幸せな時間はあっという間に過ぎてるけれど、この幸せはいつまでも続く。
それが嬉しくて嬉しくて。
もしかしたらこれが夢なんじゃないかってふと不安になることもあるけれど、
幸せすぎて怖いってこういう事を言うのかもしれない。
「関羽、そろそろ寝ようぜー」
「うん、ちょっと待ってて」
髪をほどくと、椿油を少し手にとって毛先につける。
寝台に既にもぐっている張飛から視線を感じる。
「どうしたの?そんなにじっと見て」
「んー、関羽って綺麗だなって思ってた」
突然、そんな言葉を言われて私は思わず頬を赤らめてしまう。
「急にそんな事言わないで、恥ずかしい」
「なんで?だって本当の事言っただけじゃん」
「・・・もう」
丁寧に髪の手入れを終えると、張飛が待つ寝台へと移動した。
張飛の隣に身体を滑り込ませて、私はそのまま張飛に抱きついた。
「張飛にそういう事言われるのって、なんだかくすぐったい」
「それは俺を意識してるって事?」
「当たり前じゃない」
夫婦になってから数ヶ月は経っているのに、私たちはまだ互いの言葉にときめいている。
張飛からかけられる甘い言葉や褒め言葉に、私はいちいち赤くなってしまうし、
そんな私を見て張飛は赤くなったり、感動したりする。
幼い頃から姉弟のようにして育ったのだ。
今まではなんともなかったことなのに、意識するようになってから何もかもが恥ずかしい。
お互いの気持ちが通じることは幸せなんだけど、なんだか恥ずかしい。
でも、その恥ずかしさも含めて幸福だって思える。
「なんかさー、関羽が俺のことを好きって言ってくれたり、俺の言うことで赤くなったりするのって嬉しくてまだ慣れない」
「ふふ、私もよ」
張飛の胸に頬を摺り寄せ、体温を感じる。
「幸せすぎて怖いわ」
「え?」
「だって、こんなにも好きな張飛が私のことを好きでいてくれてるのよ?
たまに夢なんじゃないかって思っちゃうわ」
「関羽・・・」
張飛の鼓動が早くなる。
あ、と思ったら気付けば私が張飛の上に乗るような格好だったはずなのに、今張飛が私の上にいた。
それから唇が重なった。
張飛の口付けは、壊れ物を扱うみたいな優しい口付けだ。
口付けをされる度に私は愛されているんだなって嬉しくなる。
「関羽が、怖くなったら俺が抱きしめるしこうやって口付けするよ」
指と指を絡めると、張飛に囚われたような心地になる。
真剣な瞳で私を見つめる張飛は、男の人だ。
私の、最愛の人。
「うん、抱きしめて。
いっぱい、抱きしめて口付けて、私のことを離さないで」
もう一度唇が重なったとき、私はそっと目を閉じた。