お揃い(アサラン)

3月3日、天気は快晴。
今日はお出かけ日和だ。
今日は午前中で授業が終わったので、私はアサカと街へ来ていた。

「お祭りのとき、アサカがくれたタイヤキ凄い美味しかったなぁ」

「故郷の食べ物を気に入ってもらえるって嬉しいですね」

アサカは照れたように笑う。
アサカの髪が光に当たって、キラキラと輝いてみえた。
アベルも黒い髪色だけど、アサカの髪って凄く綺麗に見える。
長い髪を束ねていても痛んでる様子はない。

「どうかしました?」

「アサカの髪って綺麗だなぁって」

「え、そうですか?貴女の髪のほうが綺麗ですよ。
桃色で凄くかわいらしいです」

「・・・っ、」

アサカは臆面もなく、そういう事をたまに言う。
他意はないのかもしれないけど、内心ドギマギしてしまう。

(今日はアサカの誕生日だから誘ったのに、私が喜んでちゃ駄目なのに!)

気合を入れなおし、アサカの手を取る。

「どうかしたんですか?」

「こっちに見たいお店があるの、行こう!」

アサカをちらりと見ると、少し頬が赤くなっていた。
なんでだろう、と一瞬首をかしげそうになったけれど、もしかしたら私がアサカに手を握ってるから?
そう思った瞬間、私も恥ずかしくて顔が熱くなる。
そのままの状態で、目当てのお店へたどり着いた。

「ねぇ、アサカ。お揃いで髪留め選ばない?」

そこはジパングの商品も扱うアクセサリー屋さん。
宝石ではないけれど、綺麗なガラス玉で彩られた髪留めが売っているのを見て
アサカに似合いそうだなってずっと思っていた。

「え、お揃い・・・ですか?」

「そう!どれもこれも可愛いから!」

「ええ、いいですね」

アサカが笑顔で頷いてくれたので、二人でじっくり髪留めを見る。

「この色、貴女の髪に似合いそうですよ」

そう言って、アサカは鏡の前でいくつか私の髪に当ててくれた。

「わぁ!それ綺麗!」

アサカが選んでくれたのは、私の瞳の色に似た蒼と紫が混じったような綺麗な細工が施されたものだった。
髪にあてると、ワンポイントになるし、上品に見えて、私の髪の色ともあっている。

「私、それにする!すっごく気に入っちゃった!」

嬉しくて、振り返ると思いのほか近い距離に一瞬驚く。
だけど、アサカはいつものように微笑んで、頷いてくれた。

「でも、アサカにもそれ似合いそう」

「え?そうですか?」

「うん、ほら」

アサカの手からそれを受け取り、今度は私がアサカの髪へと髪留めを寄せる。
黒い髪にも合って、綺麗だった。

「うん、アサカもそれにしよう!」

「じゃあ、そうしますね」

アサカがレジにもって行こうとするので、私は慌ててそれを止める。

「アサカの分は私が買いたいの!」

「え?でも、」

アサカの腕をとると、驚いたように彼は私を見下ろす。
その隙に手から髪飾りを奪い、私がレジへ行って会計を済ませた。

お店から出た後、アサカは申し訳なさそうにしていた。

「貴女に買っていただくなんて、すいません」

「アサカ、お誕生日おめでとう」

「え!?」

「今日、アサカの誕生日でしょう?
本当は一人でプレゼント選ぼうかなって見に来たんだけど、やっぱりアサカと選んだ方が楽しいかなって。
だから、これ。私からの誕生日プレゼント」

買ったばかりの髪飾りを手渡す。
すると、そのまま肩を引き寄せられたかと思えばアサカの腕の中に収まっていた。

「ありがとうございます・・・!
まさか、貴女からこんな風にお祝いしてもらえるなんて。
凄くうれしいです」

「・・・っアサカ」

アサカの嬉しそうな声が耳のすぐ傍でする。
くすぐったくて、恥ずかしくて、今までアサカに対して穏やかな気持ちばかりだったのに。
初めて・・・こんなに男の人にドキドキしてる。

「あ、ごめんなさい。嬉しくて、つい」

我に返ったアサカは慌てて私から離れる。
だけど、手の中にある髪飾りを愛おしそうに見つめていた。

「ありがとう、大事にします」

「うん、喜んでくれて嬉しい。
アサカ、いつもありがとう!これからもよろしくね」

「はい、もちろんです」

気付けばどちらからともなく手を繋いで歩いていた。

 

 

 

 

 

 

 

次の日、私とアサカがお揃いの髪飾りをつけているのを見て、沢山の人が固まったらしい。
それを見て、アサカがいつもよりご機嫌だったそうだ。

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