「おう、アル」

「お待たせ、ガウェイン！」

ガウェインの元へ駆け寄ると、くしゃっと頭を撫でられる。

「わっ」

驚いて、ガウェインを見上げると嬉しそうに笑っていた。

「それじゃいくか！」

「・・・うん！」

ガウェインが少し乱暴に私の手を取って、歩き始める。
ご機嫌な姿を見て、私も自然と笑顔になった。

 

 

 

「相変わらずすげぇ人だなぁ！」

大勢の人でごった返す街の様子にガウェインは驚きの声を上げる。
去年もそうやって驚いていたのを思い出して笑みを零してしまう。

「ふふ、そうだね」

はぐれないようにガウェインの手を強く握ると、ガウェインの顔が赤くなっていた。

「ガウェイン？」

「いや！なんでもねぇ！ほら、今年も友達探すんだろ？」

「あ、うん」

きょろきょろと周囲を見回すと、エレインの姿を見つけることが出来た。

「ガウェイン、あっち！行こう！」

「おう」

人を避けながらエレインに近づいていくと、彼女も私たちの存在に気付いて大きく手を振ってくれた。

「アルー！」

「エレイン！今年もケーキ食べに来たよ！」

「今年もガウェインさん、一緒なんだね。さあ、どうぞ！」

エレインが差し出してくれたケーキを二人で選ぶ。
先に私が一つを選び、ガウェインはあまり悩まず一つ選んだ。
ケーキを受け取り、真っ二つに割る。

「あ・・・」

出てきたのは、今年も王冠。

「もう王様になってるのに・・・っていったらあれだけど。
ガウェインはなんだった？」

ガウェインのケーキを見ると、鍵だった。

「なんだ・・・」

「ガウェイン、何が出て欲しかったの？」

「それはゆ・・・、いや！なんでもねえ！」

ガウェインは鍵を取り出すとケーキをぱくぱくっと食べてしまった。

「あら残念でしたね。今年は指輪出なくて」

「っ！！」

「エレインっ、」

真っ赤になるガウェインを見て、エレインは悪戯っぽい笑みを浮かべていた。
私は思わず、ガウェインの手を取って歩き出した。

「もう！ガウェイン行こう！エレインまたね！」

「はーい！お二人さん仲良くねー！」

なんだか去年もこんな風にエレインの元を逃げるように去った気がする。
ガウェインの手はごつごつした男の人の手だ、とあの時も思ったっけ。

 

 

それから街を二人で見て回り、ガウェインはまた子供に稽古をつけてあげもした。
ガウェインといると時間があっという間に過ぎてしまう。
今日の私とガウェインは、他の人から見たらどんな風に映っていただろうか。
王と騎士・・・だけではないといいな、なんて願っていた。
一通り見終わると、私たちは元来た道を戻って城を目指していた。

「そういえばよぉ」

「なに？」

「あのケーキの鍵ってどういう意味なんだ？」

「鍵はね、転機だったはず」

「転機かぁ・・・」

考えるように上を見上げたガウェインを私も追う形で上を見上げた。

「わぁ！星綺麗だね！」

「・・・星よりも、お前のほうが綺麗だ」

信じられない言葉が耳に届き、思わずガウェインを凝視する。
ガウェインの顔は髪の色くらい赤くなるんじゃないかっていうくらい赤くなっていた。
視線を私に向け、繋いでいた手をほどくとその両手が私の両肩にかかる。

「ガウェイン？」

「アル、今すぐの話じゃないけどよ。
いつか、いつか俺と夫婦になってくれ」

「・・・っ！」

真剣な瞳に自分が映る。
驚きで頭が真っ白になるが、すぐ嬉しさが追いかけてくる。

「・・・はい！私も、ガウェインと夫婦になりたい」

そこに至るまできっと障害はいくつもあるだろう。
だけど、それでも私はこの人とずっと一緒にいたい。
私の言葉を聞いて、ガウェインは安心したように微笑むとそのままきつく抱きしめられる。

「好きだ、アル。
お前のことが大好きだ」

「うん、私もガウェインが大好き」

きつく抱きしめあいながら、私は感謝していた。
ありがとう、ガウェイン。
私を好きになってくれて。
私と夫婦になりたいといってくれて。
その未来が実現出来るその日を夢見ながら・・・
少し早い誓いの口づけを交わした。