「お待たせ、ランスロット!」
「そんなに慌てなくても私は逃げないぞ」
小走りに駆け寄る私を見て、ランスロットは笑みを漏らした。
そういえば去年もランスロットのほうが先に待ち合わせ場所にいたっけ。
「ランスロットはいつも早いね。
私も見習わないと」
「いや・・・、楽しみすぎて早く着いてしまっただけなんだ」
「フロリアスが?」
子供みたいなところもあるんだな、とランスロットを見つめるとふいに顔を逸らされる。
「アル・・・お前と過ごすこの夜が、だ」
頬を赤らめてそんな事を言うから・・・
私も気付けば真っ赤になっていた。
しばらく互いの様子を伺っていたが、街の賑やかな音に惹かれて私たちは歩き出した。
私をエスコートするかのようにランスロットは私の手を引き寄せ、指を絡めた。
「わぁ!相変わらずすっごい!」
大勢の人でごった返す街の様子に思わずはしゃいでしまう。
はぐれないように、とぎゅっと握るランスロットの手が嬉しくてそれだけで笑顔になってしまう。
「あそこにいるのはエレインじゃないか」
「あ、本当だ!行こう!」
人を避けながらエレインに近づいていくと、彼女も私たちの存在に気付いて大きく手を振ってくれた。
「アルー!」
「エレイン!今年もケーキ食べに来たよ!」
「今年もランスロット様、一緒なんだね。さあ、どうぞ!」
エレインが差し出してくれたケーキを二人で選ぶ。
先に私が一つを選び、ランスロットは今年もどれにしようか凄く悩んで選んだ。
ケーキを受け取り、真っ二つに割る。
「あ・・・」
出てきたのは、今年も王冠。
「もう王様になってるのに・・・っていったらあれだけど」
「お前は本当に王というものを引き寄せるんだな」
感心したような口ぶりでランスロットは言う。
彼もケーキを割ると出てきたのは、指輪だった。
「ランスロットも、引きが強いのね」
去年と同じく指輪が出てくるなんて。
きっと女の子なら喜ぶだろうが、ランスロットは・・・
去年のことを思い出して、少し切ない気持ちになる。
ちらりとランスロットの顔を見ると、心なしか嬉しそうで驚いた。
「ああ、結婚か・・・
それも良いかもしれないな、アル」
「・・・っ!!」
そんなランスロットの言葉に私は言葉を失う。
ふと、エレインを見ると優しい表情をしていた。
それが恥ずかしくて、私はランスロットの手を引いた。
「そろそろ行こう!それじゃあエレイン、またね!」
「うん、行ってらっしゃーい」
それから街を二人で見て回り、美味しそうなものがあれば買って半分ずつ食べあった。
まるで、普通の恋人同士みたい。
今日は立場を忘れて、そんな気分に浸っていた。
一通り見終わると、私たちは元来た道を戻って城を目指していた。
「アル」
会話が途切れ、ふとランスロットが私の名前を呼んだ。
返事をしようと顔をランスロットに向けて上げると、優しい口付けが降ってきた。
「・・・っ!ランスロット・・・!」
「さっき私が言ったのは本心だよ」
さっき、というのは指輪が出たときのことだろう
「いつか、そうなれたら私も嬉しい」
今年じゃなくてもいいの。
ただ、いつかの未来に愛を誓い合って夫婦になれれば凄く幸せだと想像しただけで心が温かくなる。
繋いだ手が強く握り返される。
ランスロットと行った初めてのフロリアスは、嬉しくて苦しくて悲しかったけれど。
2度目のフロリアスはとっても幸せ。
「ランスロット、ありがとう」
私を好きになってくれて。
私の隣にいてくれて。
これからもよろしくね。