「お待たせ、ガラハット!」
「走ると危ない」
ガラハットの姿を見つけると私は自然と駆けていた。
そんな私にガラハットが気付いて、私の元へと彼もやってくる。
躓きそうになった私をガラハットはあっさり受け止めてため息をついた。
「アルはそそっかしい部分もあるんだから気をつけないと」
「ごめんね、ありがとう」
ガラハットはそのまま私を抱きとめたまま動かない。
不思議に思い、ガラハットを見つめると視線がぶつかる。
「・・・っ」
慌てたように体を離して、私の手を強く握ってガラハットは歩き始めた。
耳が赤くなっていることに気付いて私はこっそりと微笑んだ。
「わぁ!相変わらず凄い人!」
大勢の人でごった返す街の様子に思わず声を上げてしまう。
ガラハットはやっぱり人混みは得意ではないようで少しだけ眉間に皺が寄った。
繋いでいる手に少しだけ力を込めると驚いたように私を見た。
「ねぇ、今年もエレインのところでケーキ買お?」
「ん・・・じゃあ、彼女を見つけないと」
「そうだね」
周囲をきょろきょろと見渡すとエレインの姿を見つけることが出来た。
人を避けながらエレインに近づいていくと、彼女も私たちの存在に気付いて大きく手を振ってくれた。
「アルー!」
「エレイン!今年もケーキ食べに来たよ!」
「今年もガラハットさん、一緒なんだね。さあ、どうぞ!」
エレインが差し出してくれたケーキを二人で選ぶ。
先に私が一つを選び、ガラハットは真剣なまなざしでケーキを見つめるとしばらく時間をかけて一つを選んだ。
ケーキを受け取り、真っ二つに割る。
「あ・・・っ」
出てきたのは、なんと指輪だ。
驚きのあまりガラハットの顔を見ると、ガラハットが赤くなった。
「っ・・・なんで僕を見るんだよ」
「ごめんっ、ちょっと驚いて」
去年は王冠だったから、今年も王冠かな~くらいの気持ちだったのに。
まさか指輪が出るなんて!
立場的には問題かもしれないけれど・・・
どうしよう、凄く嬉しい!
「ねぇガラハットは何だった?」
「ちょっと待って」
ガラハットはケーキを二つに割った。
「わぁ!良かったね!お二人さん!」
なんとガラハットも指輪が出た。
エレインが拍手するそぶりをしながら私たちに満面の笑みを向ける。
そういえば去年、ガラハットは何回やっても指輪が出なくて、1ホール持って帰ったのも最後の最後まで指輪が出なかったと言っていた。
「アル、指輪だ・・・」
年相応の笑顔をガラハットに向けられて、さっきのガラハットのように赤くなってしまう。
「それじゃあ、そろそろ行くね!またね、エレイン」
「うん、二人とも楽しんでー!」
恥ずかしくなって、ガラハットの手を掴むとエレインに別れを告げた。
それから街を二人で見て回り、人混みの中しっかりとつながれた手と時折楽しそうに微笑むガラハットで胸がいっぱいになった。
一通り見終わると、私たちは元来た道を戻って城を目指していた。
「ガラハット、凄く楽しかったね」
「・・・まぁ、悪くなかったかな」
ツンとした態度を取るけれど、ガラハットのそういうのは照れ隠しだってもう分かっている。
ふふ、と笑うとガラハットが不思議そうに私を見た。
「どうしたの?」
「ううん、二人とも指輪が出るなんてなーって」
去年は色々あったけど、まさかガラハットと想いが通じて初めてのフロリアスで縁起良く指輪が出るなんて。
嬉しくて、思い出しただけで笑みが零れる。
「ねぇ、アル」
去年よりも少し肩の位置が高くなったガラハット。
年下の男の子。
それが気付けばどんどん大人になって素敵になっていく。
元々綺麗な顔なのに、大人の色気みたいなものを纏われると少し・・・いや、とても恥ずかしい
「難しいのは分かってるけど・・・
早く君を独り占めしたい」
繋いでいた手を引き寄せ、手の甲に口付けられる。
その部分から熱がじわじわと侵食していくようだ。
「・・・ガラハット」
「アル、大好きだよ」
「うん・・・私も大好き」
二人寄り添って歩く道。
繋いだ手と触れる肩が彼のぬくもりを愛おしいものだと教えてくれる。
「来年も一緒に来ようね」
私がそう言うと、ガラハットは優しく微笑んだ。