夢を見る。
処刑台の階段を一段一段登る夢。
足が震える。
ああ、俺はこんなにもみっともないのか。
あいつのように毅然とした態度で階段を登る事もできないのか。
「マクシミリアンさん!」
肩を揺すられて意識を取り戻す。
俺のことを心配そうに覗きこむリーゼの顔がすぐ傍にあった。
「-っ!おまえ、どうして」
「うなされているようだったので、つい…」
リーゼは申し訳なさそうに、そう呟くと俺の手を強く握った。
握られて気付く。
自分が震えていたということを。
「情けないところを見せたな…」
「誰だって怖い夢を見る時はありますよ」
俺が震えていた事をなんでもない事のように流そうとする。
それなのに、俺の手を強く握り締め続けるこいつがどうしようもなく好きだと思ってしまった。
リーゼの腕を引き寄せ、隣に寝転がらせる。
「ちょ!予告してからやらないと危ないです!」
「言ってからやったって動きに差はないだろう」
「あります!受身をとりました!」
「お前にそんな事はできないだろ」
「それはやってみなきゃわからないです!」
文句を言いながらも俺の腕に頭を乗せて、くっついてくる。
そっとリーゼの髪に触れると、やかましく言葉をつむいでいた口が途端に大人しくなった。
「どんな夢を見ていたか、知りたくはないのか?」
「そうですねぇ…マクシミリアンさんがどうしても聞いて欲しいっていうんなら聞いてあげます」
「お前も随分言うようになったな」
「マクシミリアンさんほどじゃないです」
「ふん」
知り合った当初はこんな風になるなんて思っていなかった。
こうやって二人でベッドに寝転がる日が来るなんて、本当に想像もできなかった…いや、嘘だ。想像はしていた。
想像はしていたが、実現するわけがないと思い込んでいた。
「お前がいるから…俺はどこへも行かない」
「…約束しましたから。私はあなたを信じてます」
「ああ、そうだったな」
ずっと愛し続けるなんて。
子供みたいな約束だ。
「マクシミリアンさんがおじいちゃんになって、十分生きた!っていう最期の時まで私がこうして手を握ってますから。寂しくないでしょう?」
「…ああ」
強く握られた手。
子供みたいな約束だけど。
こいつとなら、叶えられる気がするのは
「リーゼ、」
名前を呼ぶと、リーゼは薔薇のように綺麗に微笑んだ。