*二人の朝(ヴィルラン)

デート当日、いまだかつてないほど私は緊張していた。

「それじゃあ私は行くね!」

ユリアナは身支度を済ませると満面の笑みを私に向けた。
ユリアナも今日はユアンさんとのデートだ。

「うん、いってらっしゃい
楽しんできてね」

「ランも楽しんできてね!
折角ヴィルヘルムとのお泊りデートなんだから」

「う・・・うん」

少し赤くなる私を見て、にやりとユリアナが笑う。
そしてそっと私に耳打ちする。

「帰ってきたら詳しく聞かせてね」

「・・・もう!」

「それじゃあいってきまーす」

ユリアナが出て行った後は私も身支度をし、何度も鏡とにらめっこをした。
・・・うん、きっと大丈夫。
以前ヴィルヘルムが褒めてくれた服装と似た雰囲気のものにしたし、
ヴィルヘルムが私にプレゼントしてくれたペンダントとも合っている。
ユリアナが言うとおり、初めての一泊デート。
緊張するけれど、やっぱり長い時間一緒にいれるのは嬉しいから。

「頑張ろう」

声に出して、私は決意を胸に部屋を出た。

 

 

 

 

 

「ごめん、お待たせ」

待ち合わせ場所に行くとヴィルヘルムは既に待っていて、駆け寄ってきた私に気付いて軽く手を上げた。

「おう」

ヴィルヘルムは私をちらりと見ると少し照れくさそうに私から視線をそらした。

「どうしたの?」

「いや・・・今日のお前、いつもより可愛いな」

「えっ」

「・・・ほら、行くぞ!」

出会い頭からそんな事言われると思ってなかったから私も思わず赤くなる。
そっぽを向きながらも私の手を握ってくれる彼の手がいつもより熱い気がした。いつものように海沿いを散歩し、昼食を買って食べたりして時間を過ごした。
日が傾いてきて、私たちは予約してある宿屋へと向かった。
ユリアナに教えてもらった宿屋。
ユアンさんと以前利用して凄く良かった!と言っていたので、そこを利用することにしたのだ。
1階は食堂になっていて、そこの料理も凄く美味しかった。
夕食が終わると、ようやく部屋に入った。

「・・・っ!」

視界に飛び込んできたのは大きな一つのベッド。

「すっげーでかいな、ここのベッド」

ヴィルヘルムは感心するようにベッドをしげしげと見て、そこに座った。

「これなら一緒に寝れるな」

「うん、そうだね」

「そんなところで突っ立ってないでお前も来いよ」

入り口付近で突っ立ったままの私を見て、ヴィルヘルムが私を手招きする。
誘われるように彼の隣に腰掛けると、肩を抱かれた。

「ラン・・・」

低めの声で、優しく名前を呼ばれる。
それだけで心臓が壊れそうなくらい高鳴る。

「ヴィルヘルム、あの・・・」

壊れ物を扱うかのように、ヴィルヘルムが私に口付ける。
それを受け止め、私は目を閉じた。
啄ばむような口付けを何度か受けると、それからきつく抱きしめられる。

「ランって抱きしめると気持ち良いよな
布団とは違うけど、なんかこう・・・気持ち良い」

例えが布団っていうのが少し納得いかないけれど、気持ち良いといってくれると嬉しい。
ヴィルヘルムがこうやって抱きしめてくれるのが私も好きだから。

「私も、ヴィルヘルムに抱きしめられるの好き」

彼の背中に回した腕の力を強くする。
もっと貴方に近づきたい。
もっと貴方を知りたいの。
それが伝わるように願いながら、私から初めてヴィルヘルムに口付けた。
触れるだけのそれでさえ、恥ずかしくて死にそう。
唇を離して、彼の顔を恐る恐る見上げると、真っ赤な顔をして固まっていた。

「え・・・と、ヴィルヘルム?」

名前を呼ぶと、弾かれたように彼は私をベッドへ押し倒した。
そのまま私の上に覆いかぶさり、唇を奪われる。
さっきまでのような啄ばむ優しいキスじゃない。
キスの合間に漏れる声も、彼に奪われる。
ヴィルヘルムの舌が私の口内に差し込まれると、それは私の舌を探して口内をかき回す。
それに応えようと、私も彼の舌を求めるけど、段々頭の奥が真っ白になっていく

「ラン・・・」

唇を離すと、二人の間にはその名残が見えて体温が更に上がる。
私を見下ろすヴィルヘルムの顔を見るのが恥ずかしくて、私は顔を背ける。

「顔、見せろよ」

「やっ・・・んっ、」

耳朶を軽く噛まれて、思わず声を漏らす。
それに気をよくしたのか、ヴィルヘルムはそのまま耳朶に舌を這わせながらもう片方の耳を指で弄る。
今まで出したことのない声が次々と自分の口から漏れる。
空いてる手が私の身体をまさぐり、胸のふくらみにたどり着く。

「お前の胸、柔らかい」

「恥ずかしい・・・っ」

「だって初めてだからよ、驚いてるんだ」

初めて、という言葉に私は一瞬固まった。
はじめて?

「え、と・・・ヴィルヘルムも、その・・・こういう事は初めて、なの?」

「おう。だって魔剣の中にどれだけいたと思ってんだよ」

何を当たり前のことを言ってるんだって顔をしながら私を見下ろす。

「そうなんだ」

てっきり初めてじゃないと思っていたから。

「何間抜けな顔してるんだよ」

頬を軽くつねると、鼻先にキスを落とされる。

「だって、驚いちゃって・・・
でも、嬉しい。私が初めてなんだ」

「お前以外とこういう事するなんてありえないだろ」

つねられた部分にもキスを落とされる。
ヴィルヘルムのキスはとても優しい。
愛情に包まれるみたいで、凄く幸せ。

「お前以外にこうやって触れたいなんて俺は思えないからな」

私の手をそっと握ると手の甲に口付けられた。

「うん・・・もっと触って、私のこと」

全部、貴方のものにして―

きつく手を握り返すと、もう一度唇を重ねた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んんっ・・・ぁっ」

「ラン、大丈夫か?」

ヴィルヘルムの汗がポタリ、と私の胸に落ちる。
堪えるように眉間に皺を寄せるその表情が官能的だな、とぼんやりと思う。
ヴィルヘルムの熱が、私の中を少しずつ侵略していく。
指で散々慣らされた所は初めて彼を迎え入れるのに、そこまでの痛みを伴わず受け入れていく。
私の身体を気遣うようにヴィルヘルムは何度も何度も私に尋ねる。
その気遣いが恥ずかしくて、嬉しくて。

「全部入ったぞっ・・・」

「ヴィルヘルム、キスして?」

彼の首に腕を回すと、唇を寄せた。

「んっ・・・ふ、っん・・・」

舌を絡ませるキスなんて今日初めてしたはずなのに、今はそのキスが当たり前のように自分からせがんでしまう。
ヴィルヘルムをもっと感じたい。
その一心で私は突き動かされる。

「ラン、動くぞ」

「うんっ、ヴィルヘルムの好きにしてっ」

ぎゅっと私の身体を抱きしめると、律動は開始される。
少しだけ腰を引いて、それから奥へと進める。
その動きを何度か繰り返していく。

「んっ・・・ヴィルヘルムっ・・・っ、」

少しずつ激しくなっていく動きに私は翻弄され、彼の名前を懸命に呼ぶ。
鈍い痛みと、彼の熱で満たされる中が嬉しくて、知らない間に私は涙を零していた。

「っ!痛いか?」

その涙に気付くと彼は慌てて、私の涙を舌で拭う。

「そうじゃないの・・・嬉しくて。
貴方が、私を求めてくれるのが幸せなの」

「あんまり可愛い事言うな、止まんなくなる」

困ったように笑う彼にそっと口付ける。

「だって貴方が好きなの」

「ラン・・・っ!!」

先ほどまでとは打って変わって、私の腰を掴むと私の奥を狙うかのように激しく突き上げられる。

「っあぁっ!!」

「ラン・・・ランっ・・・好きだっ・・・!!」

「んっん・・・っ」

返事をしたいけれど、頭の中は真っ白になり、身体は今まで感じたことのない波に攫われそうになる。これが多分、気持ち良いという事なんだ。

「あぁっん・・・ヴィルヘルムっ・・・」

「はぁっ・・・!」

彼の熱が、そのまま私の中で広がるのを感じると私はそのまま意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん・・・」

うっすら目を開けると裸のヴィルヘルムに身体をくっつけていることに気付いて一気に目が醒めた。

「っ!!」

ヴィルヘルムの顔を見るとすやすやと気持ち良さそうに眠っている。
身体をずらそうと身をよじると彼にしっかりと抱きしめられていて動けなさそうだ。

「ヴィルヘルム・・・」

初めて触れる貴方の熱に、私はどうしようもない幸せを感じていた。
こういう事をすることだけが全てじゃないけれど、やはり求められているという実感は幸福だ。

「おきたのか?」

私が動く気配で、彼も目を開けた。

「ごめんなさい、起こしちゃって」

「いいよ」

ぎゅっと抱きしめられると、ヴィルヘルムの鼓動を感じた。
凄く落ち着く。

「俺さ・・・こういう事したいって欲求が今までなかったんだよ」

「うん・・・」

そうなのかなって少し思っていた。
だから不安だったとは恥ずかしくて言えなかった。

「今までずっと戦うことにしか興味なくて、女にも何にも興味がなかったから。
正直、俺も驚いてる」

「私は凄く嬉しいよ、ヴィルヘルムとこうなれて」

「ああ、俺もだ」

優しく私の髪を梳いてくれるその手が愛おしい

「こうやって誰かと眠るって幸せなんだな、知らなかった」

「うん」

「ありがとう、ラン」

「私も、ありがとう」

貴方に出会えて、私は本当に幸せ。
二人で笑い合って、そっと口付ける。
私たちはこれからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*****

「お帰りー!ラン!」

「ただいま、ユリアナ!」

部屋に帰ると一足先に帰ってきたユリアナが私を迎えてくれた

「ランも紅茶飲むでしょ?」

「うん、ありがとう!」

紅茶の準備をしてくれている間に私は荷物を片付ける。
そうして二人で座り、それぞれの話を始める。

「良かったね、ラン」

「うん・・・ありがとう」

ユリアナが優しい笑顔で、そう言ってくれてじわじわと実感が湧いた。
ふと、私の首筋に視線を落とすと苦笑いを浮かべた。

「でも、キスマークは見えないところに残せって言った方が良い・・・かな?」

指差された箇所を鏡で確認すると紅い痕が残っていた。

「~っ!!!」

慌てて手で隠すと、一気に身体が熱くなる。

「ど、どうしよ!」

「とりあえず絆創膏貼っておこう?そのうち消えるから」

「うん!」

 

 

 

 

休み明けに首元に絆創膏を貼っている私を見かけたエリアス教官が
どうしたんだと心配そうにしつこく聞いてきて心底困るのはもうすぐ。

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