「流行り病!??」
「流行り病だよ、それ以外なんだって言うんだい?」
医務室へ戻った俺たちにメフィストは微笑むとそんな事を言いやがった。
「だって、ヴィルヘルムが魔剣の影響で持たないって・・・!!」
「魔剣で過ごしていたおかげで最近流行っている病の免疫がないんですよ、彼。
普通なら子供のうちにかかる流行り病にうっかりかかったせいで三日三晩、うなされたんだよ」
身体から力が抜けたのか、ランが崩れ落ちそうになるのを寸前のところで支える。
「私があげた薬が効いてすっかりよくなったみたいだね、よかったよかった。
お大事に」
さあ出て行け、と言わんばかりに話をまとめようとするメフィストを睨みつける。
「タチの悪い冗談はもう二度と言うなよ」
「ふふ、どうだろう」
「メフィスト!」
「まあ良いじゃないか。
二人の愛が深まっただろう?」
意地の悪い笑みをしてメフィストは今度こそ俺たちを追い出した。
「えーと・・・」
なんというか、互いに恥ずかしい。
なんともいえない空気の中、逃げるように森へ舞い戻った。
「ヴィルヘルム・・・」
少し先を歩く俺の背中にランは抱きついてきた。
背中のぬくもりが懐かしい。
「メフィストのこと、すっごく許せないけど・・・
でも、私何が何でもヴィルヘルムと生きたいんだって分かった」
俺もランとの記憶を失ってまで生きたいと思わなかった自分に驚いた。
ランと生きたい、と強く願っている自分にも気付かされた。
朦朧とする意識の中で、俺はただランの事だけを思った。
「あのよ・・・
あの時言った言葉、全部本当だ」
最後かもしれない。
伝えなければ、と思ったから出た言葉だったけれど全て本心だ。
腰に回された手を掴むと俺は振り返った。
「お前をあいしてる、ラン」
「・・・っ」
顔を歪ませ、泣くのも堪えるお前のそういうところも好きだ。
ぽんぽんと頭をなでると、きつく抱き締められた。
「私も、あなたを愛してる」
泣きながらそんな事を言うから、慰めるようにキスを贈った。
「お前の後ろ姿も好きだった、って言ったのはさ。
今はお前の笑顔をこうやって近くで見る方が好きだからなんだ」
「・・・なにそれ」
俺のそんな言葉を聞いて、涙の痕が残りながらもはにかむように笑った。
ようやく俺の好きな笑顔を見せてくれた。
もしも願いがかなうなら
いつまでも共にありたい