放課後。
トモセくんがクラスまで迎えに来てくれて、私たちは一緒に下校する。
今日はトモセくんと付き合って一年の記念日だ。
「ヒヨリ、悪かったな」
「ううん。だってもうすぐ舞台だもん」
そう。今日はトモセくんの部活があったため、記念日を祝うデートには行けなかった。それを申し訳なさそうに謝るトモセくんはちょっと可愛い。
「次の劇、私も楽しみにしてるから頑張るトモセくんの事応援してるよ」
「ありがとう」
次の劇では、トモセくんは準主役なのだ。それが楽しみで、私はワクワクしている。
そう言って、話しながら家の前に着く。
一緒にいる時間ってどうしてこんなにあっという間に過ぎてしまうんだろうか。
前はそんな風に考えなかったのに、トモセくんと付き合うようになってから彼と過ごす一分一秒がもう少し長くなればいいなと考える自分がいる。
(それだけトモセくんの事好きなんだなぁ)
そう思うと少しくすぐったい。
ずっと大事な幼馴染だったトモセくんは、今では私の大事な彼氏だ。
「ヒヨリ、ちょっと待っててくれないか」
「え? うん、いいけど」
私の家の前に着くと、トモセくんは駆け足で自分の家へと戻っていった。
その背中を見送り、私はぼんやりと空を見上げる。
もう周囲はすっかり茜色。
綺麗だなぁと見ているとトモセくんが走って戻ってきた。
「ヒヨリ」
トモセくんは一本の薔薇を差し出した。
驚いて彼の顔を見ると、心なしか赤くなっている気がした。
「ちゃんとしたお祝いは後日改めてするけど。
今日、どうしてもこれだけは渡したかったんだ」
「ありがとう、トモセくん」
彼の手から薔薇を受け取ると、真っ赤な薔薇は綺麗で思わず見とれてしまう。
「これから先も記念日にはこうやってお前に薔薇を渡すから。
999本になるまでずっと傍にいてほしい」
「毎年一本だったら間に合わないね」
ふふ、と私が笑うとトモセくんも小さく笑う。
「でも、そうなるくらいずっと一緒にいたいのは私も一緒だよ。ありがとう、トモセくん」
そう言って微笑むと、トモセくんは私をそっと抱き寄せた。
家の前だとかそういう事はトモセくんの頭から消えてしまっているようだ。
だけど、私も彼の腕の中にもう少しだけいたいから、気づかないふりをした。
大事な幼馴染が、大事な彼氏になって、いつか大事な旦那様になるんだろうか。
そんな日が来ても、きっと私たちの大事な部分は変わらないんだろうな。