放課後。
学級委員の仕事が終わる頃、外はすっかり夕焼けで赤く染まっていた。
「遅くなっちゃったね」
隣にいる陀宰くんに話しかけると、陀宰くんもようやく最後のまとめが終わったところでほっとした様子でこちらを見た。
「そうだな、これ提出したら帰るか」
「うん」
データを送信後、報告も兼ねて担任の先生がいる職員室に向かう。
廊下を二人で並んで歩いていると、陀宰くんが深いため息をついた。
「どうかした?」
「いや、悪い。せっかくの記念日なのに」
今日は私と陀宰くんが付き合って一年の記念日だ。
放課後に猫カフェに行く約束をしていたんだけど、急遽学級委員の仕事が入ってしまったのだ。
「陀宰くんのせいじゃないよ、今日のは」
「いや、担任と目が合った時やばいなって思ったんだよ。俺の顔を見て、何か思いだしたみたいな様子だったし」
「あはは」
私もその一瞬を見ていたが、確かに先生は陀宰くんの顔を見て思い出した様子だった。その後の陀宰くんの絶望しきった顔を思い出して、私は笑ってしまう。
「笑いすぎだぞ」
「ふふ、ごめんね。つい……」
「ったく」
職員室に着き、先生に報告を済ませると私たちは晴れてお役目から解放された。
「今日はもう遅いし、猫カフェは今度のお休みにしよっか」
「ああ、そうだな」
隣を歩く陀宰くんにえいっと肩をぶつけてみる。軽い体当たりだから陀宰くんは微動だにしないけど、驚いた様子で私を見下ろす。
「今のは?」
「…じゃれついてみました」
「ふっ」
「陀宰くん、笑ってる!?」
「いや…ふふっ」
陀宰くんのツボだったのか、肩を揺らしてくっくっと笑う。
「猫に会えないから落ち込んでる陀宰くんを励まそうと思ったのに」
「いや、俺が落ち込んでるのは猫カフェに行けないからじゃないぞ。いや、行きたかったけど。瀬名と…二人で過ごしたかったなって思ってたから悔しくなっただけだ」
「一応さっきまでも二人で過ごしてたけどね」
「仕事してただろ」
「うん、ふふ」
そんな事で落ち込む陀宰くんが可愛くて、私は思わず笑ってしまう。
「今日だけじゃなくたって、明日でも明後日でもいつでも二人で過ごす事は出来るよ」
「…それもそうか」
陀宰くんの大きくてゴツゴツした手に触れる。
「明日からもよろしくお願いします」
「こちらこそ」
互いにぺこりと頭を下げあって、そんな事を言い合った。
今日も明日も明後日も、いつまでも仲良くしてください。
大好きな陀宰くん。
これを言うのは猫カフェの後にしようと心に誓いながら、陀宰くんの手をきゅっと握った。