「今日は良い天気だな」
洗濯物を干しながら、空を見上げた。
昨日は一日中、雨が降っていた。
そのせいで道にはぬかるみも多く出来ている。
歩くのを少し気をつけなければならない。
「そうね、本当に良い天気」
隣にいる関羽も嬉しそうだ。
関羽は雨が苦手、というよりも雷が苦手なので安心したのだろう。
今日はご機嫌で洗濯物を干している。
「関羽、こちらは終わったぞ」
「ありがとう、趙雲。
私もこれで終わりよ」
最後の洗濯物を干し終わると、籠を片手に持つ。
空いている手を関羽に差し出せば、少し恥ずかしそうに笑うと、俺の手を握った。
「趙雲ってそういうところが自然よね」
「ん?なにがだ?」
「だって今もこうやって自然と手を繋いでるもの」
「俺はいつだってお前に触れたいんだよ」
関羽に触れていると安らぐ。
愛おしい妻と、こうして一緒にいられるのだ。
いつだって触れたい。
手を引くふりをして、こうして手を繋ぐ。
俺はずるい男なのかもしれない。
「もう・・・」
関羽は頬を赤らめて、俺から視線をそらした。
関羽の耳がぴこぴこと動いた。
「いつも思うんだが、お前の耳は愛らしいな」
「そんな事言うの、趙雲だけよ」
「そうか?」
関羽の手に少し力が籠もった。
もう片方の手が塞がっているのが残念だ。
家の中に戻り、ようやく籠を置いた。
そのまま空いた手で関羽を抱き寄せた。
「・・・趙雲?」
「すまない、お前が愛おしくて」
繋いだ手はそのままにし、関羽の耳にそっと口付けた。
ぴくん、と耳が動くのが愛らしくて俺は何度も口付けてしまう。
「趙雲、もう・・・駄目」
「ん?どうした?」
関羽の顔を見ると、真っ赤になって俺を見上げていた。
耳は敏感なのだ、と以前言われたことがある。
そうだと分かっていながらもついつい愛らしくて触れたくなる。
しつこくすると関羽にもう触らせてもらえないかもしれない。
「そうだ、こないだ良いお茶の葉を蘇双からもらったの。
一緒に飲みましょう」
身体を離すと関羽がそう言って、奥へと駆けていった。
椅子にかけてしばらく待っていると、関羽がお茶と茶菓子を持って戻ってきた。
「良い香りがするな」
「ね、そうでしょう」
手渡された湯飲みからは香ばしい茶葉の香りがした。
渋みがあってちょうど良い。
「なあ、関羽」
茶菓子を口に入れた関羽は何?というように小首を傾げた。
「耳を触るのは駄目なのか?」
「駄目じゃないけれど・・・趙雲だって耳触られるの嫌でしょう?」
「俺の?
関羽が触れたいのならいくらでも良いぞ」
「もう・・・」
困った、というように関羽は笑う
「出来ればあんまり外で触らないで欲しいわ、恥ずかしいし」
「ああ、分かった」
さっきは家の中だったが、あまり追求しては怒られるだろう。
「・・・趙雲の耳、触れてもいい?」
「ああ」
関羽の白い手が俺に伸びてきた。
そっと耳に触れられると、なんだか疚しい気持ちになってきた。
「関羽・・・」
その手を取って引き寄せ、そのまま奪うように口づけた。
確かに耳に触れるのは外でいけないな。
そんな事を思いながら関羽の耳に触れるのだった。