Love SIck(ナチフウ)

朝、目が覚めた時なんだかとっても身体が重かった。
部屋の棚の奥に仕舞いこんでいた体温計をふらふらとしながら取り出して、体温をはかる。
しばらくして、ピピピ・・・という機械音がしたので取り出して、その液晶を見た。

(・・・完全に風邪ですね)

そこには39度と表示されていた。
今日は書類作成が主な仕事になっていたはず。
明日頑張ればなんとか出来るだろう、今日は休んだ方が賢明だろう。
てふてふでナナさんに熱が出た事。休ませて欲しいという事を伝えた。
仕事のことは気にせず、ゆっくり休めと優しい声色で言われて、私も安心した。
冷えたベッドにもぐりこむと、なんだか急に心細くなってしまい、きつく瞼を閉じた。
程なくして、私は眠りに落ちていた。

 

 

 

 

(・・・冷たい)

どれくらい時間が経ったのだろう。
額に冷たいものがあることに気付いて、重たい瞼を開ける。

「あ、起こしちゃったすか?」

「・・・ナチ?」

「女の子の部屋に無断で入るのは悪いかと思ったんですけど、
熱で動けないって聞いたから看病しに来たっす」

ぼんやりとした視界には、ナチがいた。

「ありがとう・・・ナチ」

「いいえ、お安い御用っす。
おかゆ用意したら起こすんで、もう少し眠ってていいっすよ」

「うん・・・」

子供をあやすように頭を優しく撫でられる。
それが心地よくて、私はもう一度瞼を閉じた。

 

 

 

「フウちゃん、起きられるっすか?」

身体を軽く揺すられて、目を覚ます。
まだはっきりとしない頭。
身体を起こそうと力を入れるけれどうまくいかない。

「ちょっと失礼するっす」

シーツと私の背中の間に腕を差し込むと、ゆっくりと起こしてくれた。
身体が冷えないように、と私の肩にニットをかけてくれる。

「ありがとう、ナチ」

「じゃあ、あーんしてくださいっす」

ナチが作ってきてくれたおかゆは小さな土鍋に美味しそうに湯気をあげていた。
それをれんげで掬うとふぅふぅ、と冷まして私の口元へ運ぶ。
恥ずかしいけれど、私はひな鳥のように口を開いた。
ナチの作ってくれるものはなんでも美味しくて、おかゆといえど美味しい。
食欲ないと思っていたのに、卵かゆに梅干を少しくわえているので、そのすっぱさが食欲をそそる。

「良かったっす、ちゃんと食べれて」

「ナチのご飯はなんでもおいしいですね」

「そう言ってもらえるとつくりがいあるっす!」

食べきれないと思っていたのに、気付けば土鍋の中はほぼ空になっていた。
最後の一口がおわると、なんだか名残惜しくなってしまった。

「ご馳走様でした」

「いいえ、お粗末様っす」

「ナチに食べさせてもらうの、恥ずかしいけど嬉しかったです」

熱があるからなのか、いつもより素直に言葉に出来る。
ナチはほんのりと頬を赤らめていて、もしや風邪が移ったのかと不安になる

「ナチ、もしかして熱が?」

「いやいやいや!これは熱じゃなくて、フウちゃんが・・・じゃなくて!
ほら、お薬どうぞ!」

オブラートに包まれた薬を口に放り込まれると、次にコップを口まで運んでもらい水で流し込む。

「熱はさっきより下がったと思うけど、まだゆっくり寝るっす」

「・・・はい」

再びベッドに横になる。
胸の上まで布団をかけなおすと、ナチは私の額に触れた。
ひんやりとした手が気持ち良い。

「ナチ、お願いがあるんですけど」

「なんでしょう?」

「あの・・・眠るまで、手を握っててもらえないですか?」

「・・・っ、」

「駄目・・・ですか?」

驚いた顔をするナチをじっと見つめると、さっきのように頬を赤らめたナチが優しく笑って頷いてくれた。

「ナチの手、冷たくて気持ち良いです」

「きっと今、フウちゃんが熱があって体が熱いからっすよ」

布団の中で手を繋ぐと、ナチの手が男の人のそれだと気付く。
初めて触れるナチの手は私が思っていたより大きくて、骨ばっていた。
よく考えれば男の人とこうやって手を繋ぐのは初めてだ。

「ナチがいてくれて、すごい安心します」

「病気のときは気弱になるっす。俺がいて、フウちゃんが安心してくれるなら嬉しいっす」

「・・・ナチ、大好きです」

「・・・っ!?」

するり、とこぼれた自分の本音。
零すだけこぼして、私はそのまま眠りへとおちていった。
取り残されたナチは、私の手をただずっと握ってくれていた。

 

 

 

 

 

翌日、すっかり回復した私の代わりにナチが熱を出した。
今度は私が看病する番。
その時、ナチに好きだといわれたというのは別の話。

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