あなたに心を奪われた(ミズヒヨ)

「いい匂いがするね」
「おかえりなさい、ミズキさん」

ここはミズキさんが一人暮らししている家。
モノトーンを基調とする素敵なお部屋の中に一部混ざるカラフルなもの…それは私のものなんだけど、それが馴染むようになったのはいつ頃だっただろうか。

今日はミズキさんの家で夕食を作って、帰りを待っていた。
情報局に勤めるミズキさんはとても多忙だ。
だけど、私と会う日はこうやってなんとしても時間をもぎとってくれる。

「忙しかったんじゃないんですか?」
「ずっと忙しくても息が詰まっちゃうからね。
それにヒヨリに会えると思ったら、仕事も随分捗ったよ」

そう笑って、ミズキさんは私にウィンクをする。
今日は特別な日だ。
私とミズキさんがアルカディアから戻ってから一年経った日だ。
テーブルに料理を並べると、ミズキさんが冷蔵庫から何かを取り出して、何やら用意を始める。

「何作ってるんですか?」
「きみももう大人になったんだ。これくらい用意してもバチは当たらないだろう?」

ミズキさんが用意していたのはシェイカーだ。
アルカディアにいた頃、これを使ってカクテルを作るミズキさんを目撃した事がある。
シャカシャカと振る姿を隣で見ていると、ミズキさんはくすりと笑う。
しばらくして、シェイカーからグラスに出来上がったそれはオレンジ色の綺麗な液体だった。

「凄い綺麗ですね!」
「本当はわざわざシェイカーを使わなくてもいいものだったんだけど、せっかくだしね」

仕上げにオレンジを添えると、ミズキさんは私に手渡した。

「これはなんていうカクテルなんですか?」
「スクリュードライバーだよ。良く聞く名前だと思うけど、飲みやすいからって飲みすぎには気をつけなきゃいけないお酒だ。今日はそんなにアルコールを多くしてないけど、酔ったらすぐ言うんだよ」
「はい!」

そしてミズキさんは自分の分も用意して、私たちは席についた。

「きみとこうやって一緒にお酒が飲めるなんて時が経ったなぁと思うね」
「私は嬉しいです」

アルカディアから戻ってきた時、二年近く時が経っていた。
そして私は今年、二十歳になった。
もう子供じゃない。

「ミズキさん、これからもずっと傍にいてくださいね」
「それは僕が言うセリフだったのに」

くすりと笑う。
ミズキさんの隣にいるためなら私だって成長するのだ。
あなたの手を取って歩ける人間に私はなりたいから頑張れる。

「ヒヨリ。いつまでもきみの隣は僕のものだ。いいね」

真剣な瞳で私を射抜き、ミズキさんは綺麗に微笑んだ。
ああ、やっぱりこの人には敵わない。

笑みを零しながら、私たちは乾杯をした。

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