」
「・・・カルディアちゃん、俺すっげーきゅんとした」
「早くしないと溶けちゃう」
「はい」
大きく開いた口に、スプーンを入れる。
なんだかひな鳥に餌を上げる親鳥の気分だ。
「美味しい?」
「ん、美味しい。カルディアちゃんが食べさせてくれたからより一層美味しい」
「インピーが作ってくれたから美味しいの」
「んー、俺はカルディアちゃん効果だと思うなー」
「はい、もう一口」
インピーが私を褒めちぎるのはいつものことだけど、少し恥ずかしい。
誤魔化すようにもう一口勧めて食べさせる。
ぱくりと食べると、インピーは私からスプーンを取り上げてもう一度すくった。
「はい、カルディアちゃん」
さっき私がしたことと同じ。
だけど、なんだか恥ずかしい
「自分で食べれる」
「いいから。はい、あーん」
「・・・あーん」
恥ずかしくて穴があったら入りたい気持ちになったけど、インピーの笑顔に負けて私は口を開いた。
さっき自分で食べたときよりもなんだか甘く感じた。
「なんか恋人同士ーって感じだね」
「そうなのかな」
あんまりそういう事は分からないけど、インピー以外の人とこういう事は出来ないし、したくないとは思う。
残りもそんな調子で食べさせあいを繰り返し、完食した。
後片付けは私がやる、とインピーを説得したので、せっせと洗い物をする。
そんな私を後ろから腕を回して抱き締める。
「インピー、ちょっと邪魔」
「んー、でも。ちょっとだけこうしてたいんだけど駄目?」
珍しく甘えるようにインピーが囁く。
そんな風に言われたら断れるわけがない。
「ちょっとだけ」
「ん、ありがとう」
ただ私を抱き締めるその腕は、私をひたすら甘やかしてくれる。
だからすんなり言葉が出た。
「インピー、大好き」
「俺も今言おうと思ったのに」
「ふふ、私の勝ち」
「俺はいつだってカルディアちゃんに敵わないよ」
後頭部にそっと口付けられる。
私だっていつだってインピーに敵わないよ。
「大好きだよ、カルディアちゃん」
さっきのパフェみたいにインピーの言葉は甘かった。