神様がこの世に存在するのかは分からない。
だけど、願わずにはいられないの。
神様、どうか・・・
もしも願いがかなうなら
苦しい、苦しい。
骨が溶けてしまうんじゃないかと思うくらい、身体が熱い。
何かを掴みたくて、手を伸ばした。
何かじゃない。
俺が掴みたいのは-
「・・・ラン」
「ヴィルヘルムっ!」
重い瞼をこじ開けるようにして目を開いた。
ぼんやりとする視界にランの姿を見つけた。
「わりぃ、なんかすっげー身体きつい」
「ヴィルヘルム・・・」
ぽろぽろと零れる涙を見て、そんなに心配をかけてしまったことを申し訳なく思いながら俺のために泣いているランを愛おしく感じていた。
「ヴィルヘルム・・・話を聞いて欲しいの」
零れた涙を拭うと、真剣な瞳で俺を捕らえた。
俺が頷くと、ランは話し始めた。
生きるために記憶をなくすか。
記憶を守るために死ぬか。
「そうか・・・」
俺は生きたい。
まだ、離れたくない。
ランの頬に拭ったはずの涙が、再び零れた。
身体が悲鳴をあげるのも構わず、俺は上半身をなんとか起こした。
それからランを抱き寄せた。
香水なんてつけていない、と以前話していたけれどランはなぜか甘い匂いがする。
俺の好きな匂いだ。
「ラン・・・おまえが俺を呼ぶ声が好きだった」
名前を呼ばれるのは久しぶりで、凄く嬉しかった。
煩わしいという表情をしてたのは照れ隠しだったんだ。
「おまえが俺を探す後ろ姿が好きだった」
手を伸ばしたいと思ってた。
振り向かせたいのに、振り向かれた時どうすればいいのか分からなかった。
ただ、その後ろ姿に安堵していた。
「なんで過去形で話すの・・・」
腕の中で泣きじゃくるランが睨むように俺を見つめた。
「ああ、わるい」
好きだった。
お前がいないと生きていけないなんて女々しいことは言わないけれど、
誰かと一緒に生きるんならお前が良いって思ってたんだ。
「あいしてる」
「・・・っ」
つたないキスをした。
生きたいと思うのはお前がいるから。
でも、お前を忘れてまで俺は生きたいと思ってない
つたない触れあいのなか、俺は意識を手放した。