ここにいる事(インカル)

大きな屋敷に二人と一匹。
その生活にもすっかり慣れてきた。
インピーに抱きしめられたまま一緒に眠るのが凄く好き。
足元にシシィがいるともっと幸せ。
一つのベッドにぎゅうぎゅうと寄り添っているなんて昔の私は出来なかったから。
インピーの胸に頬を摺り寄せて眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・?」

目を覚ますとインピーの姿もシシィの姿もない。
そもそもベッドに寝ていたはずなのに、私は自分を抱きしめるように丸まって座っていた。

「インピー、どこ?」

立ち上がって周辺を見回しても彼の姿は見当たらない。
部屋を飛び出して、私は屋敷の中を動き回る。
歩いていたはずなのに、不安に駆られて気付けば早足になっていた。
呼吸が苦しい。
一生懸命大きく息を吸うが、それでも苦しいのは変わらない。
どれくらい彷徨ったんだろう。
いくつもの扉を開いて、部屋を探したのにインピーの姿はない。
もしかして、彼の存在は私の記憶だけのもの?

「インピー・・・」

廊下のつきあたりに彼の姿を見つけて私は全速力で駆け寄り、彼に飛びついた。
その時だった。
肉の焼ける音と匂い・・・

「カルディアちゃん、俺を殺すつもりなの?」

振り返ったインピーはどろどろに溶けていて顔がなかった。

「いやぁぁぁぁ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「カルディアちゃん、どうしたの!?」

気付けば叫んでいて、ぼやけた視界のインピーはいつもの顔をしてたし、シシィもくぅん、と鳴いていた。

「・・・インピー、インピー・・・!!」

私は彼にしがみつこうと手を伸ばして、手袋をしていないことに気付いた。
いけない、触れたらインピーが溶けてしまう。
手を自分の胸の前にきつく握る。

「怖い夢でも見たの?」

避ける隙もなく、彼が触れてしまって恐怖から目をきつく閉じる。
けれど、そっと触れたインピーの手は溶けることがなくて私はようやく息をついた。

「・・・インピーがどろどろに溶ける夢を」

「そっか」

子供をあやすように、インピーは私を抱きしめて背中をさすってくれた。
その体温に安心して、再び涙が零れた。

「俺はこうしてカルディアちゃんの傍にいるし、溶けないよ。
だから泣かないで、カルディアちゃん」

「うん・・・うん・・・」

ぎゅっとインピーを抱きしめ返す。
ぼふっと私たちの上にシシィがのしかかってきて、驚いて二人でシシィを見つめる。
シシィも私を心配してくれているんだ。
そう思うと胸の奥が暖かくなっていくのを感じた。

「ありがとう、二人とも大好き」

「わん!」

「俺もカルディアちゃん大好き!」

インピーの笑った顔を見て安心する。
私はもう独りじゃない。

「ねぇインピー」

「ん?」

甘やかすように髪を梳いてくれる。
子供扱いする時と、女の子扱いする時。
インピーは凄く分かりやすく触れてくれる。
安心もくれるのに、ドキドキもくれる。
インピーって凄い。

「インピーが泣いたときは私が抱きしめるから」

「ふふ、ありがとう。カルディアちゃん」

だからこれからも一緒にいてね。
約束だよ、インピー。

良かったらポチっとお願いします!
  •  (12)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

CAPTCHA