give oneself away(アサラン)

最近、アサカと過ごす時間が増えた。
食事を取るタイミングも大体一緒らしく、気付けば相席して楽しく食べている。
物腰が柔らかいせいもあるだろう。
アサカを女友達のように感じてる部分もあった。

 

「アサカのお茶はいつ飲んでも美味しい」

アサカの出身であるジパングのものは全て素晴らしいという感想を抱くくらい
私はアサカから教えてもらうものを気に入っていた。
苦いけど美味しいお茶を頂きながら、私が焼いたクッキーを食べる。
庭にシートを敷いて、そこで行う二人だけのお茶会。
そんな穏やかな午後。

「ユリアナも来れたらよかったのに」

「野外警備ですもんね。
貴方が持ってきてくれたクッキー、美味しいですね」

サクリ、と音を立てて私が作ったクッキーを頬張る。

「それね、私が作ったの!美味しいって言ってくれて嬉しい」

「あなたが・・・?」

「うん、いっつもアサカがこうやってお茶を立ててくれてるからそのお礼」

「そうですか・・・嬉しいです」

はにかむような笑顔でアサカはそう言う。
その表情に心臓の鼓動が早くなる。

(あれ、おかしいな・・・)

今までだってアサカのそういう表情見たことあったはずなのに。
今日に限ってどうしてこんなに動揺しちゃってるんだろう、私。

「あの・・・アサカのお茶美味しい!」

「ありがとうございます。あなたが飲んでくれるなら僕も頑張っちゃいます」

「ふふ、ありがとう」

外でお茶を飲みながらお菓子を食べる。
アサカと過ごす時間はいつも穏やかで、私はアサカの傍にいると気が緩んでしまう。

その時だった。

 

「きゃっ!!」

一羽の鳥が飛んできて、お皿にあったクッキーを数枚くわえていってしまう。

「・・・びっくりした」

「大丈夫ですか?」

ふと気付けば、私はアサカに抱きついていた。
顔を上げると、すぐ傍にアサカの顔があった。

「うん・・っ大丈夫」

慌ててアサカから離れようとするが、腰を抱かれているため動けない。
アサカの顔をこんなに間近に見ることは初めてだという事に気付く。
綺麗な瞳や、睫。凛々しい眉。
アサカの一つ一つを意識していくと、頬が熱くなっていく。

「アサカ、ありがと・・・」

離して欲しくて、彼の身体を少し力を込めて押し返す。
すると私の視界が揺れた。
アサカに軽く肩を押され、そのままシートの背中がついた。
それでもアサカとの距離は変わらない。

「ア・・・アサカ・・・?」

何がどうなっているのか、分からない。
ただ、アサカの顔がすぐ傍にあって、私は押し倒されるような格好になっていて。
冷静になろうって思って事態を振り返っても、全然頭が追いつかない。
こつん、とアサカの額が私の額にくっつく。

「忘れないでください」

アサカは目を閉じて言葉を紡ぐ。

「僕も男だということを」

「・・・っ」

心臓が壊れるんじゃないかって本気で思った

「さ、お茶会の続きをしましょう」

何事もなかったようにアサカは微笑み、私を起き上がらせてくれた。
私は熱くなった頬に手を押し当て、熱を逃がそうとする。

「クッキー、減っちゃいましたね」

「あ・・・そうだね。また次も作ってくるから」

「本当ですか?嬉しいです」

ぎこちなく笑う私に、満面の笑みを向けるアサカ。
アサカの立ててくれたお茶の残りを一気に飲み干した。
その後、もう一杯お茶を立ててもらい、飲み終わる頃には日が傾いてきたのでおしまいになった。

(・・・さっきのアサカ、)

隣を歩くアサカをちらりと盗み見る。
女友達のように思っていたけれど・・・
私よりも高い背。大きい手。
華奢に見えるけど、しなやかな身体。
真摯な瞳・・・
もう、彼を女友達のような気持ちで見れない。
額が触れた時、キスされるんじゃないかって思った。
そうならなかったことにほっとしたような、残念なような。
ただ、アサカを想う気持ちが変わり始めたのは嘘じゃない。

 

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