付き合うようになって変わったことと言えばやっぱり二人で過ごす時間が増えたことだ。
バイトをしてプレゼントした北欧のカップは茜の部屋で仲良く並んでいる。
「鳥山くん、お茶はいったよ」
「お、さんきゅー!」
そのカップに茜が紅茶を淹れてくれてほっと一息。
お茶請けに彼女が作ったマフィンも出されて、口に運ぶ。
チョコチップとバナナが入ったマフィンで甘いけど、くどくなく男の俺でも食べやすい。
きっと俺が食べることを考えて調整してくれたんだろう。
そういう細やかな気遣いも好きなんだよなぁ
「ん、すっげー美味い!」
「本当?良かったぁ」
花が咲いたように笑う茜は可愛い。
照れを誤魔化すように俺は紅茶をすする。
付き合うようになって一緒にいる時間は増えた。
キスもそこそこする。
だけど、そこまで。
大事にしたいから焦りたくないけど、こうも無防備でいられると俺の理性がどこかへぶっ飛んでいきそうで怖い。
でも、前倒れこんだときに触れた胸・・・柔らかかったなぁ。
身体に密着するような服をあまり着ない茜だからあんまり分からないんだけど着やせするタイプなんだな・・・
(・・・て何考えたんだ!!)
「どうかした?」
「あ、いや!なんでもない!」
あまりにじっと見つめたせいか不思議そうな顔をする。
いや、それよりも。
「あのさ、茜」
「うん」
「そろそろ、俺の事名前で呼んでくれない?」
そう、未だに茜は俺のことを鳥山くんと呼ぶ。
「えっ、と」
俺がそう指摘すると一気に頬を紅潮させる。
「ん・・・私も呼びたいなって思ってたんだ」
「・・・っ」
恥ずかしそうにはにかむ。
その仕草が可愛くて、俺は思わず茜の手を握った。
「茜、呼んで」
「・・・。
よ、揚介くん・・・」
「うん」
他の人に呼ばれてもなんともないのに、茜に呼ばれると胸が躍るような気分だ。
きゅっと手を握り返してくれる小さな手に嬉しくて笑みが零れた。
「すっげー嬉しい、ありがとう。茜」
「ちょっと恥ずかしいけど、恋人同士って感じがするね」
「ああ、俺もそう思った」
見つめ合ってるとそのまま唇が近づく。
そっと目を閉じた茜に触れるだけのキスをする。
本当はもっと色々したいけど・・・
でも、今という時間は今だけなんだから。
「茜、俺すっげー幸せ」
「うん、私も」
今はもう少しだけ。
大人になるのはもう少し後でもいいかな。