もしも願いがかなうなら4(ヴィルラン)

苦しそうにうなされる彼を見つめる。
言いたいことは分かった。
記憶をなくしてまで、生きたいと思っていないことも。
ヴィルヘルムはそれほどまでに私を愛してくれている。

「・・・っ・・・、ヴィルヘルム・・・っ」

繰り返し、名前を呼んだ。
彼の名前を呼ぶと安心した。
私も感じていた孤独。
魔剣を宿した私は、孤独だった。
少しずつ、みんなと打ち解けていくとその孤独はゆっくりと溶けていったがヴィルヘルムの孤独を酷く理解できた。
だから名前を呼んだ。
彼も、私の名前を呼んでくれた。

「ごめんなさい、ヴィルヘルム」

私はどんな結末になっても、

「あなたを失いたくない」

メフィストに渡された小瓶を私は煽るように口に含んだ

 

 

もしも願いがかなうなら

 

 

 

 

 

 

死ぬかもしれない、と思った時守りたいと強く思った。
お母さんを守りたい。こんなところで死ぬわけにはいかない。
そうしたらヴィルヘルムは応えてくれた。
私を、守ってくれた。
御伽噺の王子様でもお姫様でもないけれど。
あなたは私にとって、王子様だった。

 

「あいしてる、ヴィルヘルム」

 

唇を離して、彼に囁いた。
私を忘れてしまってもいい。
あなたを助けたい。
あなたに生きていて欲しい。
ただそれだけなの。

零れる汗をタオルで拭き、彼が落ち着くまで看病を続けた。
あの会話を交わしてから3日が過ぎているがヴィルヘルムは目を覚まさない。
次、目を覚ました時彼は私のことなんて覚えてないのかもしれない。
もしかしたらもう一度、世界を憎むような瞳をするかもしれない。
もしも、そうなってしまったら・・・

私があなたの目を覚まさせてみせるから。
どんな風になっても、私はあなたと一緒にいる

 

 

 

 

 

「身体を痛くするよ」

肩を揺すられ、浅い眠りから目を覚ました。
ぼんやりとする意識のまま顔を上げればメフィストがいた。

「・・・っ」

「王子様は目を覚ましたみたいだけど」

「ヴィルヘルム!?」

がばりと起き上がると、ベッドには誰も寝ていなかった。
驚いてメフィストを睨むと、意地の悪い笑みを彼は浮かべていた。

「困った王子様だね。
記憶をなくしても、君が見つけてくれるのを待っているんじゃないの?」

その言葉に私は走り出した。

 

 

 

 

 

ヴィルヘルムがいる場所はいつも大体決まっている。
でも、今日はあそこにいる気がして迷わずそこに向かって走っていた。
着いた場所はいつも私たちが共に過ごす森。
ヴィルヘルムはいつもの木にもたれかかって眠っていた。

「・・・ヴィルヘルム」

呼ばずにはいられなかった。

ゆっくりと目を開く。
彼は黙って私を見つめていた。

言葉を発するまでの時間が永遠のようだった。

 

 

 

 

「ラン」

 

彼は私の名を呼んだ。

 

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