2nd story (パーアル)

「お待たせ、パーシヴァル!」

「おう!」

小走りに駆け寄る私を見て、パーシヴァルは片手を上げてにかっと笑った。

「それじゃあ行こうぜ」

「うん!」

隣に並んで歩き出すと、なんだかそれだけで楽しい気分になってきた。

 

「いやぁ!去年もすっげーって思ったけど、今年もすげーなぁ!」

大勢の人でごった返す街の様子にパーシヴァルは驚きの声を上げた。

「あんたの人気は相変わらずってことかな」

「そんな・・・私だけの力じゃないよ」

「んー、それは素直に喜んでおけって」

軽く背中を叩かれると、まるでパーシヴァルの元気を注入されたみたい。

「ありがとう、パーシヴァル」

もらった元気を返せるように微笑み返すとパーシヴァルは少し赤くなった。
人混みはますます酷くなり、道行く人に押されてパーシヴァルにぶつかってしまう。

「ごめんっ」

「いや、この人なら仕方ないよなぁ・・・
よし!」

パーシヴァルは気合を入れると、私の手を掴んだ。

「えっ!?」

「いや、はぐれたら危ないだろ?だから」

「あ・・・うん」

初めて繋いだパーシヴァルの手は思っていたよりも大きくて、男の人なんだということを実感させられた。
少し照れくさくて、誤魔化すように私は言葉を発する。

「私、友達のところに行きたいんだけどいいかな?」

「おう、いいぜ」

パーシヴァルは快くそう言ってくれて、私は周囲を見渡してエレインを探す。

「あ、あそこにいる!行こう!」

人を避けながらエレインに近づいていくと、彼女も私たちの存在に気付いて大きく手を振ってくれた。

「アルー!」

「エレイン!ケーキ食べに来たよ!」

「どうぞどうぞ!今焼きあがったばかりだから選び放題!」

「ケーキを選ぶってなんだ?」

「あ、パーシヴァルは知らない?占いみたいなものなんだけど・・・」

エレインが差し出してくれたケーキを私が先に選ぶ。
ケーキを受け取り、真っ二つに割る。

「あ・・・」

出てきたのは、王冠だった。

「もう王様になってるのに・・・っていったらあれだけど」

「ん?王冠がなんだって?」

「あのですね・・・」

とエレインが占いについてパーシヴァルに説明してくれた。
占いでも王冠を引き当てるのは向いているという事なのか、嬉しいような残念なような・・・

「へぇ、面白そうだな!じゃあ、俺はこれ!」

パーシヴァルもケーキを選び、それを割ると出てきたのは指輪だった。

「指輪だ・・・!」

「指輪ってなんだっけ?」

「指輪は1年以内に結婚しますよっていう意味です」

エレインがにこにこと話すと、パーシヴァルの顔は一気に真っ赤になった。

「けけっけっこんなんてそんな!まだ!」

「パーシヴァル落ち着いて!単なる占いだから」

動揺するパーシヴァルを宥めるように背中をなでると真っ赤な顔で私を見た。

「もう行こうぜ!ありがとな、ケーキ!」

ぐいっと腕をとられて、私はそのままパーシヴァルに引かれてその場を後にする。

「そろそろ行こう!それじゃあエレイン、またね!」

「うん、行ってらっしゃーい」

少ししてようやく落ち着いたパーシヴァルと広場へ行って色んなものを食べた。
私は途中で食べるのを断念したけれど、パーシヴァルはあれも美味いこれも美味い!!とはしゃいでいた。
そんなパーシヴァルを見ている事が楽しくて気付けば笑ってばかりいた。
なんだか、これって恋人同士みたいだな。
そんな事を思い浮かべて、慌てて否定して・・・を繰り返す。

一通り見終わると、私たちは元来た道を戻って城を目指していた。

「なぁ」

人混みから抜けたのに、まだ余韻に浸って私たちは手を繋いでいた。
この手を離したくないなんて言ったらパーシヴァルはどうするのだろう

「なに?」

「さっきの、指輪・・・
もしも俺が本当に一年以内に結婚しちゃったらどうする?」

パーシヴァルが結婚?
パーシヴァルの隣を、私じゃない他の人が歩くの?
想像しただけで胸が締め付けられるみたいで呼吸が苦しくなった。

「・・・っ!悪い、そんな顔させたかったわけじゃないんだ」

「パーシヴァル・・・っ」

私はどんな顔をしたのだろう。
慌ててパーシヴァルが私を強く引き寄せた。

「でもそんな顔するって事は、期待してもいい・・・のか?」

耳元で囁かれるとくすぐったい。
心臓が高鳴る。
それって、

「パーシヴァル・・・私」

顔を上げると、頬に彼の唇が触れた。

「っ」

「俺、あんたにふさわしい男になるから・・・
だから、そん時は」

真剣な瞳。
吸い込まれてしまいそうだ。
思い切り抱きつくとパーシヴァルは驚いてそのまま後ろに倒れこんだ。

「今だってパーシヴァルは私にとって凄く素敵な人なんだから・・・!」

「・・・っああ、もう」

パーシヴァルは困ったように笑うと、私をきつく抱きしめてくれた。
来年のフロリアスは・・・恋人同士として来れるのかな。
パーシヴァルの体温を感じながら私はそっと目を閉じた。

 

 

 

良かったらポチっとお願いします!
  •  (0)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

CAPTCHA