中学生になって、理一郎の背が随分と伸びた気がする。
「なんだよ、じっと見て」
私の視線に気付いた理一郎は煩わしそうな表情になる。
そんな表情にならなくたっていいじゃない。
「別に。なんでもないわ」
ぷいっと顔を背ける。
自分でも子供じみてると自覚しているけれど、理一郎とは最近こんな風になることばかり。
私が勝手に突っかかって、理一郎が面倒そうな顔をする。
そんな事を繰り返してばかりで自分でも可愛くないって分かってる。
「別にって顔じゃないだろ、撫子」
「っ!」
乱暴に腕を掴まれて、私はバランスを崩してしまう。
転んでしまう、と思って目を閉じると抱きかかえられた。
誰に、なんて確認するまでもなく。
それは理一郎だった。
「っ、悪い」
理一郎は慌てて私から身体を離した。
少ししか触れなかったけれど、理一郎の身体は見た目よりもしっかりしていた。
こう・・・男の子だなって思ってしまった。
急速に頬が熱くなり、私はたまらなくなって目線を落とす。
「~・・・、理一郎が、最近背が伸びたなって」
「え?」
「ついこないだまで私と同じくらいだったのに。
それがなんだか、」
ぱっと顔を上げると、理一郎が驚いたような顔をして私を見ていた。
その途端、恥ずかしくなって声が小さくなっていく
「・・・私と理一郎が、離れていくみたいで」
「・・・お前は馬鹿だよな」
「なっ」
ぽんぽん、と頭をなでられる。
多分、さっきの理一郎みたいな顔をして驚いてるだろう
でも、理一郎がびっくりするくらい優しい表情をしていたから振り払う事なんて出来なかった
「今までずっと一緒だったんだから、そう簡単に離れるわけないだろう」
「そうね・・・そうだったわね」
季節は変わる。
歳月は穏やかに進んでいく。
私たちの”幼馴染”という関係はいつまで有効なのか。
その事実に目を背けているのは、きっと理一郎もだ。
でも、いつまでも理一郎の隣にいられればいい。
そんな気持ちに気付き始めたのは、この頃だったかもしれない。