恋人にキスをせがんでみた~新堂清志の場合~

「清志さん、キス……してもいいですか?」
「……………………君は熱でもあるのか?」
長い長い沈黙の後、そう言いながら清志さんは私の頭に手を押し当てた。
「これでも勇気を振り絞ったんですが!?」
「俺の仕事中にそんな勇気を振り絞るな」
「うっ、そうですよね……」
仕事終わり、清志さんと夕食を食べる約束をしていた。約束の時間よりも早く終わったので、清志さんの診療所を訪れた私は、清志さんが一段落ついたところでネクタイを緩める姿を見て、うっかりときめいてしまった。
「でも、ネクタイを緩めるのは反則だと思うんです…!」
清志さんは「君は馬鹿か?」というような表情で私を見つめている。違うんです、言い訳をするとここ最近忙しくて、久しぶりに会った清志さんのかっこよさにときめいて口走っただけなんです。
心の中で言い訳を述べていると、清志さんは私の顎をそっと持ち上げた。
「君はネクタイを緩める男がいたら誰彼構わずキスしたくなるのか?」
「そんな訳ないじゃないですか! 清志さん限定で―」
言い終わる前に唇が塞がれてしまった。驚いて目を開いてると清志さんと目が合ってしまい、体が熱くなる。
「これで満足か?」
「ま、満足です…!」
「そうか、それじゃさっさと飯を食べて、俺の家に行くぞ」
清志さんは白衣を脱ぎ、いつもの場所にかける。その背中を見ながら、私は小首をかしげる。
「清志さんの家に用事があるんですか? だったらごはんの前に寄っても……」
「君はさっきのキスで足りたかもしれないが、生憎俺はあれだけじゃ足りないんでな。それとも夕食前に付き合ってくれるのか?」
「…! そ、それは何を?」
「さあ?」
にやりと笑う清志さんの悪い笑みにネクタイの比じゃない程にときめいてる自分がいた。

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