思い出のカケラ(志郎×沙弥)

ある日の休日。
いつものように志郎先輩のおうちに遊びにきていた。
今日も理佳子さんは仕事で家にいなかった。
ソファに二人で座り、一緒に雑誌を見る。

「あ、姫!見てみて!」

「どこですか?」

「ここ!」

指で示された場所には綺麗な装飾を施された卵の写真が載っていた。

「わぁ、綺麗」

「イースター・エッグだって、知ってる?」

「初めて聞きます」

「えーと『復活祭や春の訪れを祝うために飾り付けられた卵』だって」

小さく書かれた文字を志郎先輩が読み上げる。

「春の訪れをお祝いするなんて素敵ですね」

「姫、そういうの好きそう」

「私、春好きなんです」

日差しが気持ちよくて、色鮮やかな花も咲いて。
春が来るだけで気持ちが少し明るくなる

「俺も春好き!
あ、でも姫といられるんだったらどの季節でも好きだな!」

「・・・っ」

志郎先輩の言葉はいつも唐突に私を揺さぶる。
赤くなった頬に気付かれたくなくて、私は雑誌のページを慌ててめくる。

「沙弥ちゃん」

甘えるように私の肩にもたれかかってくる。
その重みが心地よい。
志郎先輩はそうやってたまに私を名前で呼ぶ。
落ち着いた声色で囁くように名前を口にされると私はどうしていいか分からない

「・・・志郎先輩」

おそるおそる彼を見ると、ちゅっと唇が触れた。

「俺、君となら何をしても楽しいし、すっげー幸せ。
今年は出来なかったけど、来年は一緒にさっきの卵作って春のお祝いしよ?
それから夏になったら海行って、カキ氷食べて、花火見て・・・
秋は美味いもんいっぱい食べて、冬は雪合戦したりしてさ」

彼の口から語られる未来は今までの私にはないもので、それだけで魅力的なのに。
彼が隣にいてくれるというだけでさらに期待で胸が膨らむ

「志郎先輩は凄いですね。
私が考え付かない未来を見せてくれて」

「君とこういうことしたい、ああいう事したいって色んなもの見るたびに思うんだ。
君がいるだけで俺、すっげー幸せだけどもっと沢山思い出作っていこうね」

「・・・はい!」

笑顔で頷くと、志郎先輩はうっ・・・と息を詰まらせる。

「どうかしました?」

「姫、その笑顔は反則・・・!」

肩が軽くなったと思ったらすぐさまきつく抱きしめられる。

「姫、大好きだよ。
俺だけの姫」

「私も大好きです」

そっと抱きしめ返して、彼に身体を預ける。
なんでもない日が志郎先輩といると輝いていくようだ。
キラキラとした思い出を大切にしよう、と思いながら彼の口付けに応えた。

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