今日はとても良い天気だ。
インピーが朝起きて外を見てこう言った。
「よし!ピクニックに行こう!!」
ピクニックと行ってもお弁当を持ってちょっとだけ遠出するだけだ。
それでも子供みたいに嬉しそうにするインピーを見て、私も嬉しくなる。
それに私も嬉しくないわけではない。
インピーとこうして出かけることが出来るのはとても嬉しい。
最近では二人で歩く時はどちらからともなく手を繋いでいる。
たまにインピーが嬉しそうに腕をぶんぶんと振ろうとするので笑って止める。
そんな些細な日常がとても愛おしい。
湖のほとりにたどり着くと、水辺なだけあって少しひんやりとしていた。
心地よい風が流れて気持ち良い。
敷物を敷き、そこに落ち着くとインピー特製のサンドウィッチを食べた。
はさむ具をつくるのを私も手伝ったけれど、ほとんどはインピーが手際よく作った。
やっぱりまだまだインピーには敵わないなぁ。
そう思いながらも頬張ったサンドウィッチは笑顔になるくらい美味しかった。
「ねぇ、カルディアちゃん」
「なに?」
おなかも膨れて、ほっと一息ついているとインピーが擦り寄ってくる。
「膝枕してほしいなー、なんて。駄目?」
「・・・いいよ」
「マジでっ!やった!」
シシィよりも犬っぽいようなインピーに私は思わず笑みを零す。
インピーが私の膝におそるおそる頭を乗せる。
「重くない?」
「うん、大丈夫」
「うわぁ、俺って超幸せ者だなぁ」
嬉しそうに笑うインピーが可愛らしく感じて、シシィを撫でてあげる時のように彼の頭を優しくなで続けた。
そうしている内にインピーは寝息を立てて寝始めた。
疲れているのだろう。
最近は夜遅くまで作業に没頭していた。
今日のピクニックだって最近私と過ごす時間が少ないのを気にして提案してくれたんだろう。
インピーのそういう優しさが愛おしかった。
(・・・でも、インピーが寝ちゃったから暇)
手持ち無沙汰になってしまった。
どうしようかな、と周囲を見るとシロツメクサが咲いていた。
◆
「インピー、そろそろ起きて」
そろそろ日が傾いてきたので、インピーの身体を揺する。
うっすらと開いた目はとろんとしていてまだ完全に起きてはいないのが分かる。
「カルディアちゃん・・・?あれ、どうして・・・
あ、そうだ!」
がばりと起きたインピーが私の手を握った。
「ごめんね!せっかくピクニック来てるのに俺すっかり眠っちゃって」
「ううん、いいよ。インピーが疲れてるのも分かってるから」
「カルディアちゃん・・・」
「それよりインピー、ちょっと頭下げて」
「ん?こう?」
肩をすくめると、頭を下げてくれた。
背に隠していたそれをぱさりと乗せる。
「え?」
「インピーに冠作ったの」
周囲に咲いていたシロツメクサを使って作った冠。
インピーの朱色に近い髪に白は映える。
満足げに私が見ていると、少し照れたように笑う。
「ありがとう、カルディアちゃん。
でも、冠って俺よりカルディアちゃんの方が似合うと思うんだけどなー」
「私がインピーに作りたかったの」
「・・・ありがとう」
嬉しそうに笑うと、インピーも近くのシロツメクサを一本摘む。
どうするのかと見つめていると輪っかをあっという間に作った。
インピーは本当に手先が器用だな、としげしげと見つめているとインピーが顔を上げた。
「カルディアちゃん、左手出して」
「?うん」
左手を差し出すと、その輪っかは薬指に差し込まれた。
「インピー・・・」
「本物はまだ先になっちゃうけど、受け取ってくれる?」
左手の薬指に指輪だなんて。
意味を考えるとじわじわと身体中が熱くなるように感じた。
「ありがとう、インピー」
インピーがはめてくれたそれを愛おしく見つめていると、そっと抱き寄せられた。
額に落とされた口付けが心地よくて、私もインピーも笑っていた。