今日もあなたに恋をする(凌×沙弥)

寝汗がひいてきたのか、身体がぶるりと震える。
身体を起こそうとして、自分を拘束する腕の存在を思い出した。

「・・・凌さん」

後ろから抱きしめられる体勢のまま、二人で眠っていた。
カーテンの隙間から差し込む光がまぶしい。
二人の交際を凌さんのご両親に報告してから、こうして凌さんが泊まりに来るようになった。
独りで暮らすようになってから、この部屋に自分以外の存在を感じることなんてなかった。
今、こうして凌さんが傍にいてくれることが嬉しくて仕方がない。
回された腕にそっと自分の手を重ねる。

「ん・・・沙弥・・・」

眠そうな声が耳元で聞こえる。
きゅっと強く抱きしめると、そのまま私の首筋へ顔を埋める。
おそらくまだ眠いんだろう。動作がゆったりとしていて、まるで子供が母親に甘える時のようだ。
普段、しっかりしている凌さんのこういう姿を見るとたまらなく愛おしく感じる。
私だけが知ることが出来る凌さん。
多分今までだって他の誰よりも近い場所にいた私は、彼のクラスメイトが知らないような事を沢山知っているだろう。
たまたまクラスメイトの女の子と話している凌さんを見た時、すごくもやもやした。
その後、凌さんといつものようにお弁当を屋上で食べていたけれど私の表情が固くて凌さんをオロオロさせてしまった。
私だって同じクラスの鬼崎くんと話をしたりもするし、守護者のみんなとは相変わらず話をする。
自分は良くて、相手は駄目なんて心が狭すぎる。
だからこうして他の人が知らない彼の姿に安心する。

「私って自分で思っていたよりも独占欲が強いのかな・・・」

ぽつりと呟くと、身体を引き寄せていた腕が緩んで視界が反転した。
凌さんの顔が至近距離にあって思わず息を飲む。

「どうかした?」

「・・・えと、」

誰よりも凌さんを見つめていると思う。
こうして触れ合う事も増えたのに、やっぱり凌さんに見つめられると恥ずかしい。
顔を見つめているのに、視界には彼の身体も映るから心臓に悪い。
誤魔化すようにタオルケットを引き寄せて口元を覆う。

「凌さんのことが好きだなって」

「・・・沙弥」

私の言葉に緩んだ表情になる凌さん。
いつもキリっとしている彼からはきっと想像つかないだろう。
そう思うと何もかも愛おしい

「俺も沙弥の事が好きだよ。
何回言葉で伝えても、こうやって触れ合っても伝えきれないくらいに君を愛おしいって思ってる」

大きな手で私の頬を優しく撫でる。
額にかかる髪をそっと避けて、額にキスを落とす。
私だって、何度伝えても触れ合っても凌さんを愛おしいと思う気持ちは際限ない。
今だってこのキスだけで身体が火照る。

「沙弥、顔が真っ赤だよ」

「・・・だって今日は暑くなるって昨日の天気予報で言ってたから」

顔が赤いのはこの触れあいのせいだなんて恥ずかしくていえない。
きっと凌さんにはバレているんだろうけど、誤魔化させてほしい。

「それじゃあ今日はどこか出かけようか」

「うん」

今日の予定を決めながら、指を絡ませる。
今日もきっと他の人が知らないあなたを知るんだろう。
そして、今日も私は凌さんに恋をする。

良かったらポチっとお願いします!
  •  (1)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

CAPTCHA