いつもより少し豪華な夕食を食べ、今日という日があと数分で終わる頃。
屋敷の庭から空を眺めていた。
「晴れてよかったね」
「ああ、そうだな。寒くないか?」
「うん、大丈夫」
ヴァンにそっと寄りかかり、彼の体温を感じる。
これが恋人同士の距離感だと思うと、少し照れくさい。
だけどようやくこうやって甘えることにも慣れてきた・・・ような気がする。
「もうすぐお前と出会った年が終わるんだな」
「なんかあっという間だったね」
色んなことがあった。
何もない日々からあっという間に。
鮮やかなほど世界は変わった。ヴァンと一緒にいられて、良かった。
手袋越しに触れることにも慣れたけれど、やっぱりいつかは触れ合いたい。
「ヴァン、来年は私もっと頑張るね」
「ん?なにをだ」
「ヴァンともっと恋人みたいなことが出来るように。
いつか、素肌で触れるように・・・」
「それは私にとっても悲願だからな」
私の肩を抱くと、少しだけ力が籠もる。
外気から私を守ろうとしてくれてるんだろうか。それがくすぐったい。
「カルディア、知っているか」
「なに?」
「年が変わるそのときに、恋人同士はしなければならないことがあるんだ」
「え?」
私の手を、持ち上げるとヴァンはそっと口付けた。
そのとき、遠く街から歓声と鐘の音が聞こえる。
新しい年が、来た。
「来年はここに口付けできるだろう」
ヴァンは私の唇を指でなぞると、真剣な瞳で私を見つめた。
「・・・ヴァン、えと・・・」
どうしよう、凄く恥ずかしい。
顔から火が出るんじゃないかっていうくらい熱い。
じっとヴァンを見つめていると、ヴァンはようやく表情を崩した。
「そう固くなるな、そのときには私の全てでカルディアを愛するからな」
「・・・え?」
もう一度手の甲にキスを落とすと、ヴァンは笑った。