入りきらない(ヴィルラン)

なんだかよく分からないが、そわそわしてる。

「・・・」

隣にいるランを見ると、ぱっと目があうが慌てて逸らされる。
なんか怒らせるような事をした覚えはない。
ランが作ったというマフィンを頬張りつつ、あたりを見回した。

「なんか落ち着かないな」
「え、そうかな」
「ああ、なんでこんなに妙にそわそわしてるんだ?みんな」
「それは・・・その、」

言いづらそうに俺を見つめる。
なんでそんなに言いづらいのか分からず、首をかしげるとランは意を決したように口を開いた。

「だって明日はクリスマスだから」
「へぇ」
「・・・あの、ヴィルヘルム」
「くりすますってなんなんだ?」

俺のその言葉を聞いて、ランは盛大なため息をついた。

「要は相手が欲しいものを靴下にいれるってことか?」
「うーん・・・そんな感じ、かな」

サンタクロースというじいさんがソリにのって空を飛んで?
プレゼントを配るというのがクリスマスらしい。
そこから派生して、靴下をつるしておくと欲しいものがもらえるみたいな話らしい。

「おまえ、なんか欲しいものあるのか?」
「え、私はヴィルヘルムが選んでくれるものなら・・・」
「俺、サンタじゃないけど良いのか?」

クリスマスはサンタからプレゼントをもらうって話だったと思うんだが。
ランは頷くと、同じ問いを俺に返した。

「ヴィルヘルムは何かほしいものある?」
「俺の欲しいものは靴下には入らないんじゃねーか」

そもそも俺が欲しいものなんてひとつしかない。
ランの肩を抱き寄せると、心地よい体温がすぐ傍になった。

「おまえ、靴下はいれそうか?」
「-っ!」
「俺が欲しいものっていったらお前しかないけど」
「・・・ヴィルヘルムはたまにずるいよね」
「なんだよ、それ」
「思ったことを言っただけ」

ランが嬉しそうに笑った。

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