魔神というのは人間に比べて疲れない。
だって魔神だもの、当然じゃない。
「姫様、どうされたんですか?」
わたしの努力の結晶といっても過言ではない、わたしの従者にして恋人のウンバラがベッドに突っ伏しているわたしを見て驚いたようだ。
お茶でも用意しますねーとご機嫌で出て行って、戻ってきたらわたしがこんな風にしているんだから驚くのも無理はない。
ウンバラに再び会うためにこのわたしがどれだけ努力して努力して努力したか・・・
ウンバラと過ごす時間の中でついつい気を抜いてまどろんでしまうのは仕方がないだろう。
「ちょっと休憩してるの」
「お茶、あとにします?」
「ううん、煎れてくれたんでしょ?飲む」
近くのテーブルにお茶セットを置くと、ベッドまで移動してきて突っ伏すわたしの頭を優しく撫でる。
「・・・なに」
「姫様を甘やかしてるんです」
「ばか」
「うーん。まぁ、馬鹿と言えば馬鹿なんですけどー。
ただの馬鹿じゃなくて、姫様馬鹿なんですけどねー」
困りましたーなんて思ってもいなさそうな事をのたまう。
頭を撫でてくれるその手のひらが優しくて、どんどんまどろんでいく。
「あんたがいない毎日、すっごい頑張ってたのよ」
「もちろん知っていますよ。
姫様の愛で今の私は出来ていますから」
「・・・そうね」
あんたに会いたくて会いたくて、それ以外なにも欲しくないと思ったから死に物狂いで努力したのだ。
手を伸ばして、ウンバラの腰にしがみついた。
「ちょ、姫様っ!?」
「なによ、甘やかしてくれるんでしょ?」
ぎゅっとしがみついたまま、上目遣いにウンバラを見上げた。
顔を赤らめて、言葉を失うわたしの恋人はただのへたれだ。
「姫様、それは誘ってると解釈してもいいんですか?」
「さあ、どうだろう」
確認しないといちいち何も出来ないのはいい加減にして欲しい。
視線をそらして、ウンバラの腰をつねる。
「いたっ!痛いです!痛いです、姫様!愛が!」
「うるさい、わたし寝るんだから静かにして」
「えぇぇ、姫様ぁ~そんなぁ」
泣きそうな声を出すウンバラを無視して、目を閉じる。
「わたしが目を覚ました時、おはようのキスをして」
「・・・っ!萌え殺されそうです、わたし・・・」
わたしがねだらないといつまでも何も出来ない馬鹿なあんたがわたしも好きなんだから。
「おやすみなさい、姫様。良い夢を」
さっきのように優しく頭を撫でるぬくもりに、わたしは安心して眠りに落ちた。
おはようのキスはどっちからするのか・・・
あなたはどっちだと思う?