手のぬくもり(巳継×静)

いつか、必ず別れは来る

私も、巳継もそれを理解しながら手を繋ぐ

 

「ねえ、静。今日はデートしない?」

「…デート?」

「そう。君とどこかへ行きたいなってずっと思っていたんだ」

眠る前に巳継が私を抱き寄せた。
甘えるみたいに額をくっつけて、そんな事を言い出した。
巳継の体温が心地よくて、私は自然と笑みを漏らした。

「うん、いいわよ。あなたの行きたいところに行きましょう」

「それじゃダメだよ。二人が行きたい場所に行くんだよ」

だってデートだからね、と巳継が優しく笑った。

(ああ、好きだ…)

そんな乙女みたいな事を、ガラにもなく思ってしまった。

「それじゃあ、公園に行きたい」

「いいね、そうしようか」

「だから、ほら…早く寝ましょ」

「うん、そうだね」

巳継の頭をなでてやると、彼は安心したみたいに笑う。
この笑顔は、私にあと何回向けられるんだろうか。
そんな事をふっと考えていた。

 

 

もしも私が人間だったら。
もしも巳継が妖怪だったら。

そんな”もしも”を何度も考えてしまう。
妖怪にすることは出来る。
だけど、私はそれを望んでいない。
同じように生きられないけど、別れが来るその時までは一緒にいられる。

 

 

「今日はいい天気ね」

「そうだね。君は太陽の下でも平気なんだね、そういえば」

「え?」

「だって妖は闇に生きる存在だろ?だったら日中起きてるのも辛いんじゃない?」

「私は吸血鬼とかじゃないんだけど…」

確かに妖は昼間は寝て、夜に活動する。
そのサイクルが出来上がっているから夜のほうが活動しやすいという部分はある。
けど、人間たちの生活にまぎれて、買い物したり、ぶらぶらしたりすることも好きなので、日中起きていることはさほど苦ではない。

「巳継に合わせてたら慣れてきちゃったわ」

「…そっか」

どこか嬉しそうに綻んだ顔を見て、しょうがないなぁと私は笑った。

「ねえ、静」

巳継は私に手を差し出した。

「手、繋いでもいいかな」

「そんな事、いちいち確認しなくたっていいわよ」

「うん、ありがとう」

差し出された手をとる。
いつも眠る時に私を抱き締めてくれる体温だ。

「どうかした?」

「え?あ、いや」

ぼうっとしていることに気付かれたようだ。
私は誤魔化すように曖昧に笑う。

「あと何回、こうやって手を繋げるのかなーって」

「…そうだね、何回だろうね」

きゅっと私の手を握る巳継の手に力が籠もる。

「今まで何回手を繋いだか、君は覚えている?」

「…覚えていないわ」

数を数えることは、終わりへ近づいているみたいで怖くなった。
だから私は数えることはやめたのだ。

「じゃあ…あと何度手を繋いだって、関係ないだろうね」

「…そうね」

「今、こんなにも幸せなのは静がいるからだよ」

「やめてよ、急にそう言うこと言うの」

「思った時に言っておかないとダメだろ?」

そう言って笑う巳継を好きになったのだ。

「…そうね、私も幸せよ」

こんなガラにもないことを言うくらいには、彼に恋焦がれている。
いつかこの手が離れる時、私は彼がくれた数々の笑顔みたいに微笑むことが出来るだろうか。

「ほら、もうすぐ公園よ」

例え二度と会えなくなったとしても、私は巳継と繋いだ手のぬくもりは決して忘れない。
忘れまいと強く思った。

 

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