ポッキーの日(ガラアル)

「よし、出来たっ!」

厨房を少し借りて、私は焼き菓子を作っていた。
以前、ガラハットにクッキーを食べさせた時に少し恥ずかしそうにしながらお願いされていたからだ。
これを持って、ガラハットと今日は遠乗りに出る予定だった。
そのためにやる事も前倒しに行っていたのだ。
必死な私を見て、マーリンには「若いっていいね~」と少し小馬鹿にされながらからかわれたりもしたけれど。
二人でゆっくり出来る時間はやっぱり大事にしたかった。

焼き菓子と昼食に一緒に食べようと思って作ったサンドイッチをバスケットに詰めて
私は身支度を整えるとガラハットとの待ち合わせ場所へと走った。

「おまたせっ、ガラハット!」

「遅い」

「ごめんなさい、ちょっと支度に手間取っちゃって」

待ち合わせ場所に着くとガラハットは少し不満げな顔をしていた。
約束の時間を少し過ぎてしまっていたので、機嫌を損ねてしまったようだ。
私はガラハットの顔をおそるおそる覗き込むように見つめると、そらされていた視線がぶつかった。
その視線はそのまま私の手にあるバスケットへと移動する。

「・・・それは?」

「あ、これ?ガラハットと一緒に食べようと思って作ってきたの!」

「・・・っ、」

満面の笑みを浮かべて、私はそれを軽く持ち上げてみせた。
それで遅れたという事が分かったのだろう。
ガラハットは少し申し訳なさそうな顔をした後、ぷい、と背中を向けた。

「早く行こう」

「うん!」

ガラハットは素直じゃない。
でも、気付いてしまえばガラハットは表情に色々と出ている。
今だって不機嫌そうにしているけれど、耳まで赤くなっているから照れているのだろう。
くすっと笑って、それからガラハットの後を追うように私も駆け出した。

昼過ぎにはニムエ様の湖に到着した。
敷物を敷いて、私たちはようやく一息ついた。

「はい、どうぞ」

お弁当を広げると、感心したようにガラハットはそれを見つめていた。

「これね、エビとアボカドをはさんであるサンドイッチなの。
自信作なんだ!」

「・・・じゃあ、それ食べる」

ガラハットはサンドイッチを手に取ると一口、二口と食べていく。

「どう?美味しい?」

「・・・ん、美味しいんじゃない?」

「ふふ、良かった」

ガラハットが食べる姿を見て、一安心して私も食べ始める。

「ご馳走様、その・・・美味しかったよ」

「ふふ、お粗末様です」

作ってきたサンドイッチもなくなり、ひと段落ついたので、私はデザートの焼き菓子を取り出した。

「今日はデザートも作ってきたの」

「なにそれ?」

「これはね、プレッツェルって焼き菓子を棒状にしてチョコレートをまぶしたの」

とある国のお菓子だとマリーに教えてもらったものを作ってみたのだ。
その・・・好きな人と食べると幸せになれるという噂があるらしく、折角だから作ってみようと決めたのだ。

「へぇ、見たことないな」

「はい、どうぞ」

一本取り出すとガラハットの口元へと運ぶ。

「・・・っ、」

息を呑んで、少し顔を赤らめるガラハットは年相応の男の子で。
あぁ、可愛いなって微笑んでしまう。
仕方ない、と言いたげな瞳で私を見つめながらぽり、と音を立てて食べていく。

「美味しい?」

「・・・ん、まずくないんじゃない」

食べ進める間も手を離さないでいたら、気付けばガラハットの唇に私の指先が触れてしまいそうな距離になっていた。
慌てて離そうとすると、ガラハットの手で抑えられてしまい、そのままガラハットに指を口に含まれてしまった。

「ちょ、ガラハットっ!」

恥ずかしくなり、私は思わず少し大きな声を出してしまう。
指にガラハットの舌が触れるたびにまるで電流でも走るみたいに刺激されて、私の頬も熱くなっていく。

「・・・焼き菓子も美味しいけど、アルの指も甘くて美味しい」

「っ・・・」

そのまま引き寄せられれば、ガラハットの腕の中に収まってしまった。
ガラハットの首筋に私は顔を埋めて、空いてる手を枯れの背中へと回した。

「焼き菓子もいいけど、デザートはアルがいいな」

ちゅ、と耳に口付けられると反応してしまい、ガラハットを潤んだ瞳で見つめる。
熱っぽい瞳で見つめ返されてしまえば私はもう何も言えなくなってしまった。

「そんな表情、ず・・・」

ずるい、といい終わる前にそっと唇をふさがれてしまう。
久しぶりの口付けはチョコレートの味がした。

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