がやがやと混雑している道を歩く。
はぐれないようにとロンが私の手を強く握った。
「七海は小さいから、はぐれたら見つけるの大変そうだね」
「小さくない。そのうちロンより大きくなる」
「はは。それはちょっと嫌だなぁ」
それにしても今日は何か催し物でもあるのかと言うくらい大勢の人でにぎわっている。
ロンは周囲の人より頭一つ分くらい飛び出ているから、はぐれたって私はすぐ彼を見つけられるだろう。
「あ……」
その時、人の隙間から懐かしいものが目に入ってきた。
露店に陳列しているそれに気を取られていた私は前を歩いてる人にぶつかりそうになる。けど、それを間一髪でロンが防ぐ。
「何を見てたの?」
「……あれ」
人をかき分けるようにして横に進み、露店に近づく。
そこにあったのはサングラスだ。
初めて出会った時のロンはサングラスをかけていた。
「七海、興味あるの?」
「……ううん、なつかしくなっただけ」
「へぇ。妬けちゃうなぁ」
心にもない事をロンが口にする。
ここにとどまる理由はなくなったので、私はロンの手を引いて歩き出す。
「ねえ、七海」
「?」
「例え今はぐれたって、七海がどんなに小さくたって俺は必ず七海を見つけるよ」
安心して、と笑う。
いっつもふらふらと野良猫のようにどこかに行っては消えていた彼はもういない。
私を見つけてくれる彼が、そこにいる。
「小さいは余計」
「でも可愛いと思うけどなぁ」
「……! ロンほど大きくなるのはやめておく」
「うん、それが良いね」
私だって、ロンを見つけられる。
だけど、もう二度とはぐれないように、私は繋いだ手に力を込めた。