「お待たせ、パーシヴァル!」
「おう!」
小走りに駆け寄る私を見て、パーシヴァルは片手を上げてにかっと笑った。
「それじゃあ行こうぜ」
「うん!」
隣に並んで歩き出すと、なんだかそれだけで楽しい気分になってきた。
「いやぁ!去年もすっげーって思ったけど、今年もすげーなぁ!」
大勢の人でごった返す街の様子にパーシヴァルは驚きの声を上げた。
「あんたの人気は相変わらずってことかな」
「そんな・・・私だけの力じゃないよ」
「んー、それは素直に喜んでおけって」
軽く背中を叩かれると、まるでパーシヴァルの元気を注入されたみたい。
「ありがとう、パーシヴァル」
もらった元気を返せるように微笑み返すとパーシヴァルは少し赤くなった。
人混みはますます酷くなり、道行く人に押されてパーシヴァルにぶつかってしまう。
「ごめんっ」
「いや、この人なら仕方ないよなぁ・・・
よし!」
パーシヴァルは気合を入れると、私の手を掴んだ。
「えっ!?」
「いや、はぐれたら危ないだろ?だから」
「あ・・・うん」
初めて繋いだパーシヴァルの手は思っていたよりも大きくて、男の人なんだということを実感させられた。
少し照れくさくて、誤魔化すように私は言葉を発する。
「私、友達のところに行きたいんだけどいいかな?」
「おう、いいぜ」
パーシヴァルは快くそう言ってくれて、私は周囲を見渡してエレインを探す。
「あ、あそこにいる!行こう!」
人を避けながらエレインに近づいていくと、彼女も私たちの存在に気付いて大きく手を振ってくれた。
「アルー!」
「エレイン!ケーキ食べに来たよ!」
「どうぞどうぞ!今焼きあがったばかりだから選び放題!」
「ケーキを選ぶってなんだ?」
「あ、パーシヴァルは知らない?占いみたいなものなんだけど・・・」
エレインが差し出してくれたケーキを私が先に選ぶ。
ケーキを受け取り、真っ二つに割る。
「あ・・・」
出てきたのは、王冠だった。
「もう王様になってるのに・・・っていったらあれだけど」
「ん?王冠がなんだって?」
「あのですね・・・」
とエレインが占いについてパーシヴァルに説明してくれた。
占いでも王冠を引き当てるのは向いているという事なのか、嬉しいような残念なような・・・
「へぇ、面白そうだな!じゃあ、俺はこれ!」
パーシヴァルもケーキを選び、それを割ると出てきたのは指輪だった。
「指輪だ・・・!」
「指輪ってなんだっけ?」
「指輪は1年以内に結婚しますよっていう意味です」
エレインがにこにこと話すと、パーシヴァルの顔は一気に真っ赤になった。
「けけっけっこんなんてそんな!まだ!」
「パーシヴァル落ち着いて!単なる占いだから」
動揺するパーシヴァルを宥めるように背中をなでると真っ赤な顔で私を見た。
「もう行こうぜ!ありがとな、ケーキ!」
ぐいっと腕をとられて、私はそのままパーシヴァルに引かれてその場を後にする。
「そろそろ行こう!それじゃあエレイン、またね!」
「うん、行ってらっしゃーい」
少ししてようやく落ち着いたパーシヴァルと広場へ行って色んなものを食べた。
私は途中で食べるのを断念したけれど、パーシヴァルはあれも美味いこれも美味い!!とはしゃいでいた。
そんなパーシヴァルを見ている事が楽しくて気付けば笑ってばかりいた。
なんだか、これって恋人同士みたいだな。
そんな事を思い浮かべて、慌てて否定して・・・を繰り返す。
一通り見終わると、私たちは元来た道を戻って城を目指していた。
「なぁ」
人混みから抜けたのに、まだ余韻に浸って私たちは手を繋いでいた。
この手を離したくないなんて言ったらパーシヴァルはどうするのだろう
「なに?」
「さっきの、指輪・・・
もしも俺が本当に一年以内に結婚しちゃったらどうする?」
パーシヴァルが結婚?
パーシヴァルの隣を、私じゃない他の人が歩くの?
想像しただけで胸が締め付けられるみたいで呼吸が苦しくなった。
「・・・っ!悪い、そんな顔させたかったわけじゃないんだ」
「パーシヴァル・・・っ」
私はどんな顔をしたのだろう。
慌ててパーシヴァルが私を強く引き寄せた。
「でもそんな顔するって事は、期待してもいい・・・のか?」
耳元で囁かれるとくすぐったい。
心臓が高鳴る。
それって、
「パーシヴァル・・・私」
顔を上げると、頬に彼の唇が触れた。
「っ」
「俺、あんたにふさわしい男になるから・・・
だから、そん時は」
真剣な瞳。
吸い込まれてしまいそうだ。
思い切り抱きつくとパーシヴァルは驚いてそのまま後ろに倒れこんだ。
「今だってパーシヴァルは私にとって凄く素敵な人なんだから・・・!」
「・・・っああ、もう」
パーシヴァルは困ったように笑うと、私をきつく抱きしめてくれた。
来年のフロリアスは・・・恋人同士として来れるのかな。
パーシヴァルの体温を感じながら私はそっと目を閉じた。