クローバー(カイゲル)

カイと暮らすようになってから、何度目かの休日。
今日は天気も良いし、折角だからピクニックに行こうと朝食を食べている時に決まった。
ピクニックといっても近くの草原にお弁当を持って出かける程度のもの。
それでも私は凄く嬉しくて、お弁当の用意を済ませると二人で手を繋いで家を出た。

「日差しが気持ち良いね、ゲルダ」

「うん!」

歩きなれた道をそうやって歩いていると、正面から近所にするおばあさんが歩いてきた。

「おや、カイとゲルダじゃないか」

「こんにちは」

「こんにちは、良い天気ですね」

「ああ、そうだねぇ。
相変わらず仲良いね、あんたたちは」

繋いでいた手に視線をやると、からかうように笑われた。
恥ずかしくて、繋ぐ手の力を弱めると、さっきよりも強い力でカイが私の手を握った。

「早く結婚しちゃえばいいのに、お似合いだよ」

「ありがとうございます。それはまた追々」

それからいくつか世間話をすると、私たちはまた歩き出した。

「ねぇ、カイ」

「ん?何、ゲルダ」

様子を伺うように彼の顔を見やる。

「さっきどうして強く握ったの?」

「ああ、ごめん。
君と少しでも離れたくなくてつい握っちゃった。
痛かった?」

「う、ううん。そんな事ない」

恥ずかしいことをいっている自覚がカイにはないの知ってるけれど。
恥ずかしいけど、嬉しくて私は自然と笑っていた。

 

 

 

草原に着くと、持ってきたシートを開いた。
その上にお弁当を置いて、二人で座った。

「まだお昼には早いね」

「そうだね、どうしようか」

風がそよそよと心地よくて私は目を閉じながら考えた。
小さい頃もここにカイと来たなぁ。
あの頃もお花が好きで二人で色々探したりしたことを思い出す。

「ねぇ、カイ。せっかくだから四葉のクローバーを探さない?」

「いいね、子供の頃みたいだ」

私の提案にカイも頷いてくれたので、二人で草原を見ることにした。
クローバーをひとつひとつ見ていくが、どれも三つ葉のクローバーだ。
なかなか見つからないから幸運の四葉のクローバーなんだから。

「ゲルダ、俺は向こう見てくるね」

「うん、分かった」

カイは少し離れた場所へ移動して探し始めた。
私も負けないように意気込んでもう一度クローバーたちと向き合った。

 

 

 

 

 

「ゲルダ、見つかった?」

「ううん、全然ないわ」

気付けば太陽の位置が変わるくらい私は夢中になってクローバーを探していた。
一生懸命探したけれど、結局一つも見つけられなくて落胆しているとカイがそんな私を見て微笑んだ。

「カイはあった?」

「俺も見つけられなかったよ。
だけど良いもの見つけちゃった」

「え、何?」

「ゲルダ、手を出して」

促されて、左手を前に出す。
私の手にそっと片手を添えると、薬指にそれは通された。

「カイ・・・!」

「シロツメクサがあったから子供の頃を思い出して作ってみたんだ。
どうかな?」

薬指にカイがしてくれたのはシロツメクサで作ってくれた指輪だった。
子供の頃もそうやってカイは私に作ってプレゼントをしてくれた。

「嬉しいっ!ありがとう、カイ!」

嬉しくて、我慢できずに私はそのままカイに抱きついた。
突然のことだったので、カイは思わずよろけるが、ちゃんと私を抱きとめてくれた。

「本当の指輪はまだ待っててくれる?」

ぎゅっと私を抱きしめて、耳元でそう囁く。
耳にかかる吐息がくすぐったくて思わず身動きしてしまう。

「カイ、それって・・・」

「プロポーズの予告、かな」

その言葉に思わず顔を上げると、額に口付けられた。

「大好きだよ、ゲルダ。
こうやってなんでもない日がゲルダといるだけですっごく幸せだ。
君が隣にいてくれるだけで落ち着いて、ドキドキして、幸せなんだ」

「うん、私も。
カイといるとおんなじ気持ちになるの」

抱きしめる力を加減しながらも精一杯抱きしめた。

「ずっと一緒にいようね、カイ」

「・・・それは俺の台詞だよ、ゲルダ」

二人で顔を見合わせるとなんだか可笑しくて笑った。
今日はきっと私たちの愛が、芽吹いた日-

 

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