二人旅を始めて何度目の再会だっただろう。
サンの屋敷に戻ると、インピーとシシィが出迎えてくれて凄く嬉しくていつもよりはしゃいでしまった。
そんな日の晩。
(・・・眠れない)
身体は疲れているはずなのに、眠りにつけない。
久しぶりにシシィが私の足元で丸まっているのに、どうして寝付けないんだろう。
(ホットミルクでも飲もうかな)
眠れないときに飲むといいんですよって以前サンが用意してくれたことを思い出した。
寝台を抜け、私はキッチンへと足を運んだ。
牛乳を用意して、鍋で沸騰する直前まで過熱する。
カップに注ぎ、それをもって部屋へ戻ってゆっくり飲もう。
ふと思った。
サンはどうしているだろう。
様子を見に行くだけ。それだけ。
私はサンの部屋へと足を運んだ。
部屋の前に着くと軽くノックをする。
「はい」
「サン?私」
「カルディアさん?」
部屋の扉が開き、サンが現れた。
私がいることを凄く驚いているようだ。
「眠れなくて、サンはどうしてるかなって」
「そうですか。良かったら少しお話しませんか?」
「うん、嬉しい」
サンに招かれて部屋へ入る。
久しぶりに入るけど、やっぱりサンの香りがした。
「それはどうしたんですか?」
「前にサンが眠れないときにはホットミルク飲むと良いっていってたから」
「そうですか。どうぞ座ってください」
「うん、ありがとう」
近くにある椅子に腰かける。
すると、サンがにこりと笑った。
あ、この表情は違う。
「ここに座ってください」
カップを私の手から奪い、テーブルに置くとベッドに腰掛けて隣をぽんぽん、と叩いた。
「・・・うん」
誘われるままにサンの隣に座る。
そっと肩を抱かれると、私は自然と目を閉じた。
「落ち着く・・・」
「毎日ずっと一緒にいますからね」
旅に出るとずっと一緒だ。
部屋だって一部屋しか取らないし、いつだってサンの存在を感じて生活している。
それが当たり前になっていたから。
久しぶりにサンが隣にいないのが違和感を感じて眠りにつけなかったんだ。
「サンがいないと私、眠れないみたい」
「ええ、私もですよ」
目を開けてサンを見つめると、サンは微笑んでいた。
「私も寝付けないと思っていたら貴女が来てくれて嬉しかったです」
「サン・・・」
きゅっと抱きしめられる。
サンの胸に耳を当てると、彼の心臓の音が聞こえる。
ああ、サンが傍にいる。
「一緒に寝てもいい?」
「もちろん」
私の髪を救うとそっと口付けを落とされる。
サンはそうやって私に触れてくれる。
たまに危ないときもあるけど、嬉しい。
「シシィに悪いことしちゃったな」
ふと、部屋においてきたシシィを思い出した。
きっと今も私がいないベッドで丸くなっているだろう。
「貴女は私のものですよ。
他の誰にも貴女と眠る権利なんて与えません」
「うん、サンだけだよ」
サンが見せる独占欲が凄く愛おしい。
二人で寄り添って眠る幸せ。
もうサンと離れて眠ることはないだろう。
そんな願いにも似た思いを抱きながら、眠りについた。