今日は久しぶりに彼女に会える。
そう思うだけで仕事にも力が入った。
仕事の上がる時間を少し超えてしまったが、それでも待ち合わせの時間には間に合うだろう。
身支度を整えて、彼女との待ち合わせ場所へと急ぎ足で向かう。
(2週間ぶり・・・かな)
思い返せばそんなに日数は経ってないのかもしれない。
本当のことを言えば毎日会いたい。
だけど、今は撫子ちゃんにとっても大事なときだから。
医大生っていうのは本当に忙しそうで。
たまに会ったときに目の下に隈があると本当に心配になる。
俺に会って少しでも元気になってもらえたら嬉しいな、なーんて。
それは俺の我侭かな。
そんな事を考えながら歩いていると、ふとあるものが目に留まった。
待ち合わせ場所に着くと、既に撫子ちゃんは俺を待っていた。
嬉しい気持ちと待たせてしまって申し訳ない気持ちでいっぱいになり、俺は駆け出していた。
「撫子ちゃんっ!」
「央、お疲れ様」
駆け寄る俺を見て、優しく微笑む。
今日はいつもより血色が良さそう。あー、良かった。
「待たせちゃった?」
「ううん、私も今さっき来たところよ」
「そんな撫子ちゃんにプレゼントがあります!」
「え?」
身体の後ろに隠していたそれを目の前にいる撫子ちゃんにずいっと差し出す。
「どうしたの?これ・・・」
「来る途中にお花屋さんがあったから。
撫子ちゃん、喜ぶかなって」
それはピンク色の薔薇の花束。
見たときに撫子ちゃんの顔がぱっと浮かんだのだ。
薔薇をあげようなんて、キザっぽい気がしたけれど、それでも撫子ちゃんにとても似合う気がした。
「ありがとう、央」
俺の手からそれを受け取ると、少し頬を赤らめて彼女は喜んでくれた。
「でも、お花持ってたらお店入りにくいわね」
「あ・・・」
そこまで考えてなかった。
後先考えずに行動してしまうのは俺の悪い癖。
今日は買い物をしようと話していたのに。
「ごめん、撫子ちゃん」
「なんで謝るの?
私はとっても嬉しいわ」
「だって今日は買い物を・・・」
「それはまた今度にしましょう。
今日は央の家でご飯作って食べましょ」
「うん!ありがとう、撫子ちゃん」
彼女に喜んで欲しくて何かしても、結局俺が喜んじゃう。
花束を持っていない左手に俺の右手を絡める。
伝わってくる熱は、彼女のもので。
「撫子ちゃん」
「なに?」
「おじいちゃんとおばあちゃんになっても、こうやって手をつないで歩こうね!」