甘い甘い(シャロアス)

人間の文化にも大分慣れてきた。
シャロンと結婚してから、シャロンと一緒に生活するようになって、私は苦手だった料理や掃除もするようになった。
シャロンの邸宅はとても広い。
メイドを雇っているからそういうものは気にしなくて良いとシャロンは言ってくれるが、
結婚というのは二人で力を合わせていくものだと教わったし、私もシャロンにしてあげられることがあるなら何でもしたかった。
そんなある日の事。
メイドの一人からこんな話をされた。

「アスパシア様、シャロン様へチョコレートは贈られるのですか?」

「え?チョコレート?なんで?」

シャロンは特別甘いものが好きなわけじゃない。
だからそんな風に言われて、私は驚いた。

「あら、ご存じないですか?バレンタインという日に愛する男性にチョコレートを贈るんですよ」

「そうなの?じゃあ、私もシャロンに贈らなきゃ!」

「喜ばれると思いますよ」

「教えてくれてありがとう!」

それからチョコレートの作り方を聞いて、試行錯誤の上、チョコレートを丸い形にしたトリュフ、というものを作った。
きっとシャロンは仕事で帰ってくるのは遅いだろうし、甘いものは疲れに良いと聞いたので
作ったばかりのトリュフを持ってバレスへと久しぶりに足を運んだ。

 

「シャロン、いるー?」

部屋をノックし、ドアを開けた。
机には書類の山が出来ていて、隙間からシャロンがみえた。

「おや、アスパシア。どうしたんだ?」

私が久しぶりに訪れたことに驚いたようだ。
だって早く家に帰ってきて欲しくて、仕事の邪魔をしちゃ悪いかな、と考えてたから
以前より足を運ぶ回数が減っていた。
週に1回か2回・・・・かな。
いや、意外に来てるね、うん。

「シャロンに渡したいものがあって」

「私に?」

「うん!」

手に持っていたトリュフが入ったケースをシャロンに見せた。

「それは・・・」

「チョコレート!今日はバレンタインって言うんでしょう?」

「・・・・知っていたのか、」

「ううん。教えてもらった。
好きな人にチョコレートをあげる日だって聞いたからシャロンにあげるために作ったの。
作ったら帰り待ちきれなくて来ちゃった」

シャロンは私の言葉を聞いて、視線をそらして頬を赤らめた。

「あれ、どうしたの?」

「いや、まさか・・・君からそんなものを貰えるだなんて思っていなかったから」

「あ、そうだ!
せっかくだから食べさせてあげる!」

トリュフを一個取り出すと、シャロンの口の前まで持っていく。

「な、何を・・・っ、」

「はい、あーん」

口を開けるように促すと、シャロンは茹蛸みたいに赤くなった。
私の顔と目の前のチョコレートを交互に見る。

「いや、それは・・・」

「いいから、あーん!」

観念したのか、おそるおそる口を開けたシャロンに手に持っていたチョコレートを口に入れてあげる。

「どうかな?美味しい?」

ごくん、と飲み込む音がして私は感想を待って、じっと見つめた。

「ああ、美味しいよ。
ありがとう、アスパシア」

まだ赤いけど、シャロンは優しく笑ってくれた。

「良かった!
シャロン、大好きよ。これからもずっと一緒にいてね」

そのままシャロンに抱きつくと、ぎゅっと抱きしめ返された。

「ああ、私も君を愛しているよ。
これからもずっと一緒にいよう」

耳元で甘く囁かれたその言葉はまるでチョコレートみたいだった。

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