初めて見る貴方の表情(ガラアル)

「みんなお酒呑むの本当に好きなのね」

宴の席で定番となった早飲み対決。
みんな楽しそうにワインの樽を次々と空けていく。
私はブドウジュースを飲みながらその様子をガラハットと見ていた。

「いい加減見慣れたよね」

ガラハットは気にしていないようで、リンゴジュースを飲んでいる。

「ガラハットはお酒弱いの?」

「普通・・・かな。
あんまり飲まないから」

「そうなんだ」

いつも宴の席では付き合い程度に飲んで、その後アルコールはとらない。
だから酔っ払ったガラハットを見たことがない。
ちょっとした興味本位で私は口を開いた。

「ガラハットが酔った姿見てみたい・・・かも」

「・・・アルが勧めるなら飲まなくもないけど」

「え?本当?」

「・・・うん」

ガラハットはふいっと私から視線をそらすと近くにあったワイングラスを手に取り、
一気に飲み干した。
ゴクゴクと喉が上下をするのを見ていて、ガラハットが男の子なんだなと急に意識してしまい、
なんだか恥ずかしくなって私は顔をそらした。

「おっ!今日はガラハット飲むんじゃん!」

ワインを飲み干したガラハットを見ていたのか、パーシヴァルが嬉しそうに駆け寄ってきた。

「おっし!対決しようぜー!」

「えっ、ちょ!」

パーシヴァルはガラハットの返事なんて聞かずに、早飲み対決の場へとガラハットを連れて行ってしまった。
私は、というと突然の出来事で呆然と見送るだけだった。

あとはなんだかも、なし崩しにガラハットはお酒を呑まされ、呑まされ・・・

「ガラハット、大丈夫?」

みんなの輪からようやく抜け出してきたガラハットは頬を赤らめているし、なんだか目がとろんとした状態だった。
これは・・・可愛い。
思わず笑みがこぼれてしまうが、ガラハットは気付いていない。

「ん・・・僕、部屋もどる・・・」

「一人で大丈夫?」

「アルも来て」

熱い手の平が私の腕に触れた。
そのまま引っ張られるようにして、宴の席から二人で抜け出した。

そのままガラハットに手を引かれて、ガラハットの部屋まで連れて行かれた。
初めて入る彼の部屋は必要最小限のものしかなくて、想像していたよりも綺麗に片付いていた。

「お水、いる?」

「ん・・・」

寝台へガラハットを座らせるとお水をグラスに用意する。
普段しっかりしているけれど、なんだかこういう時は幼くなるんだなぁ、と想うと
貴重な姿を見れているのかも、と嬉しくなる。

「はい、お水」

ガラハットにグラスを手渡すとじっと見上げられる。

「どうしたの?」

「アルが飲ませて」

「え、どうやって」

どうして欲しいのか分からず、私は首をかしげると不服そうな表情になり、
私の手からグラスを奪ってそれを口に含む。
それから空いてる手で私の腕を引っ張ると、突然口付けられた。
一瞬何が起きたか分からなくなったけれど、私の唇をこじあける彼の舌がとても熱くて、
その熱で溶けてしまうんじゃないかって目をぎゅっと瞑る。

「んっ・・・ふ、」

先ほど彼が口に含んだ水を流し込むように口付けられる。
私の唇の端からそれが少しこぼれるが、懸命にそれを飲み干した。

「っはぁ・・・っ」

「こうやって飲ませるんだよ」

分かった?と言いたげにガラハットは笑う。
突然そんな事されて、しかもこんな熱い口付けなんて普段滅多にしないから私の体温が一気に上昇した。

「アル・・・」

「・・・もう!」

そんなせがむような瞳で見つられて断れるわけがなかった。
残っていた水を口に含むと、ガラハットの頬を両手で挟むとそっと口付けた。
そっと開いた唇に先ほどガラハットがしてきたようにする。

「んっ・・ん、」

微かにもれる彼の声に嬉しくなり、水を飲み干した後も唇を離せないでいた。
口内で触れ合う舌はいつもより熱くて、苦しくて。
唇の端から漏れたのはどちらの唾液かなんて分からなかった。

そのままガラハットは私のことを寝台へ押し倒した。
視線がぶつかると恥ずかしくなって、私は思わず目をそらした。

「アル、僕のことみて」

「ガラハット・・・」

おそるおそる彼の顔を見ると優しく微笑まれて、どきりとしてしまう。

「好きだよ、アル」

首筋に口付けられ、そのまま軽く吸われる。
ちくりとした甘い痛みが身体に走る。

「まま、待って!」

口付けと共にガラハットの手が私の太ももに触れていることに気付いて慌てて止める。

「・・・なんで?」

「こういうことは、その・・・
嫌なんじゃなくて!」

まだ、もうちょっとだけ。
もうちょっとだけ先にしたいの。

「ガラハットがお酒呑んでない時にしよう?」

だって、初めてだから。
もっとムードとか、そういうのが大事だと想うの。
私も女の子だから色々と憧れとかあるから。
ぽつりぽつりと私がそう告げるとガラハットは恥ずかしそうに目をそらした。

「・・・分かった」

それからそのまま私の隣に横になると、私を抱きしめる。

「じゃあ、今日は一緒に眠るだけ」

「・・・うん」

ぎゅっと抱きしめられると安心する。
ドキドキもするけれど、彼の腕の中が暖かいから。
彼が私を大事にしてくれているから、そう思えるんだろう。

そのまま二人でとりとめもない話をしていると、気付いたら眠っていた。

翌朝。
まだ陽が昇る前に目が醒めた。
まだ醒めきっていない頭で隣で見るとガラハットが眠っていた。

「ガラハット」

何も告げないで自分の部屋に戻るのはいけないかな、と考えて
眠っているのを起こすのは忍びないけれど私は彼の身体を揺すった。

「ん・・・・
え!?アル?」

眠そうな顔をして、目を開けると私の顔を見てとても驚き、
がばっと起き上がる。

「なんで、アルが!?」

「昨日のこと、覚えてない?」

「っー!!」

思い出したらしく、あっという間に耳まで真っ赤になる。

「・・・ごめん」

「謝られるような事、してないよ?
ガラハットと眠れて幸せだったもの」

「・・・、そんな事言われたら離せなくなっちゃうよ」

ぽつりとつぶやくとぎゅっと抱きしめられる。
そんなガラハットが可愛くて、私はそっと抱きしめ返した。

「ガラハット、おはよう」

「おはよう、アル」

こうして今日も貴方との一日が始まる。

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