独り占め(ソウヒヨ)

「ねーねー、ヒヨリちゃん」

昼休み、凝部くんは退屈そうに頬杖をつきながら、明日提出の課題をせっせとやる私を呼んだ。

「凝部くんはもう課題終わったの?」
「え、課題? ぜーんぜん☆」
「凝部くんもやりなよ」
「うん、後でね。それでさ、ヒヨリちゃん。今日は何の日か知ってる?」
「今日?」

期待を込めた瞳で私を見つめる。
凝部くんって意外とそういう事気にするんだと知って、少しだけ嬉しい。
もう一年……いや、まだ一年一緒にいるけれど、まだ知らない凝部くんがいるんだなぁと思うと自然と笑みが零れる。

「忘れてるなら別にいいんですけど」
「ふふ、忘れてないよ。今日は付き合って一年記念日だよ」

アルカディアから戻ってきて一年ともいうけれど。
凝部くんがその日を大切に思っていてくれた事が嬉しい。

「なーんだ、覚えてたんだ。さっすが俺のヒヨリちゃん☆」
「そんな私の凝部くんは、彼女とのデートをするために課題をやっつけてしまおうとは思わないの?」
「え~、その聞き方はずるいな~」

凝部くんは机に突っ伏して、ちらりと隙間から上目遣いに私を見る。
ああ、ずるいなぁ。彼氏の事を可愛いと思う日が来るなんて、一年前の私に教えてあげたい。
凝部くんは大きなため息をついた後、バングルを操作して、真っ白な課題を表示する。

「これが終わったら、今日の放課後はヒヨリを独り占めしていいって事だよね?」
「…お好きにどうぞ。それにそもそも私は」

ずっと凝部くんに独占されてるよと言おうと思ったが、やめておく。

「ん?なに?」
「ううん、後で」

凝部くんはぺろりと唇をなめると、真剣な表情で課題に向かった。

 

素直な凝部くんも、素直じゃない凝部くんも私の自慢の彼氏です。
放課後はどこに行こうかなと胸を弾ませながら、私も課題の続きにとりかかった。

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