以前、眠れないからって無理やり抱きかかえられて眠られたことがあった。
変なことは何もしないって言われて(確かに何もなかったけど)、
部屋に連れ込まれたのだから夜遅くにガラハットの部屋に入って朝早くに出て行った私は
まさしく何かあったように見えただろう。
確かに私たちが恋人同士ということは周知の事実だ。
(でも、何もないんだけどなぁ・・・)
キスしかしてないと言って誰が信じるんだろう。
私が他の人の立場だったら照れ隠しかな、と思うだろうし。
でもガラハットはあれ以来、たまに私を部屋に呼ぶ。
そうして、私を抱きしめたまますやすやと気持ち良さそうに眠る。
まるで猫の親子みたいって抱きしめられながら考えてしまう。マリーが煎れてくれたハーブティーをすすりながら物思いに耽っていると扉がノックされた。
「はーい」
「・・・僕だけど」
「ガラハット?」
声の主はまさに今考えていた人物。
この時間に来るという事は・・・
「どうかしたの?」
扉を開けると、少し頬を赤らめた彼がいた。
ごまかしているつもりなんだろうけど、彼は表情に凄く出やすいから分かる。
多分、今夜も一緒に眠ろうというお誘いだ。
「アル、眠くない?」
「まだそんなに眠くないよ。
マリーが煎れてくれたハーブティー飲んでたの。
ガラハットもいる?」
「いや、僕はいい。
あのさ、今日一緒に」
「ねぇ、ガラハット。
たまには私の部屋で眠らない?」
「え?」
何を言い出すんだという顔をされるが、貴方はいつも私にその言葉を言ってることを忘れたのかしら。
「ガラハットのところで眠るのは良いんだけど・・・
他の人に見つかったら恥ずかしいもの」
「・・・、じゃあお邪魔します」
「うん、どうぞ」
彼の手を取ると、部屋へ招き入れる。
数える程しか私の部屋に入ったことのない彼は手持ち無沙汰な顔をする。
「ふふ、落ちつかない?」
「・・・それは君の部屋だから」
寝台に座るように促し、私も隣に腰掛ける。
「私だっていつもおんなじ気持ちよ?」
ガラハットの部屋に入って緊張しないわけない。
何もないと思っていたって彼が普段寝起きしている空間だと思うだけで気恥ずかしい気持ちになる。
「折角だから横になりながら話そう」
立ち上がり、残っていたハーブティーをこくりと飲み干した。
ガラハットを寝台に入るように促して、私もそれに続く。
シーツの滑らかな肌触りにうっとりしながらガラハットに身体を寄せる。
「くっつくとあったかいね」
「・・・足りない」
そういってぎゅっと抱きしめられた。
「あったかい」
「アルが体温高いから」
「ガラハットも高いと思うけどなぁ」
ぬくもりが心地よくて、ハーブティーのおかげもあるけど少し眠くなってきて目を閉じる。
「私、ガラハットとこうやって眠るの好きだよ」
「・・・っ!」
息を飲む音が聞こえたけど、そのまま私は眠りに落ちてしまった。
「アル・・・起きて」
「ん・・・」
軽く肩を揺すられて重たい瞼を開ければガラハットが私を見下ろしていた。
「え?あ、そっか」
昨日ガラハットは私の部屋に泊まったんだった。
「僕、部屋に戻るから」
「うん、わかった」
寝台から降りようとすると、肩をそっと押し戻される。
「まだ早いから眠ってた方がいい」
「・・・そう?」
「うん、だから・・・」
私の前髪をそっと避けると額に口付けを落とされた。
「おはようとおやすみのキス。
昨日、何もしないで寝ちゃったから」
「あ、ごめんなさい・・・」
心地よくてすぐ眠ってしまったんだ。
ガラハットは珍しく素直に笑って、私から離れた。
「また今度の楽しみにしておく」
「・・・なにを?」
「考えれば分かるよね?
じゃあ、また後で」
ガラハットはそのまま部屋を出て行った。
考えれば分かるって・・・
もしかして、恋人同士がするようなことをさしているんだろうか。
自然と顔が熱くなった。
昨夜、もしかして顔を赤らめてきたのはそういう事だったのかな。
「ガラハットのばか・・・っ」
そんな事言われたらもう眠れないじゃない。