ふたりだけの時間(拓珠)

すっかり雪が積もった神社の雪かきもある程度片付き、背中を思い切り伸ばしていると後ろから頭をチョップされた。

「・・・拓磨?」
「ん、お前は俺が来るの待てなかったのか?」
「え?」
「雪かき、お疲れさん」

昨日別れる時に雪が積もってたら手伝うから待っていろといわれたのを忘れたわけではない。
かじかんだ手を拓磨が握る。じんわりとした熱が伝わってきてすっかり冷えていたことを思い出させられた。

「拓磨の手、あったかいね」
「・・・珠紀の手が冷たいんだよ。ほら、中に入るぞ」

自分から手を繋いできたのに、私の反応に照れたのか目元がうっすら赤くなった拓磨を見て、気付かれないようにくすりと笑った。
拓磨を待ちきれなかったんじゃなくて、せっかく来た拓磨と過ごす時間を大切にしたかったのだ。

家のなかに戻ると、台所で美鶴ちゃんが夕食の支度を進めていた。

「美鶴ちゃん、手伝うよ」
「あと少しですから、珠紀様はゆっくりしていらしてください!」

拓磨が来たことに気付いた美鶴ちゃんは全てを理解したような笑顔で私を居間へと押し戻そうとする。
きっともう少ししたら他の守護者のみんなが来るだろう。
お茶だけ用意して、拓磨の元へ戻る。

「はい、どうぞ」
「ああ、さんきゅ」

湯のみを拓磨の前に置くと、拓磨は私をじっと見つめてくる。
その視線が恥ずかしくて誤魔化すように笑うと、拓磨がぽんぽんと隣を叩いた。

「・・・こっち、来いよ」
「・・・うん」

今日、二人だけで過ごせるのはきっともう少しだけ。
拓磨もそれが分かってるから普段言わないような事を言ってるんだろう。
こくりと頷くと、私は拓磨の隣に座る。
指先を拓磨の手にそっと重ねる。

「手、やっとあったかくなったな」
「うん、そうだね」

まだ湯気がぼんやりと見える湯のみにそっと口をつける。
拓磨とのこういう時間がとても好きだ。

「来年もこうやって一緒にいれるといいね」
「・・・そうだな。きっといられるだろう」
「うん」

叶うのなら、来年も再来年もずっと一緒にいれますように。
そんなことを思いながら過ごした今年最後の日。

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