世界は綺麗事ばかりじゃない(央撫)

いつだって央は楽しそうだ。
この世には楽しい事しかないみたいに笑う。

「ねぇ、央」

たまらなくなって私が口を開くと、人懐っこい笑みを私に向けた。
今までかかわる異性の人といえば幼馴染の理一郎くらいだった。
理一郎は小さい頃は今より笑っていたけど最近では大体むすっとしている。
笑うのなんてプリンを出された時くらいなんじゃないかって私は疑っている。
だから央が新鮮に感じてしまうのは仕方がないと思う

「何がそんなに楽しいの?」

「撫子ちゃんは楽しくないの?」

CZメンバー集まって何かするのは楽しい。
でも、私は央みたいにうまく笑えない。

「楽しいけど、央みたいになんでも楽しいっていう風に笑えないの」

「んー、そっかぁ」

少し思案すると央は言葉を続けた。

「僕が楽しくないって顔をしたら円が楽しめなくなっちゃうからね」

珍しく央と別れてチームを組まされた円の方を見つめる。
その表情は驚くくらい大人びていて、寂しそうだった。
私は何を言っていいか分からなくて、自分の手をぎゅっと握った。

「央は・・・円が大事なのね」

「うん。大事な家族だから」

一人っ子の私には央の気持ちも円の気持ちも分からない。
ふ、と私の方に視線を戻した央が驚いた顔をする。

「ごめん、撫子ちゃん。
そんなカオさせちゃって!」

央が私の手をぎゅっと握った。
驚いて手を引こうとするけど、逆に引き寄せられて距離が近づいた。

「撫子ちゃんはどんな顔をしていても可愛いって思うけど
それでも笑ってる方がずっと可愛いよ!」

「・・・なかばっ」

握られてる手からまるで央の熱が伝わってきたように熱くなる。
多分、私は今真っ赤になっているだろう。
そんな私に気付かず央は満面の笑みを浮かべた。

「うん、何?撫子ちゃん!」

「央、それはセクハラというものです」

「え!?」

いつの間にか円が央のすぐそばにいて、私の手から央の手を引き離した。
ほっとしたけど、なんだか少しだけ寂しい

「私、理一郎のところに行ってくるわ!」

央と円から顔をそむけて私は幼馴染の元へと走り出した。
央のことをもっと知りたいと思うようになったのはこの時からだったかもしれない。

 

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