「そういえば姫野って年上の彼女いるじゃん?どこまで進んでるんだよー」
華の男子高校生が考えている事といえば、まあぶっちゃけていえばエロい事だということは分かる。
彼女がいる奴はこうやって、どこまで進んでるのか…興味津々だ。
「さあ、どこまでだろ?」
「コイツ、彼女との事になると口固いからダメダメ」
「なんだよ、もったいぶって」
笑いながら友人に小突かれる。
それでもオレは変わらず、のらりくらりとかわす。
だってアイちゃんとの一つ一つの積み重ねを他の誰かになんて勿体無くておいそれと話す気になんてならないのだ。
「ま、期待されるような内容の話はないんだけどね」
「何か言った?アキちゃん」
「今日もアイちゃんが可愛いなーって」
「…アキちゃんはいっつもそうやって冗談言って」
「冗談じゃないもーん」
今日は天気も良いので、二人で公園に寄って思い出のベンチに座って、とりとめのない会話を交わす。
コンビニで買ったおやつのポッキーをポリポリと食べているとふとアイちゃんからの視線が強くなったことに気付いた。
「アイちゃんも食べなよ」
そう言って箱を差し出すと、アイちゃんはおずおず…といった様子でポッキーを食べ始める。
なんだかリスみたいで可愛いな~とその様子を見つめていると、アイちゃんが突然オレの視界を遮ってきた。
「そんなにじっと見つめられたら恥ずかしいよ…!」
「でもアイちゃんだってさっきオレのことじーっと見てたじゃん。不公平だー」
「それは…!」
「…それは?」
アイちゃんの手をどかすと、驚いたことにアイちゃんは頬を赤らめていた。
「もしかしてアイちゃん、やらしい事でも考えてた?なーんて、」
赤くなっているアイちゃんを茶化してみると、正解だったのかアイちゃんが両手で顔を覆った。
「え!?アイちゃん?」
「ち、違うの!そうじゃなくて、違うの!」
何が違うんだか分かんないけど、とりあえずうんうんと頷いてみる。
少し頬の熱が落ち着いてきたアイちゃんはようやく顔を上げてくれた。
「…その、今日友達に」
「うん」
「彼氏とどこまで進んでるの?って聞かれて」
アイちゃんの友達に彼氏、と言われてることがめちゃくちゃ嬉しくて、顔がにやけそうになるけどアイちゃんが真面目に話してるからなんとか真面目な表情を保つ。
「うんうん。それで?」
「…そういえばここでアキちゃんに初めて抱き締められたのを思い出しちゃって」
ああ、オレも座ったとき思い出したよ。
だってオレたちの始まりの一歩がここだったんだから。
「最近ぎゅってされてないなぁ…なんて考えちゃったら、ついつい見つめてしまいました」
そう言ってアイちゃんは恥ずかしそうにオレを見つめた。
ああ、それはもう大変可愛らしくて…
「あー、アイちゃん大好き」
オレはお望みどおり、あの日みたいにアイちゃんをぎゅっと…ぎゅうっと抱き締めた。
「アイちゃん好きだよ、大好き」
あまり言い過ぎると、安っぽくなって信じてもらえなくなるかもしれない。
だけど、アイちゃんを好きだと思う気持ちが溢れてしまうのだからしょうがない。
「私もアキちゃん大好きだよ」
アイちゃんはそう言って、オレをぎゅっと抱き締め返してくれた。
次の日。
また、いつも通り友人と話しているとオレの顔を見て、一人の友人がにやりと笑った。
「お、なんか今日姫野機嫌よさそうだな!彼女となんかあったんだろう!」
「さあ、どうでしょう?」
いつものとおりかわすが、アイちゃんと何かあったのはバレバレのようだ。
そんなオレを見て、友人達は彼女つくりてーっと笑うのだった。