機械の身体じゃなくなってもうすぐ一年が経つ。
人間の身体って不思議なもので、温かい。
一人でも温かいんだけど、二人だともっと温かい。
3000年という年月をクレイドルと二人で過ごしてきた私にとって、1年という時間は本当にあっという間だった。
そう、シュドに出会う前までは。
まだ仕事が片付かないから先に眠っていて、とシュドに言われて先にベッドに入っていたんだけど、なかなか寝付けずわたしは何度目かの寝返りを打った。
「寝れない?」
「シュド、仕事終わったの?」
「ああ、終わったよ」
壁際に寄ってシュドの寝るスペースを作るとシュドがそこに入ってくる。
さっきまで冷えていたベッドの中はシュドがいるだけで酷く心地よいものに変わった。
「俺が仕事終わるの待っててくれたの?」
「そういうわけじゃないんだけど…なんだか落ち着かなくて」
「落ち着かない?」
シュドが私の頬にかかった髪をそっとよける。
「いっつも一緒に寝てるシュドがベッドにいないだけで、落ち着かなくなるなんてびっくりした」
「…それって」
「シュドってあったかいからかな」
そう言ってシュドにぴったりくっついてみると、シュドが硬直した。
触れ合った部分から伝わるぬくもりが酷く愛おしくて、私はシュドの胸に頬ずりする。
「…君って本当に」
「え?あれ、シュド…なんだか顔赤い」
「…それは、うん…そうだね」
シュドは困ったように笑うと、深呼吸してから私をそっと抱き寄せた。
「君が可愛いからちょっと…いや、大分照れちゃったよ」
「ふふ、変なシュド」
不思議。
シュドに抱き締められると、すごく安心するのにすごくドキドキする。
本当はシュドのことをいえないくらい顔が熱くなってるけど…
「ねえ、シュド。覚えてる?」
「ん?何を」
「前に話したの覚えてる?春になったら一緒に花を見ようって」
「ああ、覚えてるよ」
「場所は違うけど…シュドと花を見れてすごく嬉しかった」
「うん、オレも」
「シュドといるとね、前よりも1年ってあっという間に感じるの。
でも、前はあっという間に過ぎ去っていったのに、今は違う」
「それって、どう違うの?」
「…過ぎ去ってしまうのが勿体無いって思っちゃう」
「そっか」
シュドの腕が少しだけ強く私を抱き締めた。
「もったいないなんて事はないよ。これからはずっと君の隣にオレはいるから」
「うん…」
でもやっぱり勿体無い。
本当は寝る間も惜しんで、シュドと一緒にいたい。
だけど、こうやって一緒のベッドでシュドと眠ることもわたしは大好き。
「シュド、明日も一緒にいようね」
「ああ、明日も明後日も…ずっとずっとその先も、一緒にいよう」
ずっと…がいつまで続くのかなんて分からないけど。
明日も明後日も、ずっとずっとシュドといれたらいいな。
そんなことを思ってシュドを見つめると、シュドは愛おしいものを見つめるみたいに目を細めて笑うと、わたしの額にそっと口付けてくれた。
「おやすみ、イヴ」
「うん、おやすみ…」
さっきまでなかなか寝付けなかったのが嘘のように、シュドの腕の中で私は眠りに落ちた。